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協同組合の文化への役割を明確に JCAが研究会2018年7月9日

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 「協同組合は文化に対して何ができるか」。このテーマで日本協同組合連携機構(JCA)が7月7日、東京都内で研究会を開いた。高崎経済大学の佐藤敦子准教授が、非営利企業が文化・芸術活動の維持・振興に果たす役割、岩手県みやこ映画生協の櫛桁一則常務が日本で唯一の映画生協の歴史と活動で、またJCAの阿高あや副主任研究員が俳優を組合員とする東京俳優生協についてそれぞれ報告し、文化事業のあり方を探った。

 JA、生協を問わず協同組合組織は、その目的に文化の振興をうたっているが、実際は組織と組合員(会員)の経済的利益を優先せざると得なくなっている。同機構はあらためて営利を目的としない協同組合が文化事業をどのように展開するかについて問題提起する。
 高崎経済大の佐藤准教授は、松竹(株)の演劇事業や独立行政法人が運営する国立劇場、アメリカのメトロポリタン歌劇場(MET)、イギリスのロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)のミッションや経営方針を比較。松竹は「日本文化の伝統を継承、発展させ世界文化に貢献する」とうたっているが、重要なことは歌劇場を将来とも持続させることで、「そのためのマーケティング、マネジメントをどうするかが問題」と指摘する。

「協同組合と文化事業」で意見交換(写真)「協同組合と文化事業」で意見交換

 

 組織形態は違っても、テレビを含む電子媒体の普及で、国立劇場やMETもROHのいずれも、程度の差はあれ、入場者の減少、財務状況の悪化という問題を抱えている。同准教授は、舞台芸術は市場原理の適用による営利目的では成り立たないとして、準公共財であると指摘。
 その上で、「非営利団体だからこそ、興行成績の厳しい芸術性の追求を目的とした上演ができる。そのためには社会的課題にインパクトを与え、社会から求められる存在になるべきだ」と話した。
 みやこ映画生協は、こうした文化事業を岩手県の宮古市を中心に展開している生協で、映画愛好者の生協は全国でもここだけ。いわて生協が宮古市にショッピングセンターをつくったときに、常設の映画館を設け、これを運営する組織として映画生協をつくった。その後、東日本大震災や、デジタル化への切り替えなどもあって経営が悪化したため、常設の映画館を閉館。いまは公民館や仮設住宅などに出向いて巡回上映会を続け、被災者に楽しみと元気を提供している。南北約300㌔の三陸沿岸で、約450か所で550会以上の無料上映会を重ねてきた。
 併せて文化庁の事業で、映画上映会の運営ノウハウなどを学ぶ映像アートマネジャー養成講座を開くなど、他の団体とともに地域のさまざまな文化活動を展開している。同生協の櫛桁一則常務理事は、人口の少ない地方で映画館を運営する難しさを指摘。しかし「上映会を開くと、子どもやお年寄りの皆さんが本当に楽しみ、喜んでもらえる。特に震災後そのことを感じた。仮設住宅にはこれまで縁のなかった人が住んでいますが、映画によって新しいコミュニティが生まれている」と言う。
 東京俳優生協(俳協)は1960年設立。365名の組合員を有し、その目的は「相互扶助の精神に基づき、組合員の生活の文化的・経済的改善・向上をはかる」(定款)とうたっている。事業は組合員福祉のほか、全国規模で行う劇団俳優の講演活動、俳優の養成なども行っている。
 俳協は、もともと立場の弱い俳優の地位と権利向上を目的に生まれたものであり、本来は労働組合になり得た組織だが、阿高あや副主任研究員は「労働争議を経て、一般協同組合法ないし協同組合基本法のない日本で、生協法に自らを位置付けたのはすばらしい」と評価した。

 

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