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【森島 賢・正義派の農政論】天地を以て経文とす2020年4月20日

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 表題は、日本の協同組合の祖ともいわれる二宮尊徳の言葉である。「あめつち をもって きょうもん とす」と読む。事実の中に真理がある、という意味だろう。
 これは、自分の頭の中にだけ真理がある、と考えている政府高官に対する戒めである。彼らは、自分勝手に真理だといって、不都合なことは隠す。
 新型肺炎問題のばあい、それは政府高官だけではない。その周囲にいる多くの、いわゆる専門家も、この考えのようだ。この考えのもとで、天地を熟視せず、その真理である経典を理解し、解説する責任を放棄している。
 この考えが、新型肺炎の蔓延と重篤化を放置し、多くの国民を病苦におののかせ、死に至らせている。
 新型肺炎を早期に終息させるには、早い検査と十全な隔離のもとでの治療しかないのである。

 政府は、ようやく全国を対象にして、緊急事態宣言を発令した。そうして、全国民に80%の外出の自粛を要求した。外出をしなければ、感染もしないし、感染させることもないという。論理的に聞こえるが、はたして、そうだろうか。
 ここで言いたいことは、外出の自粛を全否定することではない。いまの対策のもとでは、その効果はほとんどないし、それ以前に、対策の効果を正しく測ることさえもできない。そのことを言いたい。

 さて、外出の自粛を論理的に考えるとつぎのようになる。
 ここには、感染者はほとんど全員が隔離されていて、市中にいる感染者はきわめて少ない、という前提がある。だが、日本はそうなっていない。
 いま日本には感染者が1万人いる、とされる。しかし、これは政府が公式に認めた極めて少数の、いわば公認の感染者数である。
 だが専門家によれば、実際にはこれよりはるかに多く、この10倍以上の感染者がいるとされる。検査数が他国の10分の1よりも、はるかに少ないからである。だから、実際には感染者と公認されず、したがって隔離されない感染者が、市中に大勢いる。
 このような日本と比べて他国は、感染者の疑いがある人は、全員検査する。そして隔離する。だから市中に感染者はほとんどいない。感染初期の人や擬陰性の人が、市中に少数いるだけである。この少数の人たちと非感染者との接触の機会を減らそう、というのが他国の外出自粛の対策である。

 この他国の状況と比べて、日本の状況は、まるで違う。
 日本の政府は、検査数を少なくすることで、感染者数を少なく見せかけ、死亡者数を少なく印象づけようとしている。そして政府の対策の成功を、国民と他国に誇ろうとしている。
 しかし、この対策は、多くの感染者を市中に放置することである。その数は前述の専門家がいうように、政府公認の感染者の数の10倍以上という。つまり、10万人以上もの多くの感染者が市中にいる。つまり、市中のどこにでも感染者がいる。
 こうした状況で、80%の外出自粛をしても、その効果はほとんどないだろう。
 そして、その一方で、外出自粛は、家庭内に同居している家族の大勢を感染させることになるだろう。家庭内で、同居している家族と隔離できるほどの立派な家に住んでいる人は、きわめて少ないからである。

 この状況を変えるために、政府が第1になすべきことは、市中にいる全ての感染者を早期に発見し、ただちに隔離して非感染者との接触を回避させることである。
 しかし、政府はそうしていない。その上で、国民に対して外出自粛を要求している。これは、感染の蔓延を防げられなかった責任を、国民に押し付けるための悪辣な企みである。

 このような日本の検査体制をドイツなどと比べると、全く違う。ドイツでは、日本とは桁違いに多くの国民を検査して、その結果、多くの感染者を見つけ出して隔離している。だから、ドイツでは、市中にいる感染者は少ない。そして外出自粛の効果を、かなり正確に測れるし、その成果をみて、外出自粛を緩和することが、実際にできた。
 天地の経典を間違いなく読み解いているのである。
 このドイツと比べて、日本は、きわめて少数の検査しかしていない。そして、検査結果の感染者、いわば政府公認の感染者しかみていない。つまり、非公認感染者を含む大多数の感染者を把握していない。
 天地の経典を理解できないどころか、天地の間にある感染の実態を見ようとさえしていない。これでは、対策の立てようがない。

 いったい、なぜ多くの実際の感染者を隠し、感染者数を少なくして公表するのか。それは、新型肺炎による死亡者数を少なく見せたいからである。そうすれば、政府は自慢できるし、政権を強固なものにできるからである。
 しかし、その陰に隠された、大勢の非公認感染者は重篤化を放置されて病苦に晒され、死の恐怖に慄いている。
 これは、政府の対策を的確に批判できない政治家の責任である。野党にも、責任の一端がある。

 このような現実のなかで、政府が第1になすべきことは、国民に対する外出自粛の説教ではない。検査の励行と十全な隔離である。あらゆる叡智を集めて検査体制を作ることである。あれこれの検査方法は精度が低い、などと言ってはいられない。あらゆる検査方法を早急に検討し、実施すべきである。
 それとともに、隔離病棟の確保を急ぐ。体育館などの利用や、空き地にテント張りの病棟なども、急いで用意すべきである。

 いま、専門家がなすべきことは、感染の蔓延の原因は、外出の自粛を怠った国民にある、などというまやかしの分析をすることではない。なすべきことは、徹底した検査を行い、感染者を早期に発見し、隔離する、という提案である。
 ドイツでは、日本の30倍の数の検査を行っている。韓国では16倍である。なぜ、日本は極めて少ない数の検査しかできないかを分析し、改善策を提案することである。
 それに加えて、感染者を重症化させないための、そして死に至らせないための治療方法の提案である。専門家にとって「自宅療養」は敗北宣言であり、禁句である。
 天地の経典には、「早期発見、早期隔離、早期治療」と書いてあるのではないか。


(2020.04.20)


(前回  国民を犠牲にする安倍政権の危険な賭け

(前々回 新型肺炎患者の自宅療養は棄民だ


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