経済的弱者がトランプ大統領を生んだ2016年11月10日
昨日、トランプ氏が、おおかたの予想に反して米国大統領に当選した。衝撃が世界を走った。今後、世界の政治は大きく変わるだろう。歴史的な転換といっていい。
これは、経済的弱者の経済的強者に対する勝利である。6月の英国のEU離脱に続く、そして、それ以上の成果を得た弱者の快挙である。弱者の抵抗という奔流は、世界の各国でほとばしっている。
トランプ氏は、大統領就任の初日に、弱者を犠牲にするTPPから離脱する、と明言している。それなのに、日本は世界の潮流に逆らって、TPPを今国会で批准しようとしている。
いったい、日本に民主主義はあるのか。
昨日、米大統領の選挙結果が出た。ほとんど全てのマスコミの予想に反して、トランプ氏が当選した。
なぜマスコミは予想を誤ったのか。
それは、マスコミが強者の側に、どっぷりと浸かっていて、弱者を見ていなかったからである。だから、世論調査でも、弱者は、質問にまともに答えなかったのだろう。それがマスコミの予想を狂わせたようだ。
あの目ざとい経済界も、この事態を事前に察知できなかった。だから、開票が進むにつれて、株価は一時千円以上も下げた。英国のEU離脱以来の下げ幅である。
強者の本家本元の経済界の狼狽ぶりは、これ程のものだった。その強者側に立ったマスコミの情報に惑わされたのである。
◇
これで、TPPはトランプ氏の在任中の4年間は棚上げになるだろう。そうした中で、日本だけが一人相撲を取り続けるのだろうか。そうして、世界中の笑い者になるのだろうか。
安倍晋三政権は、TPPを成長戦略の主要な柱に仕立て上げている。そのために、今日中にも衆議院で承認するつもりでいる。そのように、引くに引かれぬ事態に陥って困惑しているだろう。
弱者に逆らおう、というのだから、当然の報いである。
◇
このさい、前言につじつまを合わせるのではなく、国民の99%を占める弱者の、反TPPの意見に従うのが民主主義である。すくなくとも、今国会での批准は断念すべきである。
前回にも述べたが、共同通信の世論調査によれば、政府がいうように、TPPを今国会で成立させるべきだ、という意見は、国民の6人に1人しか賛成していないのだから。
君子なら、豹変すべきである。いまや、安倍首相は君子になるかどうか、の決断を迫られている。
◇
以上、弱者によるトランプ大統領の誕生を賞賛してきたが、危惧がないわけではない。
新大統領に対する評価の基準は、選挙中に叫んでいたように、あくまでも国民の99%を占める弱者のための政治を行うか、それとも、1%の強者のための政治に堕落するか、という点にある。
弱者が、ことに、中間層から貧困層に落とされた白人労働者たちが、トランプ氏を大統領に押し上げたことを、忘れてはならない。
◇
日本でも、TPPを今国会で批准することはないだろう。だからといって安心はできない。TPPは別の形の自由貿易体制に姿を変えて、やってくるかも知れない。それが、農業者などの弱者にとって不利益なものなら、断固として拒否するしかない。
いまや、弱者対強者の対抗関係が原動力になって、世界の政治が動いている。このことが、こんどの米国大統領選挙で明らかになったことである。
この教訓を、TPPの推進派は学ぶべきである。
(2016.11.10)
(写真)MICHAEL VADON提供
(前回 TPPとトランプ現象)
(前々回 TPPの短期的で局部的な論議)
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