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弱者の党は無くならない2017年10月2日

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【森島 賢】

 民進党が事実上解党した。経済的弱者の側に立つ革新政党の第1党の系譜が、突然消えて無くなった。これは、歴史を画する大転換である。主導した前原誠司氏は、歴史に長くその汚名を残すだろう。今後は、自民党と新しくできた希望党との、保守どうしの2大政党制になるという。だが、それは妄想に終わるだろう。
 解党は、民進党の党中央が決めたことで、そこには中央幹部の、見苦しい自己保身があらわに見える。地方の党組織は納得しているのだろうか。
 党を失った人たちは、難破船に乗った避難民のようになって、希望党に押しかけている。だが希望党は、この人びとを無条件では受け入れないという。
 希望党は、いつもやさしい顔をしているが、駆け込んできた人たちを受け入れるかどうか、厳重に審査するという。審査の基準は、現状の安全保障政策を是認するかどうか、という点だという。
 これは、避難民に同情するかどうか、という人道上の問題ではない。冷徹な政治の問題なのである。多数の前民進党の人たちによって希望党が乗っ取られる、という怖れがあるのだろう。だから、希望党としては当然のことである。
 民進党の党内からは、こうした混乱を招いた前原代表を解任せよ、という声も聞こえてくる。

 決戦の総選挙が20日後に迫っている。
 これまで北海道をはじめ、いくつかの地方では、民進党が中心になって4野党の選挙協力の協議を進めてきた。しかし、この協議は一時中断することになる。中心がなくなったからである。だが、中断の後には、これを好機にして、もっと強力で、もっと広範な協力関係が必ずできるだろう。
 この協議を積極的に進めてきた前民進党の政治家は、今後どうするのだろうか。希望党はそうした政治家を受け入れないだろう。彼らとは、安保政策について決定的な違いがあるからである。また、希望党は、共産党と協力しあう政治家が嫌いだからである。

 こうした状況で、4野党の選挙協力に希望を託し、そのための協議に期待し、4野党の統一候補の勝利を信じていた人たちは、いったい、どの政党の候補に投票するのだろうか。
 この人たちが、自民党候補に投票するとは思えない。そうかといって、自民党と同じ安保政策の希望党候補に投票するとも思えない。いったい、どの政党の候補に投票するのか。
 新しく地方政党を作って、これまで進めてきた4野党の統一候補に投票しよう、という声が聞こえてくる。そうして、革新政党の系譜を、地方ごとに引き継ぐ。それを、全国で集結するという新しい政治状況になるかもしれない。

 これは、一時的な緊急避難ではなく、新しく目指すべき地方自治の形であり、政治の地方分権であり、日本全体の政治の形である。これまでの野党協力の中に、その芽生えが見えている。
 希望党は東京とその周辺で支持される都市型の政党にとどまるだろう。農村にまでは支持が浸透しないだろう。つまり、全国規模で自民党に対抗できる2大政党にはなれない。このことは、同じ型の維新党で実証ずみである。だから、希望党と維新党は、東京と大阪の片すみで、ちんまりと住み分ける、という選挙協力をする。
 希望党のこの性格を見通して自民党は、楽勝できると、ひそかに、ほくそ笑んでいるに違いない。
 このように、希望党は、反安保政策の野党との協力を拒むことで、ひそかに自民党を後押ししている。

 政治は、あらゆる社会問題を解決する要の位置にある。
 では、いま、この国が直面している最重要な社会問題は何か。それは、格差の深刻な拡大である。1%の経済的強者の富裕化と、99%の経済的弱者である農業者、労働者、中小企業主の貧困化、つまり、低賃金化、低所得化である。この格差拡大が根本の原因になって、社会が荒廃し、人心が紊乱している。
 保守とか革新とかの名前はどうでもいい。この格差問題を、各政党は、どのように考えているか。低賃金、低所得問題をどのように考えているか。解消しようと考えているか、あるいは助長しようと考えているか。その考えによって、政党の基本的な政策が仕組まれる。では、新しい希望党はどう考えているか。

 希望党の、この基本政策についての考えは、格差の解消と見せかけて、実際は助長するという狡猾な考えである。この基本政策で、自民党と全く同じである。だから、第2自民党と揶揄されている。自民党と対峙する、などと言っているが、片腹痛い。
 それは、「滴り落ちる」という、すでに破綻した理論を悪用した政策である。つまり、強者に富を溜めれば、その富は、自然に弱者の上に滴り落ちるという、事実に反した欺瞞のための理論である。そこから派生するのが、99%の弱者を犠牲にして憚らない安全保障政策である。
 この2つの政党による2大政党制に、99%の弱者が未来を託すことはできない。彼らの野望は、99%の弱者によって、やがて打ち砕かれるだろう。だから、希望党に未来はない。弱者にとって、自民党もだめ、希望党もだめ、なのである。
 希望党は、自民党政府を打倒するようなことを言っているが、それは強者のための政党どうしの醜い争いである。つまり、強者のための政党が2つに分かれて本家争いをしているに過ぎない。こんなうす汚い茶番劇は、見ていられない。

 では、カヤの外におかれた弱者はどうすればいいか。
 弱者のための政治を要求して、弱者の惨状を打開する政党を支援し、それに期待すればいい。
 この惨状を打ち破る力は、市民団体にはない。市民団体は貴重でもあり有力な組織でもある。しかし、応援団である。この惨状を打ち破る力の源泉は、生産現場で働く人たちの地方労組であり農協である。この認識を政党はしっかり持たねばならない。
 やがて、こうした認識に立つ大きな政党が、必ず出てくるだろう。そうして、弱者の側に立つ革新政党の系譜を、未来に引き継ぐだろう。その芽生えが、4野党協力体制の中にある。
 4野党協力体制の力は、前回の参院選で、すでに発揮し成功した実績がある。いまは一時中断しているが、近いうちに必ず復活するだろう。
 勝機は充分にある。1%の強者のための政党が、自民党と希望党の2つに割れているのだから、99%の弱者の支持をまとめればいい。そうすれば、総選挙は三つ巴になるから、弱者の党が協力すれば、勝利は間違いない。

 最後に、弱者の党の協力体制の、大きな一翼をになう共産党に言っておきたい。
 共産党は、生産現場で汗して働く人たちの労組や農協に、もっと深く入り込み、溶け込むことである。過去の栄光を背にして、彼らを上から目線でみるのではなく、ときには誤りを犯して反省する普通の政党として、同じ目線で見てもらい、彼らから謙虚に学び、彼らから信頼されることに主力をつぎ込んだらどうか。
 そうして、市民団体だけに過度に依存することの限界を認識し、厳しく反省することである。それができなかったから、これまで大きく躍進できなかった。この現実を、もっと深刻に反省して、考えと態度を、勇気をもって改めることである。
 そのための証しとして、共産党という名前を変え、協同党という名前にすることを提言したのは、いまは亡き太田原高昭教授の、農協研究の第1人者としての最後の提言だった。ここには、協同組合と社会主義に一生を賭けた教授の、熱い愛の執着が濃密に込められている。
(2017.10.02)

(前回 4野党で嵐を巻き起こせ

(前々回 マスコミが伝えない北朝鮮問題

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