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【JAしまね・萬代宣雄前組合長に聞く】農水産業貯金保険料積立金凍結を2018年1月24日

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 農業協同組合などに貯金保険を提供するなどで、貯金者等の保護と信用秩序の維持を主な目的とする農水産業貯金保険機構(貯金保険機構)の保険料率引き下げ、積立て凍結を求める声がJAなどから出ている。一般の金融機関を対象とする預金保険機構と比較しても、積立金がすでに妥当な水準に達しており、またJAグループだけでも年間150億円ある保険料を軽減することで、農業振興に投資を増やすことができる。JAグループ全体の運動として取り組むべきだと呼びかけているJAしまねの萬代宣雄前組合長に聞いた。

JAの負担軽減し農業投資へ

 

 --なぜ、積立金凍結が必要なのですか。
 
JAしまね・萬代宣雄前組合長 萬代 10年以上前から、保険料率の引き下げ・凍結を農水省や農林中金などに働きかけてきたが、その時、農水省からは「預金保険機構とのバランスもあり、貯金保険機構だけ変えるわけにはいかない」と言われてきた。しかし、その後、預金保険機構は何度も保険料率を引き下げているが、貯金保険機構の保険料率は平成16年以降、動いていない(表1)。

表1 貯金保険機構・預金保険機構 保険料率の推移

 農水省は「金融環境の変化で、これから何があるか分からないので、農協グループはまだ不足だ」と言っている。たしかに一つや二つ、経営が危ない農協はある。しかし、そのために積立てしているのであって、これまでもいくつかの経営破綻した農協を支援し、立派にその役割を果たしてきた。そのための積立金は、もう十分あるとみている。

 
◆積立てはどこまで
 
表2 系統セーフティネットの財源 
 もう一つの問題は、積立金の目標がないことである。預金保険機構は平成27年度から、33年度までに5兆円の積み立て目標を定めている。この目標額については預金保険機構において、米国、EUの目標水準と比較した上で、「我が国の実情を踏まえた全体としてバランスのとれたものであり、海外との比較でも遜色無いと評価できる」とされている。銀行など一般の金融機関は、約1000兆円の預貯金量を持つので、これを系統の貯金額100兆円に当てはめると5000億円に相当する。では貯金保険機構の現状はどうか。
 28年度末で、貯金保険機構の積立金約4000億円のほかに、JAバンク支援基金が1700億円、各県の相互援助積立金が1500億円あり、この3つの系統セーフティネットを合わせると約7200億円になる(表2)。預金保険機構の目標に相当する水準を十分クリアしている。農水省は、「JAは将来、なにが起こるか分からないから」と言うが、それは銀行も同じことだ。また、貯金保険機構とJAバンク支援基金、各県の相互援助積立金は別物だという意見もあるが、積み立てている目的が同じである以上は、これら全ての合計額で考えるべきである。
 積立金が多いことに越したことはない。しかし、問題はどこまで積立てたらいいのかである。その目標がない。農水省は、目標も示さず「危ない、危ない」と言っているだけで、納得できない。これでは農協いじめとしかみえない。農協いじめは、つまり農家いじめだ。

 
◆信用分離へ追い込み
 
 --農水省は、この問題をどのように考えているのですか。
 
 われわれが保険料率の引き下げ、あるいは積み立ての凍結を主張すると、農水省は、貯金保険機構より、預金保険機構の保険料率が高いことを挙げる。それは銀行の方がリスクが高いのだから当然のこと。積立金の推移を見ても分かるが、預金保険機構は北海道拓殖銀行や日本長期信用銀行の支援で、平成21年まではマイナスだったのだから、保険料率は高くせざるをえないのは当たり前。それをもって、預金保険機構は保険料が高いからというのは、説明にならない。
 そこへ農協改革が絡んでくる。信用・共済事業を分離するため、いつまでも保険料を負担させて、信用事業の代理店化を進めようとしているのではないか。農水省は、手数料でやらざるを得ないようにJAを追い込んでいるのではないかと言われてもおかしくはない。
 保険料の150億円があると、農協の経営に余裕ができる。この額は大きい。1兆円の貯金がある農協では1億5000万円。これを農家の営農支援に回し、農協改革の目標である農家所得の増大につなげることもできるではないか。JAしまねは、県1JAへの合併メリットとして、5億円の農業振興資金を用意したが、だんだん、この水準を維持することが厳しくなってきている。各JAがこの保険料を、「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」など正に今、国が求めていることに回すべきだと考えている。

 
◆全中・中金は前面に
 
 --これからどのよう運動が必要ですか。
 
 このことは相当前から問題提起しているが、農協グループのなかには、いまひとつ認識されていなかったように感じる。苦しい経営のなかから150億円保険料を出しているのに、保険料を税金の一つくらいにみて、その存在さえ知らない役員もいるくらいだ。
 それでも最近は、農協グループでも少しは認識されてきたように感じている。新世紀JA研究会などを通じて、国会議員にも要請しているが、この件の現状について理解を示していただける議員も増えており、議員連盟をつくって働きかけようという雰囲気も出てきている。全中も農林中金も役員が前に出て、もっと旗振りしていただきたい。

 

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