【森島 賢・正義派の農政論】憂うべき若者の保守化2019年8月5日
参院選が終わって、あらためて若者たちの保守化が指摘されている。これは、いまの保守政権が作り出している社会状況に対する、若者らしい批判精神の欠如を意味していないか。もしも、そうだとすれば、日本の将来にとって、まことに憂慮すべきことである。
こんどの選挙で、若者の多くが、政権を担っている保守党に投票したようだ。
もう1つの憂慮すべきことは、若者の投票率の低さである。これは、いまの保守政権に対する無批判を意味しているだろう。それは、保守政権に対する消極的な支持である。
ここでいう保守とは、いうまでもなく、昔の古き良き伝統や文化を守る、などという、ふやけた考えではない。古い社会体制の根幹を守る、という政治哲学である。
保守に対峙する政治哲学は、革新である。古い社会体制の根幹を、新しい体制に改革する、という考えである。
この2つの政治哲学のはざまで、若者たちは保守に傾き、革新から離れてしまったようだ。こんどの参院選で、若者たちは革新党に対する積極的および消極的な不支持を表明したのである。
上の2つの図のうち、上の第1図は世代別にみた自民党支持率である。2016年と2007年の参院選比例区での、自民への投票率である。
07年をみると、20歳代の若者の、自民への投票率は10%程度だった。そして、中・高齢者ほど自民への投票率が高かった。
これに対して、16年をみると、20歳代が40%程度に増えた。4倍ほどの増え方である。30歳代や40歳代も同様で、高齢者と同じ程度の自民への投票率になった。
このことを、若者の保守化といっている。これは、選挙での投票という実際の直接行動でみた保守化である。積極的な保守化といっていい。だが、これは若者だけではない。この図をみると、中齢者も同様に保守化している。
◇
もう1つは、間接的な保守化である。それを示したのが、下の第2図である。
この図は、2016年と1989年の参院選での年齢別にみた投票率である。
89年をみると、20歳のころは40%ほどで、30歳に近づくにつれて上がっていた。これに対して、16年をみると、20歳ころは少し下がった程度だが、30歳に近づいても、なかなか上がらない。このため、30歳ころが89年と比べて最も大幅に下がっている。
ここで示された若者の投票率の低下は、いまの保守政権の継続への間接的な支持を意味している。つまり、若者の間接的な保守化である。
◇
さて、TVなどを見ていると、世界の各地で、現在の政治に対する抗議運動が行われている。その中心は若者である。
しかし、日本にはそれがない。日本の若者は、現在の政治に満足しているのだろうか。現在の保守政権に対する批判を持っていないのだろうか。非正規労働が野放図に広がり、また、低賃金に喘いでいる社会の閉塞状況に対して、若者らしい怒りを持っていないのか。
もしもそうだとすれば、日本の将来は真っ暗である。
しかし、そうではないだろう。ここには、政権を託すべき野党の不在がある。野党が復活すればいいのだ。
◇
いまの政権は保守政権である。だから、社会の紊乱は与党である保守党に、その究極的な責任がある。したがって、それを糺すのは、革新政党しかない。だが、いまの野党は、ことに大きな野党は、革新政党を名乗っていない。私は保守主義者だ、と公言する幹部さえいる。
これでは、若者は野党を支持できない。せいぜい、よりましな保守党に投票するしかない。
◇
では、どうすればいいか。革新を明確に名乗る野党の出現をまつしかない。いまの野党の党員や支持者のなかにも若者はいる。かれらの決起を待つしかない。そして、それは必ず出現するだろう。そうなれば、多くの若者たちが、革新へ回帰するに違いない。
ちょうど、山本太郎代表の新党が、消費増税反対などという中途半端な公約ではなく、消費税の全面廃止を公約して、熱烈な支持を得たように。
新しい革新野党は、非正規労働の禁止、最低賃金の大幅な引き上げ、さらに、海外派兵の禁止、食糧主権の回復などの旗印を鮮明に掲げることになるだろう。
(2019.08.05)
(前回 万年野党からの脱出)
(前々回 野党の弛緩した選挙協力)
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