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【近藤康男・TPPから見える風景】通商交渉における情報の透明性と秘密性を考える2017年9月28日

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【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

 前回、前々回のコラムで、日欧EPA“大枠合意”以降3回に渡り、筆者も加わっている市民団体のネットワ-クが呼び掛けて実施した学習会、所轄官庁の課長級を招いての政府による説明会と対話集会を踏まえた報告、日欧EPAの分析を紹介した。
 実は、これ以外に、情報公開については、2012年以来「市民と政府のTPP意見交換会・実行委員会」が呼び掛け、賛同団体を募って共に取り組んできた情報公開の対政府要請と政府との対話が行われている。

 このネットワ-クは8月に要請文書を河野外相と茂木TPP担当相宛てに送り、9月6日には初めて書面回答を受けるとともに、担当課長以下と面談を行い、市民団体からの要請での政府説明会も対応するとの回答も得た。
 以下が要請内容の概要だ。
 ・日米経済対話を含む全ての経済連携協定の交渉経過及び内容を所管官庁のウェッブサイトで公開すること
 ・上記に関する市民参加の説明会を、交渉の行われる海外を含め可能な限り各地域で開催すると共に幅広く意見聴取を行うこと
 ・交渉内容・経過についての国会での慎重かつ丁寧な審議を保障すること

 
 
◆最大の秘密性は、空しく響く「交渉中の内容については差し控えたい」にある
 
 政府が常に繰り返すのは、「交渉内容の公表は交渉相手との信頼関係を損ねる」、「こちらの手の内を晒すことになる」、「並行する他の通商交渉に影響を与える」の3点に集約される。
 強調したいのは、民主主義社会では、交渉は"交渉官のもの"である以上に、"国民のものである"ということだ。公開出来ない内容もあるかも知れないが、まずは公開が原則であることを政府は認識すべきだ。相手の主張を勝手に明らかにすることは信頼関係を損なうことになることもあろう。しかし、日本の主張や提案は当然交渉相手・相手国も知っており、知らないのは国民と立法府(議員)だけ、という奇妙な実態に気付く。
 日本側の提案が公表されれば、国民や議員から「そんな提案はおかしい」と批判の声が挙がるかも知れない。業界から「もっと強く要求すべきだ」と圧力が掛るかも知れない。交渉官はやり難いだろうし交渉も長引くかも知れない。米国やEUを見れば分かる。
 しかしこれは、民主主義に伴う"コスト"とされるべきだろう。またこれまでも新聞で詳細が報道され、後になってそれが事実報道と分かることもあった。しかし交渉における信頼関係がどれほど毀損されただろうか?信頼は日常的な真摯な交渉により生まれ担保されるものだ。
 情報化社会では他の通商交渉の当事者も大凡の流れは分かり得る。大切なのは大きな戦略と確信だ。これまでは大局観と確たる信念が不充分なため、というよりは"まとめることを優先するという日本の交渉文化?"なのか、日豪EPA⇒TPP⇒日欧EPA(多分⇒日米経済対話)と譲歩を重ねているのが実態だ。

 

◆立法府(国会・国民)から委託された方針で交渉し、都度報告するのが筋だ
 
 米国議会の15年TPA(貿易の優先事項と説明責任に関する法律)や欧州連合理事会の12年11月29日Directives for the negotiation of a Free Trade Agreement with Japan(日本との自由貿易協定交渉のための指示文書)では、立法府が協定の目的、交渉方針などを策定し、行政府に指示・委任し、報告を受けながら進めることとしている。

 

◆EUとの透明性の違いを再度言いたい
 
 先週、日欧EPAに関連して欧州議会から派遣された代表団が日本を訪問した。政党、経団連、市民団体・NGO、連合を訪問して、日欧EPAについて意見聴取をする目的だ。筆者も、ある市民団体と共に約1時間意見交換をする機会があった。欧州議会として来日しているので賛否の議論をすることが会合の目的ではないが、日本社会が持つ懸念・意見を利害関係者から聴き取り、それを報告書にし、議会に提出するのが彼らの役割だ。そのような回路を通じて未だ決着をしていない日欧EPAの改善すべき点を認識し、交渉役=行政府である欧州委員会に議会=立法府の立場で反映すると共に、議会の判断に資するというのが彼らの目的と言う。
 日本では考えられない?
 
 最後に訪問団の代表は、いみじくも「ISDSはEU加盟国では絶対に受け入れられない。このような古い形の私的仲裁は最終協議での選択肢にはならない」と語った。

 

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