農泊を地域の活力に 広域化で受け入れ体制を 都市農村交流全国協2019年3月19日
都市と農村の交流を通じてJAの正組合員と准組合員、地域住民との関係強化をめざすJA都市農村交流全国協議会の情報・意見交換集会が3月12日都内で開かれた。ただ一つの食材、鯖にこだわり事業と地域の活力につなげた飲食店、地域資源を磨き上げて都市の住民を招く栃木県佐野市、レストランやインバウンド研修ツアーの民泊などを広域で展開する熊本県人吉・球磨地域の女性グループなどの事例報告をもとに情報交換。特に農家民泊(農泊)を中心とした交流の取り組みが関心を集めた。
◆地域資源掘り起こす
栃木県佐野市は地域活性化で、JA佐野が中心になって「あるくる大作戦」を展開する。「地域資源を掘り起こし・磨きあげを経て商品化へ」をコンセプトに体験プログラムの整備、農泊プランの整備、着地型旅行商品の整備を進めた。「ある」は資源、「くる」は観光客の意味。
佐野市には年間約870万人の観光客が訪れるが、その大半が、佐野市の中心である南部に限られる。この観光客を人口が減少し、空き家・耕作放棄地の増える北部に招こうというもの。その核になるのが民泊で、平成30年に農水省の農山漁村振興交付金の事業を導入し、滞在型旅行を取り入れた。
報告したJA佐野総合企画課の飯田智行さんは、農泊の客を味覚狩り(観光農園)に招くことで、(1)農村ビジネス確立による地域の収益拡大、(2)耕作放棄地を農地として活用、(3)観光客の誘客などの効果をあげる。また空き家を交流施設・宿泊施設としての活用することなどで、今日中山間地域が抱えている課題解決に繋がることを指摘した。
(写真)JA佐野総合企画課 飯田智行氏
◆地域が一体で運営を
熊本県の人吉・球磨地域でレストラン、農家民泊事業を展開する「リュウキンカの郷」代表の本田節さんが報告。コミュニティレストラン「(有)ひまわり亭」のスタッフは40~70歳代で、キーワードは「もったいない」。地域の財産である高齢者の知恵と経験と技と感性、古民家、地域の食材を活用しようということで、築120年の古民家を再生し、20年前にスタートした。
現在、年間3万人の来客・研修事業を行っており、地産地消だけでなく、食を通じた地元の情報発信、旬の食材を使った食文化の創造と伝承、安心で安全な食の提供、グリーンツーリズム推進にこだわり、その拠点になっている。ひまわり亭は、インバウンド研修を受け入れており、海外との繋がりも生まれている。
人吉・球磨地域(1市4町5村)は平成29年から農水省の交付金事業で農泊事業を開始。本田さんはこれからの農泊について、(1)学び直しによる品質の向上、(2)持続可能な実践のため、若手人材および地域コーディネーターと中間支援機構の構築、(3)泊食分離など地域一体型経営、(4)広域的な連携体制の必要性を指摘する。その拠点として「リュウキンの郷」をつくった。本田さんは、九州県内のツーリズム実践者によるネットワークで、農泊のクオリティを向上させたい」と呼びかけている。
(写真)「リュウキンカの郷」本田節代表
◆鯖で事業・地域に活力
このほか大阪に本部を置く、(株)鯖やグループを率いる右田孝宣代表取締役が。「『さば』から始まるマーケットリーダーへの道」のテーマで、鯖を専門とする同グループの販売戦略・ブランド戦略について話した。徹底的に「サバ」にこだわる。鯖のメニューは38(さば)種類、店の番地は「1-1-3-8」(いいさば)。また、各店に入ると「サバ感」を感じてもらうため、店内は徹底して鯖を表現。絨毯を含め、あちこちに「SABAR」(サバ―)の文字がある。
そしてブランドを認知してもらうためPRを徹底。プレスレビュー、他の飲食店との業務提携、新商品発表、記念日(3月8日の「さば」の日)の設定などで、常に新鮮味を出し、メディアにアピールした。「6年間で2000媒体以上紹介された。メディアにしっかり伝える事が大事」と言う。
さらに自社のブランドで産地をブランディング。鯖街道を通じて京都へ日本海の鯖を送った福井県の小浜市で鯖復活プロジェクトを展開。鯖街道にある酒造会社で酒を造り、酒粕を養殖の鯖に食べさせ、「よっぱらいサバ」でブランド化。「SABAR鯖街道」を京都と小浜市に展開するなど、地域の活性化につなげている。
(写真)(株)鯖やグループ 右田孝宣代表取締役
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