【リレー談話室・JAの現場から】「えるぼし」 人を大事にする経営へ2019年4月17日
◆JA全国大会で提起
第28回JA全国大会決議は実に多くの項目が盛り入まれており、女性活躍も取り上げている。大会決議では職場の女性活躍を具体的にすすめる手段として厚労省の「えるぼし」認定を掲げたが、組織内に全く伝わってこないのが残念だ。というのは「えるぼし」取得は農協が人を大事にする経営に転換し、優秀な人材確保につなぐきっかけとして期待しているからだ。
◆女性活躍企業を認定
「えるぼし」とは、平成28年4月に施行された女性活躍推進法にもとづいて、女性の活躍推進の取り組みが優良な企業に対し、厚労大臣が認定するものだ。この制度は企業側が認定マークを自社商品等に付け、女性活躍を推進している企業であることを社会にアピールするとともに、優秀な人材の確保や企業イメージの向上などにつなげることを狙いとしている。
えるぼし認定を受ける企業が増えている。平成30年12月現在での認定企業は775。当初は大企業ばかりであったが中小企業にも広がっている。かたや、認定を受けた農協はJA周南(山口)、JA江刺(岩手)の二つだけだ。
農協が限られるのは、直接的な取得メリットが少ないからだろう。政府は(1)公共調達が有利にする、(2)301人以上の事業所に義務付けた一般事業主行動計画の加点にする、の2点を用意した。女性活躍推進法による一般事業主行動計画の作成は農協にも求められているが、300人以下の事業所は努力義務にすぎない。
◆人手不足の人材確保
この制度は次世代育成支援対策推進法にもとづく「くるみん」と通じるものだ。しかし、女性活躍法の目的は女性が活躍する職場環境づくりをめざすだけでなく、さまざまな人たちが働きやすい職場へ変革することである。つまり、女性だけでなく、従業員全体のワークライフバランスの改善につながることを狙っている。また、人手不足時代に始まった制度という点で「くるみん」と大きく違う。
農協は15年以上にわたり事業総利益が右肩下がりを続けており、人件費を削減して事業利益を確保してきた。しかし、わが国の労働人口は減少の一途にあり、人手不足は一過性ではなく構造的なものだ。
農協に限らず企業にとってこれからを担う優秀な働き手は金の卵だ。新規採用は売り手市場。若手の中途退職が増えている。彼らはSNSや口コミを通じて、本当に働き手を大事にする企業か、うわべではない本当の情報を見定めようとしている。だから、先を見る企業ほど従業員を大事にする経営に転換している。
◆3ランク・5基準で
えるぼしは、企業の取り組みに応じ3ランクで評価する。5つの基準のうち一つでも達成すれば星一つの認定を得る。5つの基準全てを満たせれば最上位の星3つになる。
5つの基準は以下のとおり。(1)男女別の採用における競争倍率(応募者数/採用者数)が同程度(女性倍率の8掛が男性倍率より低い)、(2)男女の平均継続勤務年数をくらべて、女性が男性の7割以上、(3)法定時間外労働と法定休日労働の合計平均が各月45時間未満、(4)管理職割合が産業毎の平均値以上、(5)女性の非正規から正規への転換、過去在籍の女性を正職員再雇用などの実績があること。
一般企業の平均的な女性管理職比率が7%(帝国データバンク調査)であるのに対して、JAにおける課長職以上の女性管理職比率は10%。それだけで星一つだ。もし、すべての農協が認定を受ければ全国の認定企業の約半分を農協が占める。農協が他企業に比べて女性が活躍している職場である事実自体が、世の中に対して大きなインパクトではないだろうか。
JAグループで初めて認定を得たJA周南の福田理事長(当時)はいう。「風通しの良い職場づくりの中で女性職員の意見を多く取り入れてきた。今後、JA周南で働きたいという女性が増えれば嬉しい」。今、我々は協同組合として「人を大事にする」という価値観が問われている。組合員を大事にするのと同時に働き手である職員を大事にしたい。
(関連記事)
・【リレー談話室・JAの現場から】新社会人の皆さんへ(19.04.01)
・【リレー談話室・JAの現場から】原発事故から8年ー避難先で立派な家庭菜園(19.03.28)
・【リレー談話室・JAの現場から】「反反産運動」に学ぶ 大きな夢を描いて対抗(19.03.01)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 高知県2024年7月16日
-
【注意報】イネカメムシ 県内全域で多発のおそれ 鳥取県2024年7月16日
-
30年目を迎えたパルシステムの予約登録米【熊野孝文・米マーケット情報】2024年7月16日
-
JA全農、ジェトロ、JFOODOが連携協定 日本産農畜産物の輸出拡大を推進2024年7月16日
-
「雨にも負けず塩にも負けず」環境変動に強いイネを開発 島根大学・赤間一仁教授インタビュー2024年7月16日
-
藤原紀香がMC 新番組「紀香とゆる飲み」YouTubeで配信開始 JAタウン2024年7月16日
-
身の回りの国産大豆商品に注目「国産大豆商品発見コンクール」開催 JA全農2024年7月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」鹿児島県で黒酢料理を堪能 JAタウン2024年7月16日
-
【役員人事】ジェイエイフーズおおいた(6月25日付)2024年7月16日
-
【人事異動】ジェイエイフーズおおいた(4月1日付)2024年7月16日
-
日清食品とJA全農「サプライチェーンイノベーション大賞」で優秀賞2024年7月16日
-
自然派Style ミルクの味わいがひろがる「にくきゅうアイスバー」新登場 コープ自然派2024年7月16日
-
熊本県にコメリパワー「山鹿店」28日に新規開店2024年7月16日
-
「いわて農業未来プロジェクト」岩手県産ブランドキャベツ「いわて春みどり」を支援開始2024年7月16日
-
北海道で農業×アルバイト×観光「農WORK(ノウワク)トリップ」開設2024年7月16日
-
水田用除草ロボット「SV01-2025」受注開始 ソルトフラッツ2024年7月16日
-
元気な地域づくりを目指す団体を資金面で応援 助成総額400万円 パルシステム神奈川2024年7月16日
-
環境と未来を学べる体験型イベント 小平と池袋で開催 生活クラブ2024年7月16日
-
ポーランドからの家きん肉等の一時輸入停止を解除 農水省2024年7月16日
-
JAタウンのショップ「ホクレン」北海道産メロンが当たる「野菜BOX」発売2024年7月16日