6年間で新規就農60名超-JA愛知東2018年9月18日
JA愛知東管内では平成24年度以降、6年間で60名を超える新規就農者が定着している。新規就農者の募集はJA、新城市、森林組合、商工会が出資して設立した農林業公社が取り組み、農業研修、住まいの相談など受け入れ事業を積極的に行っている。農業協同組合研究会の現地研究会(9月8日、9日)で新規就農者を訪ねた。
農林業公社は平成8年に設立した。公社独自の事業として菌床しいたけ、自然薯栽培、都市農村交流、稲刈りなどの作業受託、農地の売買・利用権設定業務などとともに、新規就農者受入れ事業も積極的に行ってきた。
平成24年度からの29年度までの6年間で62名が新規就農している。
就農形態は親元就農が21名、定年帰農が3名、管内からの新規就農が8名だが、注目されるのは管外からの新規就農が30名にのぼることだ。
作物はJAが基幹品目と位置づけるトマト、イチゴをはじめ、露地野菜、キノコ類、和牛繁殖などに新たな担い手が就農している。 作手地区のトマト栽培は昭和50年代に始まった。標高500mの高原トマトとして夏秋に名古屋や浜松などの市場に出荷する。JA管内には3地区で計60印がJA愛知東トマト部会として栽培しており、出荷ピークとなる7月に今年は3600ケースを出荷、JAによると「3000ケース超えは初めて」だという。
作手地区の生産者は23名。今やそのうち6割は地域外からの新規就農者が占める。新規就農相談会では、トマトの場合、1区画20aで年間所得650万円を経営モデルとして示す。JAによれば国の新規就農者支援策とともに、JAが積極的に振興したい作物についての経営モデルをしっかり説明することが新規就農者が増える要因になっているという。
◇ ◇
選果場に出荷に来ていた藤方重人さん(37)は1年間の研修を終え、今シーズンが自営農業者として初めての出荷だという。「自分のハウスの特性が分からない部分もあって失敗もありましたが、やりがいがあって楽しいです」と話す。
出身は愛知県。音楽イベントなどにオリジナルの音響機材を貸し出す会社を経営しながら、岐阜県内に栗園を購入して和菓子店に卸す仕事も始めた。しかし「農業で安定した生活」をと考え、農林業公社が開いている就農相談会に。JAが示す経営モデルや支援体制も充実していることから、トマトを選び作手に移住した。
(写真)藤方重人さん
農業を始めてみて、JAによる共同選果の仕組みや定期的な営農指導を知り、「手厚く支援してくれていると感じています。自分で市場へ出荷まではできません。農協があってこその自分の経営なくてはならない存在です」と話す。
JA職員が地域の特産品づくりをリードしようと新規就農した人もいる竹下健二さん(46)は標高を生かし中京圏で品薄になる夏場にも出荷する周年ホウレンソウ栽培を職員とともに研究し、4年前にJAを退職、就農した。
その後、竹下さんに指導のもと2名の新規就農者が加わり3名で計1haのハウス栽培をしている。それぞれが家族のほか出荷作業にあたる従業員を雇用。
(写真)竹下健二さん
1つのハウスで年6回種まきする。栽培は無加温。竹下さんは「土づくりに尽きる」という。 周年ホウレンソウは愛知県では唯一の産地。何とか特徴を出そうと栽培方法を試行錯誤したところ、糖度が12度になり生でも食べられるホウレンソウとして売り出し中だ。愛知県内のスーパーへの販売や、インバウンド需要に応えようと食材を探していた名古屋市内のホテルに供給することも決まった。
「死ぬまで部会長をやるつもり」と竹下さん。新規就農者のリーダーとして産地づくりを引っ張る。
(写真)今年9月に開いた新規就農者相談会(職員は写真のようなTシャツを着用)
(関連記事)
・地域密着のJAに学ぶ「水と緑と食」のJA愛知東 農協研究会(18.09.10)
・【福祉事業部門受賞】高齢者に生き甲斐の場 荻野孝子・JA愛知東 助け合い組織「つくしんぼうの会」会長(18.07.19)
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