与党化するマスコミ2016年6月22日
昨日の党首討論会を聞いた。その中で、民進党の岡田克也代表が、主催した記者クラブに苦言を呈していた。参院選挙中に今回のような公開討論会を企画しないことへの批判である。
公開討論会といえば、選挙戦の華である。アメリカなど外国の選挙戦での公開討論会を、日本のTVが放映することも珍しくない。討論会の成否が選挙戦に強く影響するからだろう。
なぜ、記者クラブは今後、公開討論会を企画しないのか。選挙戦で争点隠しをしている与党に配慮しているからではないか。マスコミの与党化である。これでは、日本の民主主義は根底から覆される。討論のない民主主義なぞあり得ない。
今朝の日本農業新聞をみて驚いた。この新聞は、農業者たちが作る農業者の新聞である。その第1面のトップ記事の表題に、「TPP賛成5、反対4」という特大の活字がおどっていた。第1面トップといえば、新聞の顔である。新聞の主張を象徴的に表現するものである。
いったい、この新聞は何を主張したいのか。TPPは賛成の方が多い、だから、反対してもダメだ、という主張としか思えない。
この新聞の主張は、与党が主張し、宣伝したいことで、農業者が主張したいことではない。これは、農業者の反TPP運動に冷や水を浴びせる主張である。この新聞は、農業者の新聞ではないのか。いつのまに与党の機関紙になったのか。
◇
昨日の同新聞の第1面のトップ記事の表題は「比例 自民41、民進17%」だった。
ここでの主張は、だから勝ち馬に乗って自民党に頼ろう、民進党を支持しても無駄だ、というものだろう。そうなれば、自公政権の市場原理主義農政が続くことになる。TPPに反対し、市場原理主義を否定する農協潰しが、今後も強い力を得て続く。そうして、民進党など野党の批判が力を失う。
◇
一昨日の同新聞の第1面のトップは「『攻めの農業』道半ば」だった。
この主張は、だから途中で方向を変えるのではなく、この道を通って前へ進もう、という主張に誘導したいのだろう。自民党の「政策パンフレット2016」の表題の「この道を。力強く、前へ。」に媚を売りたいように見える。
だが、農業者は自民党農政の支持者ばかりではない。批判者も決して少なくない。むしろ多数である。
◇
以上で見られるように、この新聞は最近、農政批判をためらうようになった。そして参院選が近づくにつれて、与党色を強めている。
与党は農業予算を握っている。だから、農協の機関紙といわれるこの新聞が、与党を批判ばかりしていたのでは、農業者の明日の生活が成り立たない。その事情は、誰でも理解できる。
しかし、農業者は明日の生活が出来さえすればいい、と考えているだけではない。農業者は農業に誇りを持っている。未来にわたって誇っていたい。この誇りを、いまの市場原理主義農政が傷つけていないかどうか。同新聞に期待したいのは、この視点で農政批判を続けることである。
(2016.06.22)
(前回 「所得増大」の落とし穴)
(前々回 自民党公約の厚顔無恥)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
日本人と餅【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第331回2025年3月7日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「コメ騒動」の原因と展望~再整理2025年3月7日
-
(425)世界の農業をめぐる大変化(過去60年)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月7日
-
「とやまGAP推進大会」に関係者約70人が参加 JA全農とやま2025年3月7日
-
新潟県産チューリップ出荷最盛期を前に「目合わせ会」 JA全農にいがた2025年3月7日
-
新潟空港で春の花と「越後姫」の紹介展示 JA全農にいがた、新潟市2025年3月7日
-
第1回ひるがの高原だいこん杯 だいこんを使った簡単レシピコンテスト JA全農岐阜2025年3月7日
-
【スマート農業の風】(12)ドローン散布とデータ農業2025年3月7日
-
小麦ブランの成分 免疫に働きかける新機能を発見 農研機構×日清製粉2025年3月7日
-
フードロス削減へ 乾燥野菜「野菜を食べる」シリーズ発売 農業総研×NTTアグリ2025年3月7日
-
外食市場調査1月度市場規模は3066億円2019年比94.6% コロナ禍以降で最も回復2025年3月7日
-
45年超の長期連用試験から畑地土壌炭素貯留効果を解明 国際農研2025年3月7日
-
日本赤十字社のプロジェクト「ACTION!防災・減災」に参加 コープみらい2025年3月7日
-
健康増進へ野菜摂取レベルなど競う企業対抗企画 タキイ種苗が優勝2025年3月7日
-
フルーツピークス横浜ポルタ店2周年記念 いちごの超豪華パフェや感謝価格のタルト登場2025年3月7日
-
EVトラックの最適充電マネジメントシステムサービスを提供開始 グリーンコープ生協くまもと2025年3月7日
-
「金芽米」活用で市職員の花粉症予防・改善にチャレンジ 大阪・泉大津市2025年3月7日
-
台湾へのイチゴ輸出を本格化 JAかみましき2025年3月7日
-
道の駅「明治の森・黒磯」で「手塚さんちの長ねぎドレッシング」新発売2025年3月7日
-
鳥インフル 米デラウェア州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年3月7日