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【森島 賢・正義派の農政論】自民党の課題は一強体制の改革2018年9月18日

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【森島 賢】

 自民党の総裁選は、石破 茂候補の力が及ばず、よほどのことがない限り安倍晋三候補の圧勝だろうという。議員票は80%を超える支持票を固めた、という予想さえある。耳を疑うほどの大差の予想である。
 なぜ、これほどの大差なのか。両候補の政見の間に、それほどの大差があるのか。そうではないだろう。大差は、一強体制がもたらしたものだろう。石破候補に投票すると、選挙後に干される、という事情通さえいる。
 自民党は、こうした一強体制でいいのか。自民党総裁は、すなわち日本国の総理大臣である。多くの国民は、一強体制でいいとは思っていないだろう。

 総裁選をみていると、この一強体制、つまり独裁的ともいえる体制についての議論がない。両候補は同じ政党に属しているのだから、政見に大差があるとは思えない。しかし、その政見を具体的な政策にする体制には、大きな差があっていい。あるからこそ、その賛否を選挙で決めるのだろう。
 ここで問題になるのが、具体的な政策にするための体制である。農政をみてみよう。

 

 

 いま農政は、自由貿易の名のもとで、自動車などの輸出拡大のために、輸入農産物の関税の引き下げに走る巨大資本と、それを阻止して、日本の農業と日本の食糧主権を守ろうとする農業者など大多数の国民との対峙のなかで展開している。
 一方の巨大資本は、反対する農業者と農協に対して激しい攻撃を仕掛けている。国際的巨大資本を味方につけて、日本の農業を乗っ取ろうとしている。
 それに対して、もう一方の農業者は、農協に集まり、大多数の国民を味方につけて、日本農業を守り、食糧主権を守ろうとしている。

 

 

 こうした状況の中で、いまの農政は、官邸農政といわれるほどに、首相官邸が強い力を発揮している。つまり、こうである。
 政治主導という名のもとで、現場を熟知した行政官を、官邸の人事局の権限で排除する。そうして、現場を知らない、そして、巨大資本の代弁者である、いわゆる有識者だけを官邸に集めた審議会で農政を決めている。
 農政の決定方法は、これでいいのか。2人の総裁候補は、何も言わない。

 

 

 農政だけではない。他の政策も官邸主導で決めている。
 これでいいのか。ここに問題はないのか。2人の総裁候補はどう考えているのか。
 官邸主導の政策決定に対して、党内に異論がないはずはない。しかし、異論を唱えれば、徹底的に冷遇される。そうして、つぎの選挙で公認されなくなる。しかも、小選挙区制だから、公認されなければ落選する。刺客候補を立てられることさえある。
 こうなると、以前の自民党の美風だった自由闊達な議論という風土がなくなり、活力を失う。
 このことを、2人の総裁候補は、どのように考えているのか。2人は何も言わない。

 

 

 こうなった根源には、小選挙区制がある。小選挙区制が、一強政治を生み、党内の活力を圧殺した。そうした認識が2人にはない。そうして、合区を解消するかどうか、などという些末な議論をしている。だから、総裁選が盛り上がらない。
 また、両候補とも地方の現場の声を聞くというが、それだけではだめだ。現場の声を聞き流すだけで、官邸で決めた政策を現場に押し付けるのではだめだ。
 現場の声を聞き、現場の異論を聞き、その異論を真摯に検討して政策にまで練り上げる体制についての議論こそが必要なのである。

 

 

 農政分野でいえば、農村の現場での官邸農政への疑問や異論を、その他の分野では、分野ごとの官邸政治への疑問や異論を、真剣に検討する体制を検討すべきだろう。
 党の活性化を図るのには、だれが総裁にふさわしいか。それを選ぶのが総裁選ではないだろうか。国会で圧倒的な多数を占める巨大与党だからこそ、党を活性化するための総裁の責任は重いのだ。
(2018.09.18)

(前回 国民民主党の国家像

(前々回 国民民主党の尊厳死問題

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