元気な地方へ多業種連携 初イベント「共創の日2018」開催2018年9月26日
JA全中をはじめとする農林漁業と商工業の全国5団体(JA全中、全森連、全漁連、全国商工会連合会、日本商工会議所)と内閣官房は9月24日、地方創生に向けた多業種連携シンポジウム「共創の日2018」を開いた。シンポジウムでは全国5団体が今後も連携を強めて、地方創生を促進する原動力となると宣言したほか、事例報告とパネルディスカッションで今後の課題などを共有した。
シンポジウムは各団体が地域で連携し、特産品の開発や販路拡大などの面で成果を挙げている事例などを報告し、各地での連携促進や、今後の課題などを共有するのが狙いで5事例が報告された。
山形県河北町商工会は国内では少ないイタリア野菜の生産販売をめざして有志生産者とともに栽培に取り組み、平成25年に「企業組合かほくイタリア野菜研究会」を設立、現在、17名の生産者で約50品目を出荷している。出荷先は県内外の高級イタリアンレストランを中心に約180店舗にまで拡大した。
生産量の拡大にともなって関西方面に販売しようと考えたが、遠距離のためコストが課題となっていた。そこにJAさがえ西村山がJAの輸送トラック利用を提案、これによって大阪の中央卸売市場への出荷が実現し、コストを抑えたかたちで販路を拡大できた。売上げは27年の2000万円が29年には、4900万円を越えるまでになった。
今年から地域住民にも知ってもらおうとJAが開設した直売所で野菜ソムリエが解説しながらイタリア野菜を販売しているほか、JAと連携しジェラートなどの開発も手がける。農外から3名が新規就農するなど地域農業振興にもつながっている。
(写真)多業種連携で成果をあげている団体がフェアも開催した
◆地元の飲食店に提供
東京都の八王子商工会議所はJA八王子と連携して新たな地域特産品として「パッションフルーツ」を軸とした地場産農産物の販売促進と商品開発を進めている。
パッションフルーツは若手農家が栽培をはじめ仲間を募って生産組合を設立した。商工会議所はJAとの都内初となる業務提携を契機に、地場産農産物を使いたいという地元飲食店のニーズに応えようとパッションフルーツやショウガ、枝豆、ブルーベリーなどの地産地消を進めている。
報告した八王子商工会議所の担当部長、小野桂一さんによると業務提携によって「トップ同士が双方のイベントなどに出席するなど、連携が深まり職員レベルでもスムーズな関係になった」と話す。地元の飲食店のニーズもふまえながら商品開発やマッチングを行っていきたいという。
三重県松阪市の松阪飯南森林組合は商工会と連携し、未利用の間伐材を1t6000円で買い取るが、支払い代金のうち半分を商工会発行の商品券で渡すという森林活(もりかつ)プロジェクトを進めている。買い取った間伐材は木質バイオマス発電の材料として松阪市内で利用されている。
プロジェクトによって森林所有者は収入増となり森林管理意欲も高まったという。商品券は年間400万円を超える額を発行。商工会によっては商店の売り上げの約7割がこのプロジェクトによるもので、地域経済の活性化にもつながっている。継続的な間伐が課題となっている。
(写真)代表して5団体宣言をするJA全中の中家会長(中央)
◆健康志向でヒット商品
(写真)5つの事例報告をもとにパネルディスカッション
和歌山のJAわかやまは商工会議所と連携し特産の新ショウガでジンジャーエールを開発し売り出した。全国2位の新ショウガ産地として知名度を高めたいとして、行政とも商品開発を議論してきた。現在は県産の梅果汁や特産柑橘ジャバラ果汁を加えた商品も開発しラインナップを充実させた。
売り上げ当初から100万本に迫り29年度には160万本の大ヒットとなった。報告したJAわかやまの黒川秀之常務は「作ることも大事だが売ってこそ事業。地道な販路拡大とともに、トップセールスにも力を入れている」などと話した。
長崎県のJF大村湾は市場価値が低い「黒なまこ」は漁場に残され、さらに増えるという悪循環に苦慮していた。一方でJFはなまこの加工作業をする女性の手が冬でも荒れていなかったことから食用以外の優れた効用を確信し活用方法を検討していたところ、ベンチャー企業から打診があり石鹸の開発に着手。県の商工会連合会などの支援を受けてJFとベンチャー企業など商品化に携わった有志で黒まなこ石鹸の販売を目的とする会社を設立した。現在、JFは黒まなこの乾燥品を原料として供給している。商品製造には大学や製薬企業なども関わる。
「大村湾漁協の石鹸」は初年度(平成21年度)で売上げ5000万円となった。現在は石鹸以外にもスキンケア・ヘアケア関連商品の開発・販売が行われている。
この事業によって黒なまこは1kg500円と事業開始前の5倍の値段で取り引きされ、漁業者の所得向上につながった。また、収益の一部は稚なまこ放流事業に還元され資源の保護にも取り組んでいる。
報告した松田孝成代表理事組合長は「お金にならなかったものから収益を上げることができた・資源を維持し、いかに有効に使うか考えていきたい」と話す。
パネルディスカッションではJAなど生産者組織の持つ作る強みと、販路開拓などのノウハウがある商工会などがお互いに学び合うことの大切さと、繰り返し意見交換していくなかで新しいアイデアにつなげていく努力が強調された。座長を務めた和歌山大学の岸上光克教授は来年もシンポを開催し、さらに多くの現場からの報告があるよう各地で取り組みが進むことに期待した。
《多業種連携による地方創生に向けた5団体宣言》
わが国では人口減少、高齢化社会に直面しており、真正面からこれに挑んでいく必要がある。克服するには元気な地域を創っていくことが何よりも重要である。
われわれ農林漁業および商工業の全国5団体は農林漁業と商工業の連携を通した地方創生の推進に関する協定書を締結し、地方創生の推進に取り組んできた。協定の締結により販路の開拓や6次産業化、地域コミュニティの確立などの取り組みが促進されており、団体間の連携協力は地域の持つ魅力、地域の持つ力を引き出すことにつながると確信している。
今後もわれわれ5団体が原動力となって、地方から元気を発信し全国で多業種連携による地方創生に向けた取り組みが一層促進されるようここに宣言する。
(関連記事)
・【小松泰信・地方の眼力】地方の臭いを忘れるな(18.09.12)
・【リレー談話室・JAの現場から】生乳の南北戦争(18.09.03)
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