【森島 賢・正義派の農政論】G20は お祭りだ2019年7月1日
G20が大阪で開かれた。世界の20の主要国・地域の首脳の会議である。
会議といっても、重要なことを決めるための会合ではない。ふだんは角突き合わせている首脳たちだが、ときどきは仲良く集まる、ということに意義がある。そういう会議である。それぞれが、地球共同体の一員であることを確認するための会議である。
これは、地球村のお祭りである。
お祭りだから、口角泡を飛ばして議論する、ということはない。仲良くみんなで古典芸能や現代音楽を楽しみ、机をはさんで食事をする。そのことに意義がある。
しかし、だからといって机の下で足を蹴り合うことが、ないではない。それが嵩じて村八分になることもある。
G20の前身のG8で、ロシアが村の掟を破った、として仲間外れになったことがある。そして、G7になった。だが、地球村には智恵者がいて、ロシアを復活させるためにG20を作った。
こんどのG20では、机の下でどんな蹴り合いが行われたか。
最も多くの注目を浴びたのは、米中首脳の間の蹴り合いである。世界で第1と第2の大国の間での蹴り合いである。それだけに影響は大きい。しかも、国家体制を賭けた争いだから、簡単に解決できる問題ではない。数十年かけても解決できないかもしれない。だから、互いに妥協し合うしかない。なるべく机の下だけで、穏便に妥協点を見つけてほしいものだ。
そのために、日本が果たすべき役割は大きい。
◇
米国の中国に対する主な不満は、中国の補助金政策と、知的財産権問題の2つである。ともに国際ルールに違反し、その結果、貿易を歪め、世界の経済発展を妨げているという。
これに対して、中国は、政治の経済支配や知的財産権の社会的所有は、社会主義国としての国家体制の根幹だから譲れない、と考えている。米国がいう国際ルールとは、米国ルールであり、資本主義ルールであって、普遍的な国際ルールではない、と考えている。そして、社会主義国には社会主義のルールがある、と主張している。
だから、時間をかけて、一方が他方を説得すれば解決する、という問題ではない。それは、無駄な努力で終わる。そうではなくて、たがいに譲り合い、妥協し合って解決するしかない。
◇
しかし、米国には焦りがある。米国の経済力が、近いうちに中国に追い越され、第1の経済大国の地位を中国に奪われるという危惧がある。
だから、いまのうちに中国を痛めつけて、中国に資本主義のルールを押し付けておこう、という魂胆をもっている。そうすれば、第1の経済大国を中国に奪われることはない。経済的覇権を保持できるし、したがって政治的覇権を維持できる、と考えている。
そのために、中国に対して高圧的な交渉をし、中国を屈服させようとしている。中国の経済体制、したがって国家体制は、米国の安全保障にとって脅威だ、などとキナ臭いことさえいっている。
しかし米国が採るべき姿勢は、そうした居丈高な姿勢ではない。お互いに相手のルールを尊重し、認め合う姿勢である。そうして、社会主義と資本主義の共存を図らねばならない。
◇
こうした状況のなかで、日本が果たすべき役割は大きい。
それは、米国の意向を忖度して、米国の代理人になることではない。忖度は安倍政権のお家芸だ、と揶揄する人もいるが、中国を国際ルールという名前の米国ルール、つまり、資本主義ルールに従わせようとすることではない。中国に、掟に従わない無法者、という烙印を押すことではない。中国に改心を迫ることでもない。
そうではなくて、米国と中国の間に毅然として立ち、社会主義と資本主義の共存という高邁な歴史的視点を持って、社会主義ルールと資本主義ルールとの間に、どんな現実的な妥協点があるかを見つけ出し、両国に示して妥協を提案することである。
日本は議長国として、また地球村の隣人として、この役割を果たしたか。残念ながら、その形跡はない。日本の野党は、こうした批判をしているか。残念ながら、まだ聞いたことはない。
(2019.07.01)
(前回 立憲の農業軽視)
(前々回 シラケの参院選)
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