【インタビュー・水田農業対策】金井健・JA全中常務理事(2)2018年11月9日
SBS豪州枠 確実に遮断を
--SBS輸入米と政府備蓄米制度の運用改善も求めていますね。
ミニマム・アクセス輸入米のうち、10万tがSBS輸入米となっています。ミニマム・アクセス米は平成5年にミニマム・アクセス米の導入に伴う「転作の強化は行わない」と閣議了解されました。
当時、政府備蓄米は回転備蓄で、毎年、販売した分をその年に収穫した米から買い入れる方式でした。しかし、現在は棚上げ備蓄方式で入札による事前契約で政府が買い上げるものの、備蓄米は転作扱いとなっています。そうなると、SBS輸入米は主食用供給量から除外されていないことになります。つまり、SBS輸入米の影響を備蓄米で担保しているという政府の説明は、現在は話が違うのではないかということです。この問題については全中としてずっと問題提起をしていましたが、戸別所得補償制度の導入などを経て今日まで来ました。しかし、その後の政策転換のなかで、30年産からは10a7500円の直接支払い交付金もなくなったわけです。そこで改めてSBS輸入米の扱いを整理する必要があるという政策提案です。
7月の食糧部会で私が指摘したのは、たとえば、29/30年主食用供給量は930万tとされていますが、実際はSBS輸入米10万t分を足した940万tなのではないかということです。生産数量目標の配分がなくなった以上、いかに正確な需給見通しを策定するかが大事になっているということからすれば、SBS輸入米も需給見通しに含めることが大事だということです。
そのうえでSBS輸入米を需給に影響させないためには、しっかりと備蓄米を買い入れる仕組みが必要だと提起しています。
さらにTPP11が12月に発効し、米については国別枠が設定されます。米国枠は発効しませんが、豪州産枠は発効します。発効1年目となる12月末から来年の3月末までは4か月分、2000t枠で、4月からの2年目は6000t枠となります。
TPP等関連政策大綱では「国別枠の輸入量の増加が国産の主食用米の需給および価格に与える影響を遮断する」とされています。重要なことは「主食用米」としていることです。
大綱を決定した当時、これをどう具体化するかは発効する段階で議論するということになっていたはずです。それがいよいよ来たわけです。具体的に豪州産枠の初年度2000t、次年度6000tの影響をどう遮断するか、決まっているのは政府備蓄米の運営を見直すということですが、それは輸入量に相当する主食用米を「買い入れる」ということです。
ただ、ここで「米価」と「備蓄」と「SBS」、この3つの関係を整理しておかなければなりません。米価が上がっていると、SBSが増え、備蓄米の播種前契約は低調になります。逆に米価が下がっていくとSBSは入ってこなくなり、備蓄米の播種前契約は増える。こういう関係になります。
ですから、たとえば2000tを備蓄運営で遮断するといっても、今年のように米価が上がっていると実際に備蓄米の入札は低調でした。こういう状況のなかで、どのように政府が買い入れるかがポイントになるわけで、そこを議論したいと思っています。これはTPP大筋合意のときに生産者が安心して水田農業に取り組めるように決めた対策ですから、決まりどおり実施することは大事なことです。
外国から入ってくる米を遮断し、そのうえで主食用米の需給安定を図っていくということだと思います。
その国内対策とはやはり過剰との闘いです。過剰になった場合は現行の米穀周年供給・需要拡大支援対策事業を全県で活用するよう周知することと、さらに大幅な需給緩和が生じた場合に備えた新たな対策の活用も検討するよう提案しています。
また、米の需要拡大に向けた取り組みも重要です。少子高齢化で需要が減っていると言われますが、食生活の変化で米そのものの需要が減っている面もあります。そこで、多様化する食生活に応じて、和食の推進はもとより、グルテンフリーにも取り組むなど、単純に米を食べようというだけではない消費拡大策が必要です。
--全国農業再生推進機構(全国組織)の情報提供など機能強化については?
30年産は29年産と同じ735万tが示されましたから多くの県で前年同水準の目安を設定しました。しかし、31年産は全国の生産量が735万tから減少した場合、各地が生産の目安をどのように設定し目安に沿った生産にどう取り組んでいくかが大きな課題になります。
そこで需給見通しや生産、需要、在庫の動向、各県の目安の考え方について、市町村・JA段階でも需給の安定を図れるために全国組織が効果的に情報を発信できるよう、国からの情報提供による支援が必要だと考えています。
一度過剰が積み上がると、その在庫を減らすためには時間がかかります。そういう意味でも、需給を安定させ、価格も安定的に形成していくことが、農家の所得増大には不可欠だと思います。
そのほか政策提案としては、農産物検査見直しについては現行制度を堅持することを求めているほか、種子法の廃止については、行政による種子の安定供給と品質確保等について、引き続き必要な対応を求めていきます。
-ありがとうございました。
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