参院選で東北は反乱、都市は離反2016年7月11日
昨日の参院選は与党の大勝だ、と多くのマスコミが伝えている。そうだろうか。
農業、農村から、やや詳しくみると、そうではない。
与党は、いまの市場原理主義農政が信認された、と考えていいのだろうか。そして、このまま続け、加速していいのだろうか。さっそく、つぎの国会でTPPの審議が始まり、批准の可否を決めることになるだろう。
野党は、敗者のように下をむいて、与党の暴走に手をこまねいていて、いいのだろうか。
決して、そうではない。
上の図は、1人区の選挙結果をみたものである。この図から分かることは、東北をはじめ、甲信越での野党の圧勝である。例外は秋田での敗北しかない。それに沖縄、大分、三重の野党の勝利が加わる。
これは、市民を中心にした4野党の合意による選挙協力の成功である。初戦で、幸先のいい大成功をおさめたことになる。
これに加えて、次の図で示した複数区の北海道での野党の勝利がある。
上の図は、複数区の結果である。これをみると、大都会である東京、大阪、京都は、全て与野党の当選者が、同数である。決して与党が勝ったわけではない。
両図から分かることは、東北などの農村が、与党に対して、反旗をひるがえしたことである。都市でも大都市を中心にした与党離れが進んでいる。
◇
これらの結果から、与党が学ぶべきことは、1つは、市場原理主義農政の見直しである。ことに、当面するTPPの国会批准に、どう対処するかである。また、いわゆる農業・農協改革や、米の減反廃止を、これまで通りに強引に進めるのかどうか。農業者は、そこに注目している。
もしも、失敗すれば農村の反乱は、東日本だけでなく、西日本にまで広がっていくだろう。
いっぽう、都市には格差拡大に対する強い不満がある。非正規雇用の、いわゆる規制緩和を原因とする格差拡大である。いまや、非正規雇用は野放しともいえる状態にある。
もしも、非正規雇用の規制に失敗すれば、農村の反乱と互いに共鳴しあって、政治の大変動を招くかもしれない。
◇
このような選挙結果だが、与党は勝利の宴に酔っている。多くのマスコミは、与党の勝利を讃えている。
やがて、アベノミクスが決定的に破綻する前に、衆院選を行ってしまえ、という主張が、与党から出てくるだろう。年内の衆院解散もささやかれている。そうすれば、衆院選でも大勝し、現政権が長期に安定するという。
◇
野党は、それに備えなければならない。常在戦場である。さっそく、こんどの、市民を中核にした野党4党の、選挙協力の成功の教訓に学んで、衆院小選挙区での選挙協力の協議を始めるべきだろう。
協議の中心課題は、農村部では、TPPの批准問題と、農業・農協のいわゆる改革問題と、米政策だろう。都市部での課題は、憲法問題や沖縄問題、原発問題と、それに加えて、非正規雇用を規制して格差を縮小するための、具体的な制度と法制だろう。
それらを、われわれは、耳目をそばだてて見守っている。
(2016.07.11)
(前回 TPPの暗雲を吹き飛ばそう)
(前々回 EU離脱、トランプ現象、そしてTPP)
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