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共済の安定は〝農業支援〟「総合サービス」のJAへ【荒 美代子・JAふくしま未来常務理事】2017年9月16日

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 JAの共済事業は単に利用するだけでなく、契約によって協同組合運動に参加することでもあります。つまり協同組合組織であるJAのめざす農業の振興と住みやすい地域社会づくりに、仲間として加わることを意味し、このことをしっかり認識しないと、一般の保険と同じになってしまいます。こうした共済の意義を、役職員が共通認識として持って事業展開することで、地域におけるJAの存在意義を高める必要があります。2つのJAの報告から、この問題を考えてみます。

◆大型化で新規事業

荒 美代子・JAふくしま未来常務理事 平成23年3月11日、東日本大震災と13日の福島原発事故の発生で県浜通り地区のJA施設は津波による甚大な被害を受け、多くのJA職員も行方不明や県外等への避難を余儀なくされました。さらに、原発事故の影響で農地が汚染され、営農の継続が極めて困難となり、その後の風評被害も予想されたことから、福島県のJA経営は絶望的だとの見通しもささやかれました。
 この未曾有の危機を乗り越えるため、県内17JAの合併構想が協議され、県北地区とそうま地区で25年、合併推進協議会が設立され、3年間の度重なる協議と調整を経て、28年3月に新ふくしま、伊達みらい、みちのく安達、そうまの4JAが対等合併しJAふくしま未来が誕生しました。
 組合員9万4760人で、うち正組合員が4万6877人・128団体、准組合員4万7153人、職員1929人(うち正職員1450人)、貯金残高7086億円、長期共済保有高2兆7366億円、販売品販売高277億円、購買品供給高166億円の大型JAになりました。
 新生JA最大の目標は《農業所得10%アップ 「みらいろ!テン」》運動です。そのため「販売単価2%アップ×農業生産拡大―生産コスト5%ダウン+支援事業」を展開しています。

 

◆課題山積の新JA

 具体的な支援策は、(1)農業生産の拡大・農業所得の拡大・地域営農の活性化を目指して新規就農者や生産拡大を目指す担い手の方への助成事業として4億円の予算を確保、(2)「担い手育成給付金」(農業経営の規模拡大、新規営農開始、研修等にかかる資金を対象に、上限50万円の機械購入費・施設整備費等申請費の50%以内)の導入などがあります
 合併時に旧JAの内部留保持ち込みを申し合わせ、平均を大きく超過する金額については、旧JAごとに農業支援事業の財源として紐付けをしました。ただ、それらの積立金は数年で枯渇することになるので、新生JAとして、内部留保が可能な経営管理体制の整備が急務となります。
 信用事業はマイナス金利政策の影響で、前年並みの収支確保は極めて困難であり、営農・経済事業についての性急な収支改善改革は利用者からの批判を招くことが予想され、また、事業管理費の削減は、多くの合併JAが直面している通り、旧JAの給与格差の是正をはじめ、労務管理等の課題が山積しているのが現状です。
 従って、「みらいろテン」運動の財源確保には、旧JAごとの共済事業取り組みを高位平準化し、高位安定的な収益の確保が重要になります。一方、共済事業による、直接的な農家所得アップへの貢献は困難なので、JA収益確保からの間接的な農業支援事業への貢献を目指したいと考えています。
 新生JAの課題は次のようなものがあります。(1)原発事故からの完全復興対策、風評被害対策、(2)対等合併により重複化した執行体制の効率化とガバナンス強化、(3)広域合併による様々な風土・文化・役職員の考え方を意識統一の方向へ、(4)場所別収支分析による経営資源の効率化、(5)合併協議会で統一できなかった事項の調整(支店体制・職員の給与・労務管理・各種手数料等・経済事務など)です。
 また、共済事業の課題は、(1)地区本部(旧JA)ごとの目標設定に関する考え方の統一、(2)共済事業管理者・指導者のレベルアップ、(3)自動車共済損害調査業務の分担に関する変更に伴う対策、(4)支店体制の相違に伴う共済事務の不統一事項の整備と事務指導の徹底、(5)自動車共済代理店業務の高位平準化(6)LA等の資質向上による「共済推進要領」重点取組事項の実践、(7)共済事業だけでなく、総合事業サービスとして取り組める職員の育成にあると考えます。

 

◆代理店はJA離れ

 農家からのJAへの最大の期待は、(1)農業振興支援事業等による農業生産拡大支援、(2)農業資材等のコストダウン、(3)営農指導員の質の向上にあり、人件費を含め、全て財源となる収益の確保が必要です。信用事業を含め、JAの収支改善は困難が伴います。管理費削減も働き方改革との調整もあり、時間がかかると予想されます。
 共済事業によるJA収支の財源確保は間接的な農業支援です。現在、組合員宅へ最も足を運んでいるJA職員はLAであるので、LAによる「総合サービス」展開の充実こそが利用者の満足につながると考えられます。
 JA共済事業の代理店化は、共済連からの収益低下につながり、間接的に実施している営農経済部門への支援事業の継続が困難になると予想されます。過去には信用事業で、支店統廃合による経営の効率化を進めましたが、一時的には収支が改善しても、組合員宅に足を運ばない職員が多くなり、利用者からも「遠くなったJA」として、信用事業が伸び悩んだJAが散見されたと感じています。
 共済事業の改革についても、〝小手先〟の変更ではなく、直接会わなければ購入していただけない商品を提案する業務として、共済事業の商品だけでなく、その必要性やライフサイクルの考え方を提案・相談できる〝ひと〟の育成と、その指導者へ向けた指導こそが最も重要と考えます。

※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。

 

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

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