JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
JA出資型農業法人の現状と意義 【馬場利彦・全国農業協同組合中央会参事】2017年9月29日
1、担い手経営をめぐる情勢○平成29年の基幹的農業従事者数は150万人、また農業就業人口は181万人となり、農業者の減少および世代交代が加速化。
○担い手の利用集積面積は235万haと全耕地面積450万haの52%、うち集落営農の集積は49万haで伸び悩み。政府は今後、平成35年 までに担い手の集積率を8割、法人経営を5万に拡大する目標。
○一般法人の農業参入は一貫して増加、借入面積は7000ha程度。
○農地面積は、宅地等への転用や荒廃農地の増加等により、面積が最大であった昭和36年と比べて約160万ha減少。近年は耕作放棄地および荒廃農地が年々増加していることが農地面積減少の要因。
○荒廃農地が発生する最大の要因は、高齢化・労働力不足等による 担い手不足。
(写真)馬場利彦・全国農業協同組合中央会参事
2、第27回JA全国大会決議の概要(JAグループ自己改革の全体像)
○第27回JA全国大会では、施策領域について、自己改革の基本目標である「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」につながる分野に絞り込み、「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」につながる「最重点分野」、全てのJAで取り組むこととした。
○そのなかで「新たな担い手の育成や担い手のレベルアップ対策」を最重点課題の一つとして取り組むこととし、特に、担い手不在地域での農地管理や新規就農者の育成等をすすめるため、JAによる農業経営(JA出資主導型農業法人・農業経営)に取り組むこととした。
◎「JAによる農業経営を通じた担い手と地域農業の支援強化」(第27回JA全国大会決議抜粋)
▽JAは、地域における担い手のニーズをふまえ、大規模化する担い手経営体の農業経営を
サポートするため、JA出資型農業法人等の農業経営において、作業受託や援農派遣等の労働力確保機能の発揮に向けた取り組みをすすめます。
▽JAは、担い手が不足する地域においては、地域農業の生産を維持・発展させるため、JA出資型農業法人等の農業経営において、地域の補完的担い手としての役割を発揮するとともに、新規就農者等を受け入れ、研修を実施し、経営・管理する農地を新規就農者等に引
き継ぐことで、新たな担い手を創出する等の取り組みを積極的にすすめます。
▽中央会は、JA出資型農業法人の経営体質の強化を目的とした経営モニタリングや管理者研修に取り組むとともに、組織化をはかります。
3、JAよる農業経営をめぐる情勢
(1)JA出資型農業法人の設立総数の増加、経営面積の拡大
○設立総数の増加(設立総数646法人、うち主導型法人(JA出資割合50%以上)213法人、非主導型法人(JA出資割合50%未満)428法人)
○経営面積の拡大(30ha以上77.3%、うち100ha以上12.8%)
(2)事業分野の多様化、地域農業に果たす機能・役割の拡大
○事業分野は田から畑作→露地野菜→樹園地→施設園芸→酪農・畜産へ多様化・拡大
○当初の農作業受託から農業経営へ、家族経営の代替が本格進行。
○新規就農研修事業の拡大(単なる担い手の枠を超え、地域農業を維持・蘇生する役割へ→本来の担い手機能による「最後の担い手」から、「担い手育成」「耕作放棄地再生」を通じて「最後の守り手」に。そして、大規模経営のモデルとしての「地域農業の攻め手」に。
(3)継続的な経営発展に向けたJA等による取り組みが重要
○3割強が赤字:赤字54法人のうち20法人は直近3か年以内に設立。
○法人の抱える課題:「ほ場分散や条件不利地の引き受け」48.8%、「役員(職員)の高齢化による後継者不足」41.0%等。
○赤字化の要因:設立当初に経営面積と整備水準(機械・施設等)が非対応。水田の場合、概 ね30~40ha以上の水準(設立後4~5年)でほとんどが黒字化。
○黒字化の要因:JAからの支援(「職員の出向」「農機具や施設の助成(リースなど)」「JA事業の委託(CE、RC、育苗事業等)」等)や、水稲作業の再委託、農地管理費の徴収、役職員の報酬・賃金水準等など。
(4)耕作放棄地復旧、新規就農者研修の実績も拡大
○耕作放棄地の復旧実績:92法人で、延べ409.1ha。
○新規就農者研修の実績:受入64法人・628名、うち就農させた法人37法人・324名。
4、JAよる農業経営の取り組み強化にむけて(県域・全国域での取り組み)
(1)JAによる農業経営にかかる定期調査の実施
県域・全国域でのJAによる農業経営の実態把握と課題研究を行うため、実態調査を毎年度実施することとし、3年に1度、詳細な調査研究を行う。
(2)経営モニタリング等の経営支援体制の構築
JA出資型農業法人等の継続的発展に向けたリスク管理の観点から、県域・全国域の連携による経営モニタリングを実施するとともに、管理者研修等の経営支援の実施や経営悪化法人等への指導体制を構築する。
(3)JA出資型農業法人等の組織化
JA出資型農業法人やJA直営型農業経営部門の相互交流・課題共有をはかるため、県域・全国段階にネットワーク(仮称)を設置する。
(4)全国交流会の実施
「JA出資型農業法人全国交流会」を年1回(12月)開催し、JA間・法人間での情報提供・相互研鑽と、新たに農業経営に取り組もうとするJAへの情報提供・支援を行う。
※『JA出資型農業法人の設立・運営、JA本体による農業経営の手引き(改訂第2版)』を近日中に発行する。
※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。
新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめています。ぜひご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
春の彼岸の主役は沖縄のキク【花づくりの現場から 宇田明】第55回2025年3月13日
-
輸入小麦 政府売渡価格 4.6%引き下げ 4月から 農水省2025年3月13日
-
地域外から後継経営者 新たな集落営農へ 北陸農政局がシンポ2025年3月13日
-
英語版みえるらべる愛称「ChoiSTAR」に決定 持続可能な農業を後押し 農水省2025年3月13日
-
トマトのコナジラミ類 多発のおそれ 令和6年度病害虫発生予報第10号 農水省2025年3月13日
-
二回あった正月【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第332回2025年3月13日
-
「91(きゅういち)農業」の普及促進 労働力支援に6万8000人 全国労働力支援協議会2025年3月13日
-
JA中古農業機械展示会に約240人が来場 コスト低減の一助に JA全農おおいた2025年3月13日
-
イチゴ新品種「とちあいか」などで"新生栃木"をアピール JA共済マルシェ2025年3月13日
-
「丹後コシヒカリ」をプレゼント 「京都のうまいもん」X(旧Twitter)のフォロー&リポストで JA全農京都2025年3月13日
-
バイオ炭の農地施用による炭素貯留量 簡便に算出する手法開発 農研機構2025年3月13日
-
令和6年能登半島地震・能登豪雨災害へ募金2億1182万3596円を活用 コープデリ2025年3月13日
-
環境配慮と十分な結束保持力 誘引結束機テープナー用「生分解テープ」新発売 マックス2025年3月13日
-
愛媛宇和島みかんを限定ケーキで「四国 宇和島 みかんフェア」開催 カフェコムサ2025年3月13日
-
ドジャースとパートナーシップ契約締結「八海山」が公式日本酒に Hakkaisan2025年3月13日
-
「健康経営優良法人2025 ホワイト500」に2年連続で認定 クボタ2025年3月13日
-
役員人事 マルトモ(4月1日付)2025年3月13日
-
令和7年度宮崎県職員採用試験「みやざき新時代」担い手を募集2025年3月13日
-
保冷グッズ「Natural Season 真空パネルクーラーボックス」発売 コメリ2025年3月13日
-
百戦錬磨が運営する旅行予約サイト「STAY JAPAN」を事業譲受 雨風太陽2025年3月13日