「転げ落ちない社会へ」困窮と孤立を防ぐ方策探る 全労済協会がシンポ2017年11月14日
(一財)全国勤労者福祉・共済振興協会(全労済協会)は11月13日、東京都内で「転げ落ちない社会へ」のテーマでシンポジウムを開き、困窮と孤立を防ぐ方策について、有識者や現地で実践している社会福祉士などが参加して対談とパネルディスカッションを行ない、格差と貧困拡大の原因と、具体的な是正策を探った。
今日、日本では所得格差が拡大し、国民の大多数を占める中間層の貧困化が進み、格差・貧困は一部の人々の問題ではなくなっている。この問題に対し、全労済協会は2016年に「格差・貧困の拡大の原因と是正施策に関する研究会」を立ち上げて議論を重ねてきた。シンポジウムはここでの議論を踏まえて行われた。
(写真)拡大する格差と貧困問題で意見交換したパネルディスカッション
シンポジウムでは宮本太郎・中央大学法学部教授と、湯浅誠・法政大学現代福祉学部教授が対談方式で格差・貧困の問題を掘り下げた。この中で、特に「社会的包括」が取り上げられ、困窮し、孤立した人を弱者として単に保護するのではなく、社会の一員として包括し、社会参加を支援することの重要性が指摘された。
それには、家族のあり方、住居とコミュニティの関係、そして働き方を変える必要がある。ホームレスは、この家族、地域、仕事の三つからはじき出された人たちであり、その支援には、従来の「支援する人」「支援される人」でない、新しい関係性が求められるというわけだ。
特に働き方に関して宮本教授は、全国のさまざまな取り組み事例を挙げ、働きたい人のみんなが働けるユニバーサル就労を挙げる。また湯浅教授は、非正規職員でも夫婦400万円の収入でくらせる社会システムの必要性を指摘した。
子どもの貧困も深刻だ。相対的貧困状態にある子どもは、現在、全体の13.9%、約280万人に達する。湯浅教授は「実態が見えにくいが、国の将来にとって、大きなリスクを抱えている」と早急な対策の必要性を呼びかけた。
パネルディスカッションでは、秋田県藤里町社会福祉協議会の菊池まゆみ会長、みずほ情報総研の藤森克彦主席研究員が加わって意見交換した。藤里町は、町民全てが生涯現役を目ざせる町づくりに挑戦し、ひきこもり者や高齢者に就労の機会をつくるなど地域包括支援を軌道に載せている。
ひきこもり者の参加に成功した理由について菊池会長は「治療としてのサークル活動という閉ざされた空間でなく、地域で実施する活動が、外部に認められたことが大きい」と話した。また高齢者に関しては、人材センターで働きたい人を募集したところ3400人ほどの人口で、90歳以上の女性を含め320人の登録があったという。
一方、都市では高齢の単身世帯の孤立が問題になっている。田舎にはまだコミュニティがあるが都会ではほとんどなくなっている。ただ高齢者が集まっているので「楽しみの会など、キーパーソンを探してつなげる必要がある」と藤森主席研究員は指摘。また宮本教授は「地域で〝必要縁〟をつくる必要がある。その回路をどうするか。悩みをエネルギーにして、みんなで解決策を探りたい」と話した。
なお、全労済協会の「格差・貧困の拡大の原因と是正施策に関する研究会」の研究成果は今年の10月、『転げ落ちない社会』(勁草書房)として発刊された。
(関連記事)
・組合間連携 賀川豊彦を「要」に(17.11.16)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(123) -改正食料・農業・農村基本法(9)-2024年12月21日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (40) 【防除学習帖】第279回2024年12月21日
-
農薬の正しい使い方(13)【今さら聞けない営農情報】第279回2024年12月21日
-
【2024年を振り返る】揺れた国の基 食と農を憂う(2)あってはならぬ 米騒動 JA松本ハイランド組合長 田中均氏2024年12月20日
-
【2025年本紙新年号】石破総理インタビュー 元日に掲載 「どうする? この国の進路」2024年12月20日
-
24年産米 11月相対取引価格 60kg2万3961円 前年同月比+57%2024年12月20日
-
鳥インフルエンザ 鹿児島県で今シーズン国内15例目2024年12月20日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「稼ぐ力」の本当の意味 「もうける」は後の方2024年12月20日
-
(415)年齢差の認識【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年12月20日
-
11月の消費者物価指数 生鮮食品の高騰続く2024年12月20日
-
鳥インフル 英サフォーク州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月20日
-
カレーパン販売個数でギネス世界記録に挑戦 協同組合ネット北海道2024年12月20日
-
【農協時論】農協の責務―組合員の声拾う事業運営をぜひ 元JA富里市常務理事 仲野隆三氏2024年12月20日
-
農林中金がバローホールディングスとポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約締結2024年12月20日
-
「全農みんなの子ども料理教室」目黒区で開催 JA全農2024年12月20日
-
国際協同組合年目前 生協コラボInstagramキャンペーン開始 パルシステム神奈川2024年12月20日
-
「防災・災害に関する全国都道府県別意識調査2024」こくみん共済 coop〈全労済〉2024年12月20日
-
もったいないから生まれた「本鶏だし」発売から7か月で販売数2万8000パック突破 エスビー食品2024年12月20日
-
800m離れた場所の温度がわかる 中継機能搭載「ワイヤレス温度計」発売 シンワ測定2024年12月20日
-
「キユーピーパスタソース総選挙」1位は「あえるパスタソース たらこ」2024年12月20日