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民進党のあいまいなTPP政策2016年4月4日

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【森島 賢】

 民進党が発足した。いったい、この党はどんな政治を、目指すのか。「民」の字は、なにを意味するのか。「官」でないことだけは分かるが、それ以上のことは分からない。「進」の字は、なにを意味するのか。「退」でないことしか分からない。
 「名は体を表す」というが、その通りのようだ。本体があいまいなので、名前もあいまいになったのだろう。
 自公から、政権を奪いたい、と考えているようだが、奪った政権で、どんな政治をしようというのか。その点が分からない。これでは、政権を奪えない。
 TPP問題でも、そのことが分からない。これでは、さし迫っている夏の参院選で、農村部に多い1人区での勝利は、おぼつかない。1人区での勝敗が、選挙全体の勝敗を決める、という。だから、TPP政策を鮮明に示さねばならない。

 民進党が、先週の30日に発表した「基本政策」をみると、TPPの文字はない。
 TPPに関連するものとして、「...自由貿易を推進する。ただし、...国益の観点から...その是非を判断する。」という1文があるだけだ。だから、この1文から推察するしかない。

 ここには、2つの問題がある。
 1つは、自由貿易の推進を大原則にしたことである。国益云々は、但し書きで、大原則と比べて、一段下の格下になっている。
 そうではなくて、主要農産物などを除く物品の自由貿易を大原則にすべきだろう。そうすれば、この大原則に従って、主要農産物の関税撤廃に、胸を張って堂々と反対できる。
 このように主張すれば、民進党は、主要農産物を含む全ての関税の撤廃を目的にするTPPには反対だ、ということが鮮明になる。

 もう1つの問題は、「国益」という、あいまいな表現である。それは、大企業にとっての国益なのか。それとも農業者や労働者など社会的弱者にとっての国益なのか。
 同党の綱領では「働く者」の立場に立つ、といっている、だから、農業者や労働者にとっての国益なのだろう。この点をはっきり示せば、自民党との違いが鮮明になる。そうすれば、輸出大企業のためのTPPだから反対だ、ということが分かりやすくなる。
 そうしないと、大企業に利益が溜まれば、その利益が農業者や労働者の上に、自然に滴り落ちるという、カビが生えた、誤った理論に洗脳されたままだ、と思われるだろう。

 もう1つの文書をみよう。昨年10月に、民進党の前身の1つの民主党が、政調会長の談話として発表したものである。
 それには、「アジア太平洋地域内において高いレベルの経済連携を推進する...必要がある。」と書かれている。ここでいう「高いレベルの経済連携」とは、全ての関税の撤廃を意味している。このことは、関係する人びとの共通認識である。
 だから、それに続く「牛肉や豚肉の輸入時の関税を大幅に引き下げる...(ことに)...強く抗議する。」などといっても、それは、空虚に響くだけだ。TPPそのものに反対しなければ、こうした不様な主張になる。

 今週から始まる国会でのTPP論議に期待することは、政府の揚げ足を取ることではない。TPPが農業、農村を破壊し、食糧安保を危うくすることを、国民に分かりやすく暴露することである。そうして、TPPに原理的に反対し、TPPの批准阻止を戦略目的にすることである。
 いま、農村にはTPPに対する怒りの声が充満している。だが、その怒りを2大政党は、まともに受け止めていない。民進党が、夏の参院選に勝とうとするなら、選挙公約で、TPPに反対する姿勢を明確に示さねばならない。自民党との違いを鮮明に示さねばならない。
 そうすれば、農村の1人区で圧勝できるだろう。それが各地へ波及し、全国でも大勝できるだろう。
(2016.04.04)

(前回 飼料米倍増を邪魔するMA米

(前々回 TPPの悪質な欺瞞

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