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【覚醒】混迷する代理店議論2017年9月18日

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K・F

 JA事業のなかで、特に信用事業と共済事業のJA代理店化が議論の焦点になっています。このうち信用事業は農水省が選択肢として方向を示し、これを受けてJAで本格的な組織討議が進められています。

seri1709180201.jpg 今のところJAでは、信用事業の代理店化は自主選択となっており、この方向を選択しない限り問題はないという認識が一般的のようです。しかし、それは大きな見当違いであることが、いずれはっきりしてくると思います。信用事業の代理店化は最初、JAを営農経済事業に専念させるための事務負担の軽減・リスク回避のために行うというのが理由とされました。
今この議論は、マイナス金利のもと金融機関の経営は厳しくなるなかでJAも例外ではなく、破たん防止に備え代理店にすべきだというというように、理由が微妙に変わってきています。挙句の議論は、JAが農林中金に信用事業を譲渡して代理店になったとしても、それは他人に譲渡するのではなく、JAが引き続き総合事業を維持できるから問題はないのではないかということになってきています。
 こうした議論の経過を見ていると、もともと、今回の政府によるJA改革の大きな目的は信用事業のJAからの分離であり、その理由などはどうでも良いということがよく分かります。農業振興ができない原因をJAにすべて押し付け、それを理由にするのはけしからんという議論がありますが、政府はそのようなことは先刻ご承知であり、信用事業の分離ができれば良いのです。
 ところで最後の議論とされている、農林中金に信用事業を譲渡し、その代理店になったとしても事業を行うことが可能で、信用事業の兼営・総合事業は維持できるということについてどのように考えればいいのでしょうか。確かに協同組合組織としてメンバーシップの運営が保証される限り、事業の進め方は多様で、集中・集権的な農林中金を本店とし、JAをその代理店とするやり方は一つの方法と考えられるかも知れません。
 しかし、ここで考えなければならないことは、協同組合はその形式が大事なのではなく内容だということです。JAが協同組合として残っても、その内容が協同組合らしいJA主体の分権的な組織運営が行われなければ、協同組合の死滅を意味するといっていいのではないでしょうか。
 重要なことは、協同組合理念などと言う抽象的なものではなく、マネジメントとしての協同組合運営の優位性の確認です。リーマンショックで農林中金が1兆9000億円の資本不足に陥った際、後配出資によって単位JAがその危機を救ったのは記憶に新しく、これは系統信用事業が分権的な協同組合運営を行ってきた賜物でした。そのことは過去のこととして、あっさり忘れ去られようとしています。
 そもそも経営学的に見て、リスクは集中管理した方がいいのか、分散管理がいいのかは、結論が出ているわけではありません。おそらくそれは、集中か分散かの択一論ではなく、さじ加減が重要ということになるでしょう。JAは協同組合として、グループでJA主体の分権的な運営を行ってきたから今日の姿があるのであり、信用事業の代理店化によって形式的に兼営が維持できたとしても、それは事実上の信用事業分離を意味し、信用事業のみならずJA経営全体が壊滅的な打撃を受けることになるでしょう。
 このことに関連し、JA共済事業はすでに代理店化されているのではないかという議論があります。かつて、JA共済は、JAが共済契約の元受けを行い、県連・全国連に再共済するというのが事業方式の基本でした。しかし2005年施行の改正農協法で共済契約はJA・共済連の共同元受けとなり、共済責任の管理は共済連に一元化されています。JAには共済事業のバランスシートはすでになく、共済連が一元管理しておりJAは共済連から還元される付加収入によって損益管理を行っています。
 信用事業は、代理店化で農林中金によるJAのバランスシートの一元管理をめざしていますが、共済事業はすでにそれを実現しています。それに止まらず、事業推進の目標・実績管理までもが共済連で行う仕組みになっています。これではJA共済事業は協同組合という組織の体裁はとっていても、実質的に共済連の代理店になっているといっても過言ではないような運営実態にあります。
われわれは、何をもって信用事業の代理店化に異を唱えるのでしょうか。共済事業にとって代理店的運営は善であり、信用事業については悪であるというのは、両者の事業の性格の違いによるものだと言い張るのは、余りにも便宜的であり、JAの良いとこ取り運営の面目躍如といったことになりかねません。
 共済事業こそが、助け合いの協同組合精神を具現した事業であるとか、協同組合がユネスコの世界無形遺産に登録されたことは喜ばしいなどと言う協同組合や共済事業の礼賛は良いとしても、協同組合が困った人や地域のニーズを協同の力で解決していくという組織存在の基本を忘れては本末転倒です。
 JA共済連には、面倒なことは共済連にお任せといったJAからの要望に安易に迎合することなく、JA主体の事業運営を保障する事業方式をいかに提案・構築していくかが求められています。

(写真)報告を聞くセミナー参加者

※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。

 

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