(061)日本の大学の学部名称と農学「系」学部2017年12月15日
文部科学省によると、平成29年時点で全国の大学の学部には約258万人の大学生がいる。彼等の専門分野は何か。概要は、人文科学が14%、社会科学が32%、教育分野の7%を文理半々、残りを自然科学とすれば全体では文系と理系が概ね半々である(図1)。
さて、近年、農学系学部の人気が再び上昇している。ここで何故、農学「系」という言葉を用いたかというと、大学の学部名称そのものが余りに多岐にわたるからだ。少し統計を調べてみた。以下は文科省「学校基本調査」の数字である。
昭和35年には全国の大学の〝学部数″は657(当時でもこれだけ存在した)であったが、昭和45年には999、昭和55年には1135、平成2年には1310と順調に増加し、平成12年には1794、平成16年にはついに2062と大台を超え、平成26年には2466にまで増加している(図2)。
筆者が大学受験をした昭和54年には1121であったことを思うと、現代の受験生は、少なくとも学部数に関する限り当時の倍以上の選択肢があることになる。現代日本には以前述べた地方自治体の数(約1700)をはるかに上回る大学の学部がある。学部「名称」数では実に479種類の異なる名称の学部が存在する。
※ ※ ※
この間、農学系はどう変化してきたか。昭和35年当時の農学系学部とは、農・園芸・獣医畜産・獣医・畜産・農獣医・酪農・水産・繊維、以上10学部であり、合計約3万人の学生が在籍していた。
これが平成29年には、農学系に分類されている学部数は23学部となっている。なお、ここには栄養系・家政系は含まれていない。先日、ある新聞で食と農関連の人気が高まり、関連学部の志願者が増加との記事を見たが、そこで示されている数字は純粋な「農学部」の志願者数推移であり(先の統計で出典確認済)、農学系に分類されている学部の志願者数合計の数字ではない。
多少、わかりにくいかもしれないが、現在の農学部は先に示した23の学部の中の1学部ということだ。実際、筆者が所属している学部(群)もそうである。
それでは農学系23学部全体の志願者数はどうか。直近の統計を見ると、合計志願者数は約13万人、入学者総数は1.8万人、在籍者数は約7.7万人である(表1)。
こうした数字の解釈には気を使う。学部名称が農学部でなくても農学を学べるところがほとんどだからだ。一番典型的な例は「農産物」を「生物資源」と位置づけた形で学部名称を設定しているケースであるが、筆者の所属大学のように食産業というくくりの中で農業をとらえている大学もある。環境やバイオ、生命科学等、時代の流れを反映した名称も見られる。
したがって、農学系学部の潜在マーケットとしては、これら23学部の志願者数合計の約13万人、これに家政系志望者約9万人のうち食物学を希望する5.4万人や、医歯薬工の一部が加わると、恐らく年間約20万人位が対象であろう。受験料を3万円とすれば、単純計算で60億円市場(?)になる。少子高齢化が進展する中で、各大学としては、彼等彼女等に対して、いかに魅力をアピールするかを考えざるを得ない。
※ ※ ※
まとめると、全ての学部を合計した年間大学入学志願者数約400万人(複数校に出願しているためこうした数字になる)のうち、農学系学部の志願者は約13万人(関連分野まで拡大すれば約20万人)である。そして、実際の年間大学入学者約60万人のうち、農学系は1.8万人ということになる。
農学系志望者の増加は喜ばしいが、農業を志望する人材も同様に増えて欲しい。だが、それ以上に気になるのは約2500もある学部と500近い学部名称かもしれない。大学の差別化戦略の結果は、農産物の差別化戦略にも様々な示唆を与えてくれていると思う。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
(関連記事)
・(060)中国の牛肉マーケットをめぐる国際競争(17.12.08)
・(059)バリュー・チェーン:1ドルを分解すると...(17.12.01)
・(058)規模の価値と現実(17.11.24)
・(057)フレッシュマンとしての65歳(17.11.17)
・(056)『魏志倭人伝』:「時に當たりて肉を食わず」(17.11.10)
・(055)各社が活用する協同組合モデル(17.11.03)
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】ホウレンソウにクロテンコナカイガラムシ 県内で初めて確認 神奈川県2024年12月23日
-
【注意報】カンキツ類にミカンナガタマムシ 県内全域で多発 神奈川県2024年12月23日
-
多収米でコメの安定生産・供給体制を 業務用米セミナー&交流会 農水省補助事業でグレイン・エス・ピー ①2024年12月23日
-
多収米でコメの安定生産・供給体制を 業務用米セミナー&交流会 農水省補助事業でグレイン・エス・ピー ②2024年12月23日
-
香港向け家きん由来製品 島根県、新潟県、香川県からの輸出再開 農水省2024年12月23日
-
農泊 食文化海外発信地域「SAVOR JAPAN」長野、山梨の2地域を認定 農水省2024年12月23日
-
鳥インフル 米アイダホ州、ネブラスカ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月23日
-
「JA全農チビリンピック2024」小学生カーリング日本一は「札幌CA」2024年12月23日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」栃木県で三ツ星いちご「スカイベリー」を収穫 JAタウン2024年12月23日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」大分県で「地獄めぐり」満喫 JAタウン2024年12月23日
-
「全農親子料理教室」横浜で開催 国産農畜産物で冬の料理作り JA全農2024年12月23日
-
「愛知のうずら」食べて応援「あいちゴコロ」で販売中 JAタウン2024年12月23日
-
Dow Jones Sustainability Asia Pacific Indexの構成銘柄7年連続で選定 日産化学2024年12月23日
-
「東北地域タマネギ栽培セミナー2025」1月に開催 農研機構2024年12月23日
-
NTTグループの開発した農業用国産ドローンの取り扱い開始 井関農機2024年12月23日
-
北海道立北の森づくり専門学院 令和7年度の生徒を募集2024年12月23日
-
店舗、宅配ともに前年超え 11月度供給高速報 日本生協連2024年12月23日
-
雪の少ない胆振で就農「いぶり農業フェア」開催 北海道2024年12月23日
-
生分解性黒マルチフィルム「Nature Master」試作品を販売開始 昭光通商2024年12月23日
-
佐賀のブランドいちご「いちごさん」表参道の人気店とコラボ2024年12月23日