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蓮舫新代表よ、迷うな2016年9月20日

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【森島 賢】

 民進党の代表選で、蓮舫氏が新しい代表に決まった。他の2人の候補者を圧倒する大勝だった。ことに、北海道や東北の得票率は、70%を超える圧勝だった。
 同氏は、「反対ではなく、提案を」といっている。また、育児政策や女性政策を重点政策に取り上げるようだ。だが大筋では、前執行部の政策を引き継ぐらしい。
 やや物足りないのは、野党第1党の代表として、政権奪取への強い意気込みが伝わってこないことである、そこに迷いが見える。


蓮舫新代表よ、迷うな

蓮舫新代表よ、迷うな

 まず、上の表を見てみよう。
 民進党の代表選は、投票した人を国会議員や一般党員などに分け、それぞれの票数をポイントに換算して集計し、過半数を得た候補者を当選とする。しかし、この図と表は、ポイントではなく、投票数をそのまま集計した。1人1票が民主主義の原則だからである。
 この表で分かるように、蓮舫氏の得票率は、党員・サポータと地方自治体議員で多く、国会議員と公認予定者では、それと比べて多くない。これは、現場の一般党員の期待のほうが、より強いことを表している。

   ◇

 つぎに図を見よう。この図から、蓮舫氏の得票率が、地方で多いことが分かる。ことに北海道と東北では、軒並み70%を超える大量の票を得ている。同氏の風貌は都会風だが、地方でも支持者が多い。
 北海道と東北といえば水田農業地帯だ。つまり、これは、戸別所得補償制度の復活など、米政策への期待である。また、これは、さし迫るTPPの国会審議での、新代表が率いる民進党執行部に対する、地方の一般党員の期待でもある。
 他の2候補は、地元での得票率は大きいが、その他の県では、僅かな票しか得ていない。多くの党員は、新代表のもとで全党が一致結束しよう、との強い意気込みで投票した結果だろう。

   ◇

 上の図と表を見ながら、また、代表選を見ていて分かったことが、2つある。
 1つは、新代表が前執行部の支持があったことである。だからといって、その政策を単純に引き継ぐのなら、代表が交代する意味がない。前代表が、そのまま留任すればいい。
 新しい代表は、何を目指すか。野党第1党だから、政権を狙うのは当然だろう。では、どんな政策を引っ下げて、それに臨むのか。それを明確に示さねばならない。「批判でなく提案」というが、それでは内容が分からない。

   ◇

 当面する政治課題は、補正予算とTPPの国会批准である。
 補正予算は、政策を実行するための予算の裏付けである。ここには政策の重要さの度合いが、予算額という目に見える金額で数量的に示される。
 ここでの論戦で、民進党の政策が目に見える形になって現れる。新代表が率いる民進党の政策は、どこに重点をおくのかが、具体的に鮮明になる。

   ◇

 もう1つは、TPPである。市場原理主義の権化であるTPPの国会審議に、どう臨むのか。そこで、民進党の市場原理主義に対する評価が明確になる。枝葉末節の批判だけでは済まされない。
 新代表は、「経済連携協定による自由貿易を推進しつつ......今回のTPP協定案に......反対する」という。これでは、「TPPには賛成だが、政府の協定案には反対」というように聞こえる。党利党略に聞こえて、断固反対という姿勢が見えない。これで、TPPから甚大な被害を受ける弱者の理解が得られるのか、疑わしい。
 民進党は、いったい、どんなTPP協定案を提案するというのか。そこで、市場原理主義に対する評価が明確になる。それが、弱者に支持されるかどうか。
 民進党は、弱者の立場に立って、市場原理主義の泥にまみれた強者である政府と、財界に対峙する政党ではなかったのか。それが厳しく問われる。

   ◇

 「反対ではなく、対案を」というのは、言葉足らずの表現ではないか。それは、「明確に反対し、しかし、反対するだけでなく、民進党の政策の基本に溯って対案を示す」との意味だろう。そのことを分かり易く説明すべきである。
 よもや、反対であることを、うやむやにすることは、ないだろう。与党寄りの対案を示して、与党に擦り寄る、などということが、あってはならない。そうして、第2の自民党などと揶揄されることをおそれる。

   ◇

 対案を示すだけではだめだ。対案をどのようにして実現するか、が重要である。それには、多くの弱者の支持を得て、国会で多数を占めるしかない。
 いまのところ、民進党が単独で多数を占めることは不可能だろう。まして、小選挙区のもとでは絶望的だ。だから、自公の与党を見習って、野党の選挙協力をするしかない。
 蓮舫氏は、基本政策が違う政党とは協力できない、という。
 だが、それではいつまで経っても民進党の政策を実現できない。その結果、国民の大多数を占める弱者を、市場原理主義政策の犠牲に、いつまでも曝し続けることになる。それでは弱者から見放される。そして、やがて民進党の存在意義がなくなる。

   ◇

 だから、基本政策が違っていても、弱者のための、当面する重要な政策で一致すれば、弱者とともに、他の野党と協力しあって、その政策を実現する努力をすべきである。ためらう必要は全くない。
 迷ったときは、一部の党幹部の、弱者の苦悩を見ようとしないアタマの体操は、無視していい。
 そのときは、多くの弱者と現場を熟知している一般党員が、知恵をしぼって創り上げた政策と、野党協力の意見に、耳を傾けるのがいい。彼らの意見を参考にして、その政策を執行部が練り上げ、彼らの強い支持と、他の野党の真摯な協力が得られれば、迷路から抜け出せるだろう。
 代表選の結果は、そのことを示唆している。
(2016.09.20)

代表選の結果は ... ココ
 

(前回 民進党を怯ませる世論調査

(前々回 植草一秀氏を農村で読む

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