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国会論争に見た野党ぼけ2017年6月26日

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【森島 賢】

 国会は、会期延長もなく予定通りに閉会した。与党は共謀罪法を成立させたし、森友問題と加計問題は逃げ切った。一強政治のもとで、与党はうまく国会を乗り切ったようにみえる。
 それと比べて、野党は政府を攻めきれず、多くの国民は、いら立っている。議論が消化不良のままで終わったからである。民進党をはじめ、多くの野党は白熱した国会議論を諦めたようにみえる。
 だが、それでは野党の存在意義がない。野党は、もっと執拗な政府批判ができないものか。論戦に向かう準備が不十分ではないか。野党の国会論戦に臨む姿勢を、ここで厳しく批判したい。このままでは、民主主義の殿堂である国会が泣く。
 野党に提案したいのは、想定問答集の作成である。

 国会論戦をみていると、野党の質問に対する政府の答弁は、官僚が作った作文を棒読みにしているようで、いつも論点を外し、まともな答弁をしない。
 野党は同じような質問をくり返し、政府も同じような答弁をくり返す。野党は、それに対して、2の矢、3の矢をくり出して執拗な追及を行わず、中途半端で打ち切ってしまう。これでは、政府から、野党の質問は出尽くした、といわれてもしかたがない。
 こうなってしまう第1の責任は、答弁をはぐらかす政府にあることは勿論である。だが、追及できない野党にも、責任の一端がある。政府を追いつめて、立ち往生させる気迫がない。野党ぼけではないか。

 ここで野党に提案したいのは、想定問答集を作ることである。
 政府の答弁は、素人のわれわれでも予想できる。だが、その答弁に対する野党の次の質問が出てこない。だから議論が深まらない。そうして浅薄な問答がつづく。そして、国民のいら立ちがつづく。

 国会の議論を聞きながら、思い出したことだが、数十年前に、こんなことがあった。
 ある大学で学生が、「なぜ農業は機械化できないか」という主題の論文を発表した。当時としては、意欲的な題だった。しかし、答えは「農家が機械を持っていないからだ」というものだった。
 これでは答えになっていない。小学生ならこれが答えかもしれない。しかし、大学生の答えとしては落第である。大学生なら、この答えに続いて「では、なぜ農家が機械を持っていないのか」という疑問が、次に浮かぶはずである。それに答えることで、論文の質が良くなる。さらに、その答えに対する疑問が浮かぶはずである。それに答えることで論文の質は、さらに良くなる。
 こうした自問自答を何回も繰り返すことで、論文の質は、ますます良くなる。そうして、真実に近づくことができる。
 国会の議論も、こうした問答をくり返せば、もっと質の高い議論になるだろう。しかし、野党にそうした努力がみえない。だから「農業が機械化できないのは、農家が機械を持っていないからだ」というのと同じような、質の低い答弁をくり返すだけで、国会論戦は終わってしまう。

 政府には、官僚が作った想定問答集があるようだ。しかし、それは、真実を追求するための問答集ではなく、真実を覆い隠すための問答集である。
 野党こそ、真実を追求するための想定問答集を作って国会論戦にのぞむべきだろう。そうして政府を深く、厳しく追及すべきである。そうすれば、国民は耳を傾けるだろう。国会は生き返るだろう。
 いま、野党は臨時国会の召集や閉会中審査を要求している。こんどこそ、真実を隠そうとする政府を徹底的に追及して、森友問題や加計問題の真実を国民の前に曝け出さねばならない。
 そうして、驕る安倍一強政治に鉄槌を下し、国民を欺いて、戦前の陰湿な監視国家、好戦的な軍事大国へ向かう道を閉ざさねばならない。
(2017.06.26)

(前回 監視社会への陰謀を打ち砕こう

(前々回 混迷する英国政治

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