SBS米のあきれた説明2016年10月5日
昨日、農水省は、自民党で、SBS米は国産米の米価を下げていない、と説明した。だから、TPPの合意案どおりにSBS米の輸入枠を増やしても、国産米の価格は下がらないという。
そんなことはない。供給量を増やせば価格が下がることは、誰でも知っている。経済学の教科書の第1ページに書いてある。農水省は、この教科書は間違いだから、書き換えたい、と考えているのだろうか。あきれる程に愚かなことである。
政府は国民に、TPP合意案を丁寧に説明して納得してもらう、という。
しかし、こんな説明を、国民と、国民の代表である国会で、何時間、何百時間説明しても説明したことにならない。こうした没論理的な説明しかできない、ということは、TPPが、国民の大多数の弱者を犠牲にするものだ、ということを、何よりも雄弁に物語っている。
本HP別記事によれば、農水省は、国産米が201円(以下、1㎏当たり)と安かった2014年には、SBS米は1万2000トンしか輸入しなかったことを根拠にして、「SBS米の輸入が国産米の価格を押し下げている状況にはなっていない」としている。
しかし、それは間違いである。
もしも、このとき、SBS米を輸入しなかったら、国産米価は201円よりも高くなっていたはずである。しかし、SBS米を輸入したことが原因になって、201円に下がったのである。この解釈が論理的な、正しい解釈である。
◇
同記事は、農水省の、この間違った説明に対して、自民党議員から異論は出なかった、と報じている。
自民党は、こんな初歩的な経済の論理が分からない議員ばかりが集まった政党なのだろうか。
そうではないだろう。論理は充分に分かっているが、正しい論理が通らない政党だ、と諦めているのではないか。あるいは、いまの農水省は、首相官邸が後ろ盾になっていて、その政治力は、以前とは様変わりし、国会議員よりも強い、と考えているのではないか。だから、農水省に対して異論は言えない。もしも、異論を唱えれば、政治家として生きていられない。そのように考えているのではないか。
だから、うわの空で、農水省の説明を聞いている。退屈だが、聞いているふりをして時間が過ぎるのを辛抱強く待ち、時間になれば、官邸の指令に従い、多数をたのんで強行採決してしまおう、と考えているのではないか。
◇
また、政府はSBS米輸入の枠が増える分は、備蓄するから国産米価に影響しない、ともいう。これも没論理である。
備蓄米が増えれば、文字どおり在庫圧力になって、国産米価を押し下げる。これも初歩的な論理である。
政府は説明に窮して、SBS米で増える備蓄米を、その分だけ飼料米にする案を、今後いい出すかもしれない。しかし、それもだめだ。その分だけ、国内の飼料米生産を減らさねば、米価は維持できない。
迷案は迷案を生み、迷路に迷い込む。
◇
この迷路から脱出するには、SBSを止めるしかない。SBSがその一部であるMAを止めるのが、いちばんいい。それが戦略目的である。この戦略のもとで、当面の戦術は、SBSの枠の拡大を拒否することである。
それには、TPP合意案を国会で批准しないことである。そのためには、国会で、批准拒否の一点で野党が協力しあうことだろう。野党協力には、国会外で、農業者と農協をはじめ、弱者である大多数の国民の力強い支持がある。
(2016.10.05)
(前回 SBS米の闇)
(前々回 TPPは張子の虎)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日