自民党の農村離れ2017年11月13日
最近の1年間で、自民党農政に対する農村の不信は、ますますつのってきた。それにも関わらず、自民党は衆議院選挙で圧勝した。
なぜ、不信がつのったのか。それは、自民党農政が市場原理主義の色彩を強めたことが原因である。すなわち、市場原理主義とは相容れない農村共同体の基礎である家族農業の否定を強めたからである。
さらに、市場原理主義者が、不遜にも淘汰すべきと考える弱者である農業者の、自衛組織である農協への攻撃を強めたからである。
それに加えて、TPPなど市場原理主義の国際版である農産物の輸入自由化によって、食糧安保を放棄する農政への傾斜を強めたからである。
しかも、自民党は、首相官邸の市場原理主義者たちを隠れ蓑にし、尖兵にして攻撃を強めている。
それにも関わらず、なぜ自民党が選挙で圧勝したか。それは、公明党との巧妙な選挙協力をしたからである。その一方で、野党は四分五裂して選挙協力に失敗した。
上の図は、約5600万人が、投票所へ行って、実際に〇〇党と書いた資料を使ったもので、せいぜい数十万人の出口調査や数千人の世論調査によるものではない。
この図は、横軸に各県の農業依存度をとり、縦軸に最近の国政選挙での自民党の得票率をとったものである。青丸は昨年の参議院選挙で比例区での結果で、赤丸は先月の衆議院選挙の比例区の結果である。
この図をみると、右側にある県、つまり農業依存度が大きい農業県で、自民党はこの1年間、得票率を軒並み下げている。
その結果、昨年の青丸は右上がり、つまり農業県ほど支持率が高かったが、しかし、今年の赤丸は右下がりになった。つまり農業県ほど支持率が低くなった。このことは、自民党の農政がこの1年間で、農村の支持を急速に失ったことを示している。自民党の農村離れ、といっていい。
◇
農業県が多い北海道と東北を、やや詳しくみてみよう。
昨年の参議院選挙では、自民党の比例区での得票率は高かった、つまり、支持率は高かったが、多くの1人区で自民党は惨敗した。
今年の衆議院選挙は、これとは逆で、自民党の比例区での得票率は下がった、つまり、支持率は下がったが、しかし1人区では自民党が圧勝した。
なぜ、こうした民主主義に反する、ちぐはぐな結果になったのか。
それは、いうまでもなく自公与党の巧妙な選挙協力によるものである。そして、野党の選挙協力の失敗によるものである。それに加えて、小選挙区制が選挙結果の歪みを拡大した。
◇
だからといって、小選挙区制に罪を着せるだけで、我慢しつづける訳にはいかない。小選挙区制を是正するには、長い年月がかかる。その間、農業者の苦難が続く。それを許しておく訳にはいかない。
また、与党の狡猾な選挙戦術を恨んでいる訳にもいかない。その間に農業や農村や農協への激しい攻撃が続く。
こうした事態を止めて、家族農業を復活し、食糧主権を回復し、そうして農業の復権を果たすには、どうすればいいか。
自民党が反省すればいいのだが、期待はできない。そうなれば、野党が奮起するしかない。そして、何をするか。
◇
当面は、小選挙区制を逆手にとって、野党も与党のように、巧妙な選挙協力の体制を作り上げるしかない。そうして政権を奪取し、安倍一強政治と歪んだ選挙制度を正すしかない。
そのために、今すぐに始めるべきことがある。それは、野党の間で政策協定を結ぶことである。農政分野でいえば、野党の共通農業政策を策定することである。それは、各党の中央部だけで行うのではなく、農村の現場の人たちが中心になって策定すべきものである。
そうすることで、各党の地方組織が強化されるし、農業以外の分野でも、地方の現場での野党間の政策論議が広がるだろう。それらを基礎にして選挙協定を結んで次の選挙にのぞめば、安倍1強政治をつき崩すことができるだろう。農業・農村への攻撃も止まるに違いない。
農業者だけでなく、多くの国民が、それに希望を託している。
(2017.11.13)
(前回 自民党の衰退は止まらない)
(前々回 与野党逆転の試算)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
米農家(個人経営体)の「時給」63円 23年、農業経営統計調査(確報)から試算 所得補償の必要性示唆2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(1)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(2)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
変革恐れずチャレンジを JA共済連入会式2025年4月2日
-
「令和の百姓一揆」と「正念場」【小松泰信・地方の眼力】2025年4月2日
-
JAみやざき 中央会、信連、経済連を統合 4月1日2025年4月2日
-
サステナブルな取組を発信「第2回みどり戦略学生チャレンジ」参加登録開始 農水省2025年4月2日
-
JA全農×不二家「ニッポンエール パレッティエ(レモンタルト)」新発売2025年4月2日
-
姿かたちは美しく味はピカイチ 砂地のやわらかさがおいしさの秘密 JAあいち中央2025年4月2日
-
県産コシヒカリとわかめ使った「非常時持出米」 防災備蓄はもちろん、キャンプやピクニックにも JAみえきた2025年4月2日
-
霊峰・早池峰の恵みが熟成 ワイン「五月長根」は神秘の味わい JA全農いわて2025年4月2日
-
JA農業機械大展示会 6月27、28日にツインメッセ静岡で開催 静岡県下農業協同組合と静岡県経済農業協同組合連合会2025年4月2日
-
【役員人事】農林中金全共連アセットマネジメント(4月1日付)2025年4月2日
-
【人事異動】JA全中(4月1日付)2025年4月2日
-
【スマート農業の風】(13)ロボット農機の運用は農業を救えるのか2025年4月2日
-
外食市場調査2月度 市場規模は2939億円 2か月連続で9割台に回復2025年4月2日
-
JAグループによる起業家育成プログラム「GROW&BLOOM」第2期募集開始 あぐラボ2025年4月2日
-
「八百結びの作物」が「マタニティフード認定」取得 壌結合同会社2025年4月2日
-
全国産直食材アワードを発表 消費者の高評価を受けた生産者を選出 「産直アウル」2025年4月2日
-
九州農業ウィーク(ジェイアグリ九州)5月28~30日に開催 RXジャパン2025年4月2日