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国民プラス4野党の協力を西へ2016年7月19日

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【森島 賢】

 先日の参院選は自民党の大勝だった、とする評価が多い。
 選挙後の入党者を加えると、自民党は、たしかに単独で過半数になったし、憲法改正問題では、改憲4党が3分の2を超えた。そうして、いよいよ念願の国防軍という普通の軍隊の創設に近づいた。
 しかし、東北3地域の北海道、東北、甲信越の選挙結果をみると、自民党は2勝10敗の惨敗だった。この3地域は、北海道を除くと全て1人区だった。この1人区での国民プラス民進、共産、社民、生活の4野党の協力が、自民党の惨敗をもたらしたのである。
 4野党は、この勢いを西日本へ広げたいだろう。

 先日、英国のEU離脱問題で知れわたったことだが、英国では北部の北アイルランドとスコットランドの一部の人たちが、英国からの分離独立を主張している。英国と同じように、日本でも東北3地域が、日本からの分離独立を主張しても、おかしくない。現政権を信認していないのだから。
 まさか、そんな主張はしないだろうが、それほどの事態であることを、自民党は深刻に受け止めねばならない。

 東北3地域での野党協力は大成功だった。しかしそこを除く地域の1人区での野党統一候補者は、沖縄、大分、三重で勝っただけで、3勝20敗だった。野党協力を充分に結果に結びつけられず、大敗した。
 大敗はしたが、しかし、野党協力が失敗したわけではない。

国民プラス4野党の協力を西へ

 上の図は、野党協力をした1人区について、野党候補者の得票数が、前回の参院選のときの野党候補者の得票数と比べて、どれほど増えたか、を示したものである。
 この図をみれば分かるように、野党は全国の各地で得票数を増やしている。西日本でも増やしている。例外は、こんど合区になった鳥取・島根と徳島・高知と、岩手、栃木、香川で、やや大幅に減らしただけである。他の1人区では、野党協力は成功した。しかし、西日本では、勝つまでに到らなかった。
 それは、初めての野党協力だった、ということで、止むをえなかった、と評価すべきだろう。緒戦の小さなつまずきだったのだろう。今後に期待したい。

 このように書くと、筆者は野党を支持して、与党に反対するのか、という詰問を受けるかもしれない。それに対しては、100%否定もしないし、100%肯定もしない。
 与党の市場原理主義農政には反対だし、野党の農政、ことにTPPに対する政策の根本にある市場原理主義農政にも反対だからである。
 期待しているのは、いまの一強政治のもとで、充分な議論が行われない政治体制を、打破することである。このままでは、戦前のヒトラーのドイツのように、民主主義が形骸化してしまう。そして、独裁体制へ進むことを危惧している。

 本題へ戻ろう。
 与党は、東北部での惨敗に目をつむって、他の地域での大勝に酔っている。この流れに乗って、アベノミクスの破綻が目立つまえに、衆議院を解散し、衆院選も行って、一強政治を長く続けたい、と考えるだろう。今年中に衆院選をやってしまう、と予想する人もいる。
 野党は、それに対する準備を怠れない。課題は、小選挙区での協力体制の具体化である。今から、すぐに始めても、決して早すぎることはない。

 この協力体制は、党中央部の指令だけでは作れない。各小選挙区ごとの、国民を中核にした協力体制を作ることが、成功のカギだろう。
 そして、分かり易い、具体的な政策合意が重要である。たとえば、こんどの参院選で、ある候補者は「1日8時間だけ働けば、普通の生活ができるし、子供が望むなら無料で大学へ行けるようにする」と公約して、多数の支持をえた。また、いま選挙戦たけなわの東京都知事選で、立候補を予定していたある人は、「時給1500円以下の企業には、都の事業を発注しない」と言っていた。
 野党は、こんどの参院選で、政策の具体性を欠いた曖昧さがあった。それが、与党の一強体制を突き崩せなかった原因になり、支持を広げられなかった。政権の受け皿として認知されなかったのである。このことに、もっと注意を払うべきだろう。
 野党の政策合意は、地域の現場での熟議を重ねた上で、具体的で、分かり易い合意に磨き上げねばならない。各政党支部のボスだけの合意ではだめだ。党中央部の役割りは、それらを制度化し、法案化することだろう。

 政治理念が違う野党間の協力は野合だ、とする非難がある。
 しかし、政党ごとに政治理念が違うのは、当然である。そうした非難は、聞き流せばいい。政党どうしが部分的に協力しあうことに、なんの躊躇もいらない。
 いま、平和主義を旗印にする公明党と、軍事力に依存する自民党が協力しあっている。そうして、連立政権をになっている。また、以前には、政治理念が互いに相容れない自・社・さ政権があった。
 充分な協議を重ねた上での、期間を区切った、部分的な協力なら、非難すべきものではない。国民を中心に据えた協議を重ねる中で、それぞれの政党が、それぞれの政策を磨きあうことも期待できる。

 野党協議の中心課題は、農村部では、TPPの批准問題と、農業・農協のいわゆる改革問題と、米政策だろう。また、都市部での中心課題は、憲法問題とTPP問題、沖縄問題、原発問題と、それに加えて、非正規雇用の規制を強化して、貧困の拡大、格差の拡大を根元から断つことだろう。
 そのための具体的で、かつ、即効性のある制度と法制が求められている。
 そのために、衆院選の全小選挙区で、早急に野党協議を始めることを期待したい。
(2016.07.19)

(前回 参院選で東北は反乱、都市は離反

(前々回 TPPの暗雲を吹き飛ばそう

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