監視社会への陰謀を打ち砕こう2017年6月19日
共謀罪法が先週の15日に成立した。今後、普通の一般人を警察が見張る監視社会になるのだろうか。
反対派は、共謀罪法が成立すれば、日本は戦前のように、陰湿な監視社会になる、といっていた。だから、そうなるだろう、とあきらめるのは早計である。そうなるかも知れないし、ならないかも知れない。いったい、どうなるのか。反対派は嘘をついたのだろうか。そうではない。
共謀罪法が成立したことで、日本社会が監視社会へ向かって一歩を踏み出したことは、たしかである。しかし、大きな一歩になるか、小さな一歩になるかは、今後、国民が決めることである。
農政でも同じようなことがあった。
20年前のウルグァイ・ラウンドの結果、いま、コメの輸入は自由化されている。自由化に反対した反対派が負けたというが、そうだろうか。
たしかに、自由化してしまったのだから負けた。だが、実際には輸入が自由になったわけではない。実際にはミニマムアクセス(MA)という屈辱的な約束をして、77万トンのコメを輸入している。しかし、それ以上のコメを自由に輸入したいと思っても、厳しい経済的な規制があって、輸入できない。だから、自由化しなかったのと実質的には同じである。つまり、それ以上のコメを法律的には自由に輸入できるが、しかし、輸入しても利益が出ない。高率な関税を課されるからである。だから、経済的にみれば自由化しなかったのと同じである。つまり、反対派が勝ったことになる。
つまり、コメの場合、77万トンのMA米をみれば反対派の負けだが、それ以上の輸入を阻止したことをみれば、反対派の勝ちである。このように考えると、反対派は法律的には負けたが、経済的には勝ったことになる。名を捨てて実を取った、といってもいい。もしも完敗だったら、日本のコメは壊滅しただろう。
◇
このように、政治運動の結果には、100%負けということはないし、100%勝ちということもない。どれほど勝ちに近い結果になったか、それとも、負けに近い結果になったか、である。
そしてそれは、どれほど強力な反対運動をしたか、による。反対運動が強かったなら、勝ちに近くなるし、反対運動が弱かったなら、負けに近くなる。
このことは、共謀罪法についても言える。
◇
共謀罪法が成立したのだから、反対派の負けだ、と多くのマスコミはいう。100%の負けだ、といいたいようだ。
だが、それは違う。共謀罪法が成立したのだから、たしかに反対派の負けである。しかし、100%の完敗ではない。
成立させるまでに、反対派の厳しい反対にあって、政府は何度も法案を修正した。修正する度に、勝ちから遠ざかってきた。そして、今度ようやく成立にこぎつけた。しかも、反対派の徹底審議の要求を拒否し、委員会での採決抜きで、本会議での採決という異例な強行採決で成立させた。その結果、多くの国民から厳しい批判を浴びた。だから、反対派は勝ちに近い負けだったのである。
このことは、今までの反対運動の強さを示している。
◇
政府は、共謀罪法が成立したのだから、今後、監視社会へ向かって一気に突っ走りたいだろう。そうして、安倍一強の独裁政治を強化し、民主主義を破壊し、軍事大国を目指そうとしている。そのために、共謀罪法を使って一般国民を監視し、反政府運動を、芽のうちに摘み取りたい、と考えている。
しかし、それは出来ないだろう。成立するまでに、反対派から大きな反撃を受けたからである。
そして今後、これまでの反共謀罪法の運動が、戦前のような忌わしい監視社会の再来に反対する運動に引き継がれるからである。
この、今後に続く反監視社会運動を弱体化させるために、これまでの反共謀罪法運動が、負けであることを強調している。そうして、反対派を落胆させ、今後の反監視社会運動に冷水を浴びせて、この運動を潰そうとしている。
これは、悪質な陰謀である。
われわれは、反共謀罪法運動に続く今後の反監視社会運動を強化して、この陰謀を打ち砕かねばならない。そうすれば、今度の負けを、限りなく勝ちに近い負けに近づけることができるだろう。
(2017.06.19)
(前回 混迷する英国政治)
(前々回 若者が一強政治を潰す)
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