【森島 賢・正義派の農政論】新型肺炎の反国民的隠蔽2020年3月9日
新型肺炎が猖獗を極めている。しかし安倍晋三政府は、その実態を隠蔽しようとしている。隠蔽は、モリカケ問題や桜問題でみられるように、この政府の得意技である。
こんどの新型肺炎問題でも、蔓延の実態を隠蔽しようとしている。それだけなら、まだしも、隠蔽すべき実態を、政府自身が直視しようとしていない。
これでは、科学に基づく対策など立てようがない。肺炎は科学の法則にしたがって、容赦なく蔓延を続けるだろう。その犠牲になって、苦しみを受けるのは国民である。ことに弱者である。
政府は、隠蔽することで、弱者を犠牲にして、何を求めているのか。
かつて、吉田 茂首相から農相になることを懇請された、日本の農業経済学の創始者ともいうべき東畑精一先生が、中医協の会長を兼任していたころである。先生は「先進国ほど病人が多い」と言われたことがある。お得意の逆説で、解説は不用だろう。
新型肺炎の感染者が多いことは恥ずべきことではない。自慢できることでもないが、恥じて隠蔽すべきことではない。恥ずべきことは、実態を隠蔽することで、科学的な対策を立てられないし、実行できないことである。そうして、弱者に犠牲を強いていることである。
◇
政府は、感染しているか否かの検査さえ拒否している。政府は、医師が必要と判断しても、多くのばあい拒否している。そうすれば、感染者数を少なく見せかけることができて、政府にとって好都合だからである。
最近になって、医師が判断すれば、保健で検査できることにしたが、医師の判断を拒否できる体制は続けている。そうして、実際の感染者を隠蔽し、政府公認の感染者と認めないで、実際の感染者数よりも少ない公認の感染者数を公表している。
医師は検査を拒否されれば、治療の方法が分からなくなる。国民は科学的な治療が受けられず、感染者が増え続ける。そうして、感染元になって家族や周囲の人たちに感染し続け、感染者数がさらに増え続ける。つまり、弱者の犠牲が増え続ける。
◇
政府の言い訳は、こうだ。
医師の判断どおり検査できるほどに、多くの施設がない、という。そうなら新しい検査施設を作ればいい。
また、感染者と分かっても入院できるほどに、多くの病院がないという。そうなら新しい病院をつくればいい。
このように、感染の疑いがあると医師が判断しているのに検査できないし、感染していると分かっても入院できず、感染元になって、自宅で家族や周囲の人たちに感染させているのが実態である。
これは、文字通りの医療崩壊である。
政府は、この医療崩壊に対する危機感がない。だから新しい検査施設を作ろうとしないし、新しい病院を作ろうともしないで、医療崩壊を放置している。
◇
一部の国会議員は、病院船を作ることを提案している。1000人を収容する病院船の建造費は一隻で250億円という。これは、どれほどの金額か。
昨年、政府がトランプ大統領に購入を約束した147機の戦闘機は1機で110億円という。だから、それを止めれば戦闘機2.3機で病院船を1隻作れる。147機の購入を全部止めれば65隻の病院船を作れる。いまある船を病院船に改造するのなら、短期間で、もっと多くの病院船を作れるだろう。
また、新しい病院の建築費は300床の病院で1棟60億円というから、戦闘機1機で2棟作れる。147機の購入を全部止めれば270棟の病院を建てられる。
政府が、これまでの隠蔽と無策を反省するのなら、そして、無策によって病苦に苛まれている感染者の心を癒すのなら、クルーズ船のような、また、リゾートホテルのような、豪華な仕様で病院船や隔離船や病院を作るのもいいだろう。
ここで言いたいことは、必要以上に膨大な量の検査施設や病院を作れ、ということではない。
以上のように、感染者数を少なく見せる理由は、施設がないことではない。医療崩壊の事実を隠蔽したいからである。だが、それは不可能だ、と知るべきである。
いまの医療崩壊の現状を放置すれば、近いうちに安倍政権も崩壊するだろう。
◇
感染者数を少なく見せかける真の理由は、政府が政権を失いたくないからである。そのために、弱者を犠牲にしている。
実際の感染者数が分かれば、膨大な数になり、オリンピック・パラリンピックが開催できなくなるだろう。
それだけではない。日本は世界の各国と、ヒト、モノ、したがってカネの交流ができなくなる。その結果、昨年秋の消費増税と重なって、日本経済は深刻な不況に陥るだろう。
あるいは、新型肺炎を原因にする世界同時不況になり、日本は、そこで大きな役割を果たし、世界の顰蹙をかうだろう。
そうなれば、安倍政権は立ち往生するしかない。だが、政権の崩壊を回避したい、と考えている。これが、弱者を犠牲にして、新型肺炎の拡大の実態を隠蔽する真の理由である。
◇
今からでも遅くない。政府は、その近くにいる無批判で忖度の上手な専門家を、政府報道官のように利用するのではなく、真の専門家の協力のもとで実態を直視し、事実に基づいた科学の方法で対策を練り直して新型肺炎を克服し、手厚い医療体制のもとで、多くの弱者を病苦から解放しなければならない。
(2020.03.09)
(前回 野党の新型肺炎対策が見えない)
(前々回 新型肺炎が招く医療崩壊の危機)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(123) -改正食料・農業・農村基本法(9)-2024年12月21日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (40) 【防除学習帖】第279回2024年12月21日
-
農薬の正しい使い方(13)【今さら聞けない営農情報】第279回2024年12月21日
-
【2024年を振り返る】揺れた国の基 食と農を憂う(2)あってはならぬ 米騒動 JA松本ハイランド組合長 田中均氏2024年12月20日
-
【2025年本紙新年号】石破総理インタビュー 元日に掲載 「どうする? この国の進路」2024年12月20日
-
24年産米 11月相対取引価格 60kg2万3961円 前年同月比+57%2024年12月20日
-
鳥インフルエンザ 鹿児島県で今シーズン国内15例目2024年12月20日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「稼ぐ力」の本当の意味 「もうける」は後の方2024年12月20日
-
(415)年齢差の認識【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年12月20日
-
11月の消費者物価指数 生鮮食品の高騰続く2024年12月20日
-
鳥インフル 英サフォーク州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月20日
-
カレーパン販売個数でギネス世界記録に挑戦 協同組合ネット北海道2024年12月20日
-
【農協時論】農協の責務―組合員の声拾う事業運営をぜひ 元JA富里市常務理事 仲野隆三氏2024年12月20日
-
農林中金がバローホールディングスとポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約締結2024年12月20日
-
「全農みんなの子ども料理教室」目黒区で開催 JA全農2024年12月20日
-
国際協同組合年目前 生協コラボInstagramキャンペーン開始 パルシステム神奈川2024年12月20日
-
「防災・災害に関する全国都道府県別意識調査2024」こくみん共済 coop〈全労済〉2024年12月20日
-
もったいないから生まれた「本鶏だし」発売から7か月で販売数2万8000パック突破 エスビー食品2024年12月20日
-
800m離れた場所の温度がわかる 中継機能搭載「ワイヤレス温度計」発売 シンワ測定2024年12月20日
-
「キユーピーパスタソース総選挙」1位は「あえるパスタソース たらこ」2024年12月20日