全農「営業開発部」新設に思う【NPO野菜と文化のフォーラム監事 今野 聰】(下)2017年9月29日
(5)1984(昭和59)年7月、首都圏・近畿圏両事業部を合体し、新機構である大消費地販売推進部(販推部)に衣替えした。相変わらず、系統農協組織3段階の原則を守り、歴史的に形成された系統共販3原則に従った。ただし、激しい産直の嵐に対応するため、「系統農協主導型産直事業」など革新方式も取り入れた。商品開発とともに、苦労した事業方式の創設にも努力した。
時代は1990年代のバブル経済を過ぎ、金融不況時代をくぐった。1992年のICA東京大会のあと、大型店舗展開の生協運動にも苦闘の時代が到来、「個配」などの活路はまさに救世主だった。これらは宅配業者の隆盛に対応したものだった。
かくて、流通革命時代を牽引したダイエー・セゾン時代が終わりを迎えた。それから2000年に入って以降、「グローバリズム」の嵐が吹き荒れ、農産物の海外輸出戦略が求められる時代になった。それが現代であり、私が営業戦線で活動した時代の実感からは、分からないことだらけになったのである。
(6)おそらく、新設の「営業開発部」には、多くの期待が寄せられよう。とりわけ、旧直販事業時代には米穀事業が国家制度で、がんじがらめだった。そのため、どんな新流通対策を起草しても、米担当部は蚊帳の外だった。そのことに危機感を持った人たちは、米消費拡大の御旗の下、流通にチャレンジしたのも事実である。
こうしたチャレンジに、いくつかの難点もあった。何よりも直販営業である以上、販売現業各部の獲得目標を超えて共通のゴールを目指さなければならない。とりわけ大手スーパーは販売目標の品目間口が広い。年間販売目標を100億円以上に設定した例も少なくなかった。ここで現業各部の営業目標との個別調整は難しい。例えば特売をメインにした企画案には、調整に多くの時間を要した。結果は「農協フェア」の企画理念がボケルからだ。とりわけ精米販売は、流通制度の制約が多く、結果的には販売企画からはずれることが多かった。
またAコープの年間推進企画との調整も難点だった。スーパーに協賛すれば、そこには競合する農協店舗の年間企画がある。その調整である。1990年代は、まだ農協店舗拡大の時代趨勢だったからである。
以上を総合すれば、全農独自ブランドの未開発に尽きたのかもしれない。精米一つとっても、産地ブランドの未形成時代だったからだ。
かくて、2000年代に入って、詳しくは知らないが、大消費地販売推進部に期待するより、品目各部の個別推進時代が圧倒的な流れになったのだった。今回は米担当が胸を張って、精米営業開発に全力投球できそうである。そこは大いに期待したい。
なお、『全農二十年』(平成5年6月)には、これまで触れた歴史的経過が少なくとも1992年までは、すべて含まれている。これからの担当者が、この冊子から学ぶことを切望したい。
・全農「営業開発部」新設に思う【NPO野菜と文化のフォーラム監事 今野 聰】(上)(17.09.28)
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