加計問題追及の目的は一強政治の打破2017年7月31日
先週の国会の閉会中審査は、以前と比べて様変わりした。野党の質問者は意気軒昂だったが、答弁する閣僚は意気消沈していた。
これは、格差を放置している政府に対して、経済的弱者が立ち上がったことの結果である。つまり、東京都議選での歴史的大敗、内閣支持率の急落、仙台市長選での敗北などで、政府が弱者の抵抗の力強さを思い知らされたからである。もしも、弱者の抵抗がなかったら、閉会中審査を行うことさえも、なかったろう。
以前は、野党の激しい追及に対して、政府は過剰反応し、乱暴な言葉で言い返していた。居丈高に個人攻撃さえしていた。しかし、こんどは違った。
先週の国会では、政府の乱暴な言葉は鳴りをひそめ、しおらしい丁寧な言葉で答弁していた。しかし、丁寧だったのは言葉だけで、答弁の内容は以前と変わらず、論点をすり替えて質問をはぐらかし、詭弁や虚言を弄して、保身を謀る、という不誠実な答弁をくり返した。
そして、肝心な論点になると、以前と同じように、あい変わらず、記録がないとか、記録を消したとか、記憶がないとか言って隠蔽に徹していた。
これでは、疑惑が晴れたどころか、ますます深まった。
◇
野党の追及の中心は加計問題と自衛隊の日報隠しの問題だった。ともに国政を揺るがす重大な問題だが、ここでは、加計問題をみてみよう。
安倍晋三首相は、野党の追及に対して「加計学園の獣医学部新設の申請を知ったのは今年の1月20日だ」と答弁した。この答弁に対して野党は、虚偽ではないか、つまりウソではないか、として厳しく追及した。
野党は、首相にウソを言わせて、窮地に追い込むために、子供じみた意地悪な追及をしたのだろうか。そうではない。
◇
たしかにウソは良くない。子供のころ、親から「ウソはドロボーの始まり」と言われて、きつく諭されたものだ。ウソを一度でもいうと、ウソを重ねることになり、やがて悪事に走る、といわれたものだ。
しかし、こんどの場合、ウソは国政を揺さぶる重大な問題である。首相の公私混同を隠蔽するためのウソである。つまり、この答弁が真実なら、それ以前に首相が加計学園に便宜を計ることなど、絶対にあり得ない、というわけである。首相は、そのように弁解したいのだろう。
公私混同を疑わせる状況証拠は、いくつでもある。だが、政府は状況証拠だけではだめだという。しかし、これだけの状況証拠が揃えば、疑惑を晴らす責任は政府にある。そうしなければ国民は納得しない。疑惑はますます深まり、支持率はますます下がるだろう。
◇
加計問題の中心は、安倍一強体制に驕った首相の公私混同疑惑にある。そして、公私混同疑惑を追及する戦術の戦略目的は、弱者を攻撃し続ける安倍一強体制をやめさせることにある。
野党は、この戦略目的を見失ってはならない。見失えば、野党はささいなことを取り上げて、同じような質問をくり返している、と非難される。いいかげんで止めたらどうか、といわれる。
だが、ささいなことではない。
◇
加計問題は、獣医師の不足をなくすために、規制緩和をしてその数を増やすかどうかの問題だ、とする主張がある。
また、鳥インフルエンザのような人畜共通ウィルスに対処するために、高度な専門知識をもつ獣医師を増やすかどうかの問題だ、とする主張がある。
これらの主張は、検討すべき重要な問題ではある。しかし、加計問題を追及する戦略目的は、そこにはない。安倍一強政治の打破にある。そうして、農業者など経済的弱者への攻撃を止めさせることにある。
◇
その戦略目的に向かって、野党が協力しあうことが、いま強く求められている。そして、この協力を基礎にして、年内にも予想される総選挙での野党の選挙協力につなげ、安倍一強政治を終わらせることを、多くの国民が期待している。
野党第1党の民進党は人事問題を早急に決着して、ふたたび力強く立ち上がることが急がれる。9月に入ってからの代表選挙では遅い。
(2017.07.31)
(前回 悪夢の防空訓練ふたたび)
(前々回 安倍内閣の隠蔽体質を暴け)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(2)今後を見据えた農協の取り組み 営農黒字化シフトへ2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(3)水田に土砂、生活困惑2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(4)自給運動は農協運動2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(1)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(2)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(3)2025年1月23日
-
元気な地域をみんなの力で 第70回JA全国女性大会2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(1)新しい仲間との出会い 次世代へつなげるバトン 青森県 JA八戸女性部 坂本順子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(2)この地域を、次世代に繋ぐ、私たち 山梨県 JA南アルプス市女性部 保坂美紀子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(3)私たちの力で地域をささえ愛 愛知県 JA愛知東女性部 小山彩さん2025年1月23日
-
旧正月【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第325回2025年1月23日
-
地元産米を毎月お届け 「お米サポート」スタート JAいずみの2025年1月23日
-
定着するか賃金引上げ 2025春闘スタート 鍵は価格転嫁2025年1月23日
-
鳥インフル 米アイオワ州など5州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
鳥インフル 英シュロップシャー州、クルイド州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
スーパー売り上げ、過去最高 野菜・米の価格影響 「米不足再来」への懸念も2025年1月23日
-
福島県産「あんぽ柿」都内レストランでオリジナルメニュー 24日から提供 JA全農福島2025年1月23日
-
主要病虫害に強い緑茶用新品種「かなえまる」標準作業手順書を公開 農研機構2025年1月23日
-
次世代シーケンサー用いた外来DNA検出法解析ツール「GenEditScan」公開 農研機構2025年1月23日
-
りんご栽培と農業の未来を考える「2025いいづなリンゴフォーラム」開催 長野県飯綱町2025年1月23日