JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
協同組合運動の司令塔めざせ― 中央会のあるべき姿 ―【JA全中 中央会改革対策室長 中村 義則 氏】2017年6月30日
新たな機能を提起
代表・総合調整・相談機能で
一般社団法人になって、JA全中はどのような機能を果たすべきか。このテーマで新世紀JA研究会は6月26日、第9回の「危機突破・課題別セミナー」を開き、意見交換しました。全中の報告をもとに、JAが求める全中・都道府県中央会のあるべき姿を探りました。JAからは、組織形態が変わっても、JAグループを導く司令塔をしての役割を求める意見が多く出ました。JAの意見と意見交換の内容は次回(7月10日付)掲載します。
◆中央会の組織変更 平成28年4月の農協法改正により、平成31年9月末を期限に、都道府県中央会は非出資の連合会に、全国中央会は一般社団法人にそれぞれ組織変更し、JA全国監査機構は外出しし監査法人化することとなった。
従来の中央会制度を概括してみると、2つの側面で説明できる。第一に、国からの要請により行政の補完的な役割を担う組織としての性格である。例えば、中央会は農協法に規定されている事業は必ず実施しなければならず、他の事業を実施することはできなかった。また、中央会の会員以外にも農協法上の組合に対しては指導義務があるなど、いわば行政的な性格ともみれる中央会の組織運営に関する固有の事項が農協法に規定されていた。
第二に、中央会はJAグループの自治組織として、自らの意思により運営されてきたという側面である。例えば、定款の他、中央会が事業を行う基礎となる中央会の中期計画、事業計画、予算、賦課金等は会員の自らの意思で機関会議等で決定される。定款については国の認可が必要であるものの、その他の中央会の組織運営にかかる重要な事項のほとんどは、会員の自治の中で意思決定され、運営されている。中央会は組合・組合員の抱えている課題に対し、JAグループとして主体的に決定した方針・自主ルールを背景に中央会は事業を行っている。
中央会が連合会、一般社団法人にそれぞれ組織変更するということは、今後の中央会は前者の性格がなくなり、後者の「会員自治」の側面のみによって運営されるということである。国や行政が中央会のあり方を決めるのではなく、会員であるJA・連合会等が自らの意思で主体的に中央会を設置し、形作っていくこととなる。組織変更後の中央会にどのような機能発揮を求めるのか、各県段階、全国段階で、協議を深めていきたい。
◆総合審議会答申 第27回JA全国大会
このような農協法改正が決定されたことから、平成27年度には、今後の中央会のあり方に関するJAグループ自らの意思を取りまとめるべく、総合審議会、第27回JA全国大会において、JA・連合会・全国機関との協議が行われた。この中で主要なものを抜粋すると、以下の事項が取りまとめられている。
(1)新たな中央会組織の基本的な考え方
ア、会員の意思に基づく組織
新たな中央会の組織・事業のあり方は、JAグループの意思結集・代表する組織としての観点から、会員との協議に基づき中央会ごとにそれぞれ決定するものへと転換する
イ、JAグループの結集軸としての組織
新たな中央会は、地域・事業の枠を超えて連帯するJAグループの結集軸としてリーダーシップを発揮し、農業協同組合運動の発展に貢献する
ウ、JAグループの自己改革を支援する組織
JAグループの自己改革の着実な実践をはかるため、新たな中央会は、連合会等と連携し自己改革の支援に重点化する
(2)新たな中央会の機能
新たな中央会は、以下の機能を発揮することを通じて「地域・事業の枠を超えて発揮すべき役割」や「JA・連合会等よりも中央会が実施した方が効果的・効率的である役割」を担う。
ア、代表機能
組合員・JAの共通の意思の結集・徹底を通じて引き続きJAグループを代表する。協同組合意識の醸成のため、組合員および役職員に対する協同組合理念教育を行うとともに、JAの活動や協同組合理念に関する国民的な理解をすすめていくため、国内外の協同組合組織と連携し、情報発信を行う。
イ、総合調整機能
JAグループの総合力の発揮に資するため、総合事業を営むJAを起点に地域・事業の枠を超えた総合調整を行う。
ウ、経営相談機能
JAの創意工夫ある取り組みを支援するため、協同組合の特質をふまえた、JAの組織・事業・経営に関する課題に対応していく。
◆一社全中のあるべき姿
このような総合審議会答申をふまえ、全中自身は一般社団法人への組織変更に向け、平成29年2月に「一社全中のあるべき姿」を取りまとめ、3月の全中総会に報告した(詳細は全中総会資料等を参照)。
本来、全中のあり方は、JA、連合会、都道府県中央会のあり方に関する検討状況を踏まえて形作られるものであるが、会員との相互のキャッチボールを重ねていくため、まずは全中から一社全中の大枠を提示したものである。29年度以降、都道府県中央会の検討状況をふまえつつ、一社全中の具体的な事項を取りまとめていきたい。
◆都道府県中の検討状況
都道府県中央会については、多くの県域において、県内JA・連合会等から構成される検討機関を設置するなどで、組織変更に向けた検討が行われている。
検討にあたっては、県内JAの組織再編の状況、JA全国監査機構から外出しする監査法人の状況が大きく影響してくる。新たな監査法人については、平成31年からの本格稼動に向け平成29年7月に設立する。
今後、監査報酬や必要な要員体制等の具体的な事項が提示される予定である。
全中としても、都道府県段階における中央会の組織変更を支援するべく、例えばJAグループの健全性を維持するための中央会の役割、会計監査人監査への移行に伴う諸課題、農協監査士制度など、全国的な共通課題については全中より順次整理していく。
(写真上から)第9回セミナーのようす、JA全中 中村 義則 氏
※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。
新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめています。ぜひご覧下さい。
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