第34回全農酪農経営体験発表会 優秀賞・橋本拓也(青森県)2016年9月23日
第34回全農酪農経営体験発表会が9月16日に東京都内で開かれた。北海道から沖縄まで6人の酪農家がこれまでの経験と将来への夢を語った。今回は優秀賞に選ばれた橋本拓也さんの体験を紹介する。
「牛の願い、その実現を目指して」
青森県上北郡六ヶ所村
橋本拓也さん
六ヶ所村は青森市から東へ50キロほど離れた下北半島の太平洋沿岸部に位置する人口1万1000人の村。
現在、県内の酪農家は200戸で出荷乳量は6万3000tほど。酪農家の約7割は上北郡内にいて、うち六ヶ所村には43戸と、県内の2割を占める。平均飼養頭数は県が55頭の中、村は93頭と規模拡大が図られてきた。
◇ ◇
橋本さんは、実家に戻った後、酪農ヘルパーをやりながら父の酪農を手伝い、29歳のときに酪農専業を決意する。ヘルパー時代から16年、本格的に経営にかかわって6年経つ。
父から「この先も酪農で生活していくなら今の牛舎でやっていくのは大変だ。補助事業を活用してはどうか」と問われた。橋本さんは家族だけでは規模拡大は難しいが、機械化とTMRセンターを活用すれば経営できると考え、事業を活用することにした。
「新しい牛舎、飼料管理どうするか」。このときに、酪農ヘルパーの経験が役立ったという。
構想段階で大事にしたことは3つ。(1)家族経営基本としたつなぎ牛舎、(2)規模拡大に伴う飼いやすい牛群、だれがやっても結果が出せる飼養管理、(3)たい肥処理だった。
搾乳牛舎では、個体管理と環境変化の少ない牛舎を目指した。中央通路は牛の移動を考えゴムマットを敷いた。ゴムマットにより移動時の牛の事故はない。
機械化を進めてもあえて意識して人がやっていることがあるという。「餌寄せ」だ。タイミングや残滓の量、そして牛の状態を確認することになるからだ。
給餌は家族労働の軽減策として地元のTMRセンターが供給する。
このTMRセンター「デイリーサポート吹越」は地元の粕類の有効利用が特徴だ。リンゴジュース粕は食物繊維がある。豆腐・醤油粕は安定的に供給される。平成26年から稲WCS利用もはじまった。稲WCS生産者側と検討の結果、作付面積は18haまで拡大した。
搾乳作業では、「自分が飲むことを意識した搾乳」を心がけ、汚れを持ち出さないなど些細なことではあるが徹底している。
このほか、1日6回を意識した発情確認、優良牛からの性判別受精卵の採取などもおこなっている。
たい肥処理にはスラリー方式で対応。糞尿・排水は固液分離機にかけ、デイリーサポート吹越に還元している。
◇ ◇
関係機関の支援は貴重な勉強会で、共進会に入ったことで酪農の可能性はさらに広がったという。
何より「牛は改良するものである」ことを教えてくれ、県内外の仲間との話し合いから、違う目線で酪農経営をみることに役立った。
視察や研修の受け入れも増えてきた。これまで自分が様々な酪農経営を見たり経営者と話したりすることで、自身の経営のあり方を考えたように、酪農を志す人や酪農関係者の役に立ちたいと思っている。
頭数、乳量レベルを維持しつつも、後継牛が確保できた今、F1や和牛受精卵の販売にも力をいれていきたい。労働力確保のため、法人化もすすめたい。
「酪農は1人ではなりたたない」。現在の経営規模でできるのもディリーサポート吹越はじめ、関係機関の支援、家族、酪農の仲間がいるからだと思っている。
酪農を取り巻く情勢はかわっていく。自分も年齢を重ねていくが、「常に変化に対応し、挑戦あるのみ」と考えている。今後は、「目標とされる酪農家」を目指していきたいと話した。
講評では、TMRセンター活用など省力化が評価された。
(関連記事)
・第34回全農酪農経営体験発表会 優秀賞・山田保高(滋賀県) (16.09.22)
・第34回全農酪農経営体験発表会 優秀賞・久保淳氏(岩手県) (16.09.21)
・第34回全農酪農経営体験発表会 最優秀賞 (16.09.21)
・最優秀賞に北海道の高橋守さん、真弓さん-全農酪農経営体験発表会 (16.09.16)
重要な記事
最新の記事
-
【座談会】JA全青協OBの思い 経験が糧に(2)生産者の声 発信が大切2025年2月27日
-
【座談会】JA全青協OBの思い 経験が糧に(3)先が分かる経営者たれ2025年2月27日
-
バイオスティミュラント表示のガイドライン パブリックコメントの募集へ 農水省2025年2月27日
-
社員が米づくり 海外店舗へ輸出 プレナス2025年2月27日
-
23年の農作業事故死亡者数が高水準に 熱中症、未熟練作業者に専用研修など強化 農水省2025年2月27日
-
花が咲いていない真冬のチューリップ祭り【花づくりの現場から 宇田明】第54回2025年2月27日
-
「故郷」を後にする老人のつぶやき【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第330回2025年2月27日
-
大分県のねぎ産出額100億円達成、生産振興大会を開催 JA全農おおいた2025年2月27日
-
スキムミルク使用「一条もんこの明日も食べたい モゥ~っとミルクのキーマカレー」新発売 JA全農2025年2月27日
-
岩手県大船渡市の大規模火災への相談対応 JAバンク、JFマリンバンク2025年2月27日
-
農家向け栽培管理アプリ「Agrihub」に新機能「AI栽培レポート」追加 アグリハブ2025年2月27日
-
千葉県香取市 移住・広報・農業・観光の4分野で地域おこし協力隊を募集2025年2月27日
-
JSS蚕糸の日2025「国産蚕糸・絹の価値とは」開催 日本サステナブルシルク協会2025年2月27日
-
「ノウキナビ」自社配送サービス開始 中古農機具も自宅まで配達 唐沢農機2025年2月27日
-
適用拡大情報 殺虫剤「日曹フェニックスフロアブル」 日本曹達2025年2月27日
-
「米5kgはお茶碗76杯分」小売店向け訴求POPデータに新デザイン アサヒパック2025年2月27日
-
北洋銀行と農業融資分野におけるCDS基本契約締結 日本公庫2025年2月27日
-
藤沢の配送センターで地域交流イベント開催 パルシステム神奈川2025年2月27日
-
東日本大震災 被災地ゆかりのゲストが語るオンラインイベント開催 パルシステム東京2025年2月27日
-
都会の子どもにニッポン農業を発信「ファーマーズ&キッズフェスタ2025」に出展 ぐるなび2025年2月27日