弱者の時代の幕明け2017年1月10日
昨年は、EU離脱、トランプ現象、韓国騒乱など、経済的弱者が経済的強者に対して厳しく抵抗した年だった。その余波で、日本でも安倍晋三首相が頼りにするTPPが崩壊した。
経済のグローバル化や自由貿易は、逆らうことができない世界の潮流だ、という考えが破綻したのである。それは、弱者の犠牲のうえに立つ強者の考えだったからである。それが弱者の抵抗によって破綻した。
トランプ次期大統領は、自由貿易による弱者の雇用の減少を回復するために、米国への輸入品の関税を上げる、といっている。これまで、こうした政策は、世界の潮流に逆行するものとして、一笑に付されていた。しかし、弱者から圧倒的な支持をえた。
弱者の強者に対する抵抗は、農協など協同組合のお家芸である。農協は文化遺産などという古めかしい遺物ではない。新しい時代の扉をこじ開けようとし、先頭に立って奮闘している。
トランプの選出などは、それが弱者にとって最善の選択ではなかったかもしれない。ここで強調したいのは、この選択が最善だったかどうかではない。弱者の味方のようにいうトランプの選挙公約に希望を託して、多くの弱者が支持したことである。そして、その結果として、弱者の抵抗の力の巨大さを世界に見せ付けたことである。
これは、新しい時代の幕明けといっていい。新しい時代へ向けて、大きな第一歩を踏み出したのである。もう元へ戻ることはない。
新しい時代への流れは、仏独などヨーロッパで、また、隣りの韓国で今年中に行われる国政選挙に引き継がれるだろう。日本でも、今年中に総選挙が行われるようだ。
◇
トランプ現象などは、もしかすると最善の流れではないかもしれない。トランプは、やがて強者の側に立った政治へ後戻りするかもしれない。欧州の政治は、弱者を犠牲にする右傾化への道へ向かうかもしれない。しかし、当面は弱者のための政治を目ざしているようにみえる。
最悪なのは、この新しい流れに逆らい、中間層を貧困層に追い落として格差を拡大するいまの政治を、今後も横行させることである。そして、それに対する抵抗の主体の不在である。トランプ現象の意義は、抵抗の主体の健在を、世界中に劇的に示した点にある。そして、トランプ当選という結果として実現したことである。
◇
ひるがえって日本の農政をみると、昨年から引き続いて日欧EPAや日米FTAなど、自由貿易体制の残像を未練がましく追いかけているし、農業・農協攻撃を続けようとしている。
日欧FTAは今月中の大枠合意をめざしているし、米の供給について、政治が責任を放棄するという米政策を、来年から強行しようとしている。また、農協への不当な介入を、執拗に続けようとしている。
こうした強者の政治に対して、経済的弱者である農業者は敢然として立ち向かっている。しかし、同じ経済的弱者である労働者や中小企業者の支援は、まだ充分とはいえない。
こうした状況では、世界の潮流である強者に対する弱者の力強い抵抗、という新しい流れに乗り遅れるかもしれない。
◇
今年中には、総選挙が行われるようだ。一大政治決戦である。
この選挙で、弱者のための政治を要求する全ての弱者が、どれほど大きく、そして、どれほど固く協力できるだろうか。そして、それを支援する政党が、つまり野党がどれほど広く結集できるか。ことに、野党第1党の民進党が、弱者の結集を妨害する連合労組の影響力を排除できるかどうか。そうして、その結果、弱者の抵抗がどれほど力強いものとして結果できるだろうか。
今年は、そのことが鋭く問われている。期待をもって声援しよう。
(2017.01.10)
(前回 論理で政府を追いつめよ)
(前々回 農協運動の不連続な展開)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(139)-改正食料・農業・農村基本法(25)-2025年4月26日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(56)【防除学習帖】第295回2025年4月26日
-
農薬の正しい使い方(29)【今さら聞けない営農情報】第295回2025年4月26日
-
1人当たり精米消費、3月は微減 家庭内消費堅調も「中食」減少 米穀機構2025年4月25日
-
【JA人事】JAサロマ(北海道)櫛部文治組合長を再任(4月18日)2025年4月25日
-
静岡県菊川市でビオトープ「クミカ レフュジア菊川」の落成式開く 里山再生で希少動植物の"待避地"へ クミアイ化学工業2025年4月25日
-
25年産コシヒカリ 概算金で最低保証「2.2万円」 JA福井県2025年4月25日
-
(432)認証制度のとらえ方【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月25日
-
【'25新組合長に聞く】JA新ひたち野(茨城) 矢口博之氏(4/19就任) 「小美玉の恵み」ブランドに2025年4月25日
-
水稲栽培で鶏ふん堆肥を有効活用 4年前を迎えた広島大学との共同研究 JA全農ひろしま2025年4月25日
-
長野県産食材にこだわった焼肉店「和牛焼肉信州そだち」新規オープン JA全農2025年4月25日
-
【JA人事】JA中札内村(北海道)島次良己組合長を再任(4月10日)2025年4月25日
-
【JA人事】JA摩周湖(北海道)川口覚組合長を再任(4月24日)2025年4月25日
-
第41回「JA共済マルシェ」を開催 全国各地の旬の農産物・加工品が大集合、「農福連携」応援も JA共済連2025年4月25日
-
【JA人事】JAようてい(北海道)金子辰四郎組合長を新任(4月11日)2025年4月25日
-
宇城市の子どもたちへ地元農産物を贈呈 JA熊本うき園芸部会が学校給食に提供2025年4月25日
-
静岡の茶産業拡大へ 抹茶栽培農地における営農型太陽光発電所を共同開発 JA三井リース2025年4月25日
-
静岡・三島で町ぐるみの「きのこマルシェ」長谷川きのこ園で開催 JAふじ伊豆2025年4月25日
-
システム障害が暫定復旧 農林中金2025年4月25日
-
神奈川県のスタートアップAgnaviへ出資 AgVenture Lab2025年4月25日