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代理店化防ぎ農業振興【JAはだの改革推進室長 三瓶壮文 氏】2017年12月1日

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・ビジョン確立で徹底討論を
・【信用事業代理店化】JAでの議論一層の深化を

 今次JA改革の本丸であるJA信用事業の代理店化(信用事業分離)が佳境に入っています。農林中金でも平成31年5月を目途に組織討議を行い、この問題に対する態度を明らかにしたいとしています。代理店化はJAの自主選択との触れ込みで、JA内には安ど感も漂いますが、果たしてこの問題がそれほど簡単なものか、検討を深めていく必要があります。今回は、JAが信用事業の代理店化をどのようにとらえ、対処しようとしているか、神奈川県のJAはだのの取り組みを報告してもらいます。

三瓶壮文・JAはだの改革推進室長 今日の厳しい状況の中でJAが生き残るための最大の争点は、現在の総合JAの仕組みが農業振興にとって適切であるかどうかだと考えます。総合JAは農業振興にとって必要不可欠であり、万が一この仕組みが壊されれば、地域における助け合いの協同組合組織は消滅し、農業振興どころか、ますます疲弊することになると考えています。総合事業を守るために自己改革において課題ごとに方向性を明確にしたうえで、JA役職員はもとより、組合員と「徹底した話し合い」を実施・継続する必要があります。
 また、自らのJAの経営環境を把握し、収支状況など長期におよぶ分析を早急に行う必要があると思います。さらに、公認会計士監査移行に伴う内部統制整備やバーゼル規制、フィンテックなどの影響を重視する必要があります。
 信用事業分離は都市部のJAにとって最大の経営課題です。JA経営において信用事業は営農経済事業、指導事業などの赤字を補填しているとともに、経営体にとって資金繰り機能を果たしています。また何よりも、組合員にとって必要な営農資金を提供する重要な機能を持っています。しかし、現在の信用事業はマイナス金利の影響でJAの経営は厳しくなる一方です(昨年度のJAはだの部門別損益では販売・購買で1億5000万円の赤字)。
 さらに、すでにメガバンク等では対策を出していますが、スマートフォンの普及などによるフィンテックの進展で、今後、店舗統合や信用窓口業務の役割が縮小するのでその対応を求められると思います。しかし、協同組合として組合員のために細かな対応は今後も続けなければなりません。
 これらの課題に対し、「信用事業分離のための事業譲渡はさせない」の気持ちで、それぞれのJAが自らの組織にあったビジョンを持ち実現にむけ確実に実践することが必要です。信用事業を営むJAを半減するなどの非現実的な提言が実施されてからでは遅いのです。平素から体制整備など早急に対策を講じるとともに、組合員の結集や世論へのPRが必要と考えます。同時に票集めの〝お人好し組織〟ではなく、今こそ政治の力を最大限活用しなければならないと思います。
 また、代理店化を選択しなくても内部統制が不十分で公認会計士監査を受けられず分離を勧告されないようにすること、そして早急に准組合員に対する事業利用制限対策を打ち出し、事業利用制限か事業譲渡か、の二者択一の状況をつくりださないようにすることが重要だと考えます。
 政府は、信用事業を切り離せばJAが営農経済事業に注力し、農業振興がはかられると言っています。一方、JAは地域によっては温度差があるものの、信用事業の兼営によって営農経済事業に注力することが可能となり、農業振興できると主張しています。政府とJAの考えが乖離しています。このことが最大の争点です。
 JAの経営実態を考えると、信用事業譲渡はJA解体を目的にした政策提案であるのではと疑わざるを得ません。信用事業の代理店化は農業振興に繋がらず、信用事業分離を進めるものでしかないこと、さらに現実的に今の代理店提案ではJAの信用事業はやっていけないこと、代理店化はあくまでもJAの自主選択なので、JAはだのは事業譲渡に反対の立場をとり、代理店化を選択しないことを組合員との「徹底した話し合い」で伝えていきます。
 今後は「信用事業譲渡阻止運動」として農業振興の抜本策を打ち出すとともに、農業振興は一人の農業者・農家だけの努力では難しく、正・准組合員、および農業を支える方の協力を得て可能なことを国民世論に訴えて行くことが必要と考えます。

2016年度実績に基づく代理店手数料の試算

 JA内部における事業譲渡の課題として、公認会計士監査移行に伴う課題認識と対策が重要なカギを握っていると考えます。平成31年10月から公認会計士監査になります。JAにとって何よりも急がなければならないのは内部統制の確立です。
 仮に不十分だと監査費用が高騰し、経営に大きな負担となることから信用事業譲渡・代理店化をせざるを得ないことも想定されます。また、監査証明をもらえない〝監査難民〟にならないよう早急に検証しなければなりません。
 もう一つの改正農協法に伴う大きな課題は、准組合員の利用制限に対する組合員対策の取り組みをどうするかです。改正農協法は附則第51条3項で、准組合員の事業利用制限は、政府が平成33年3月まで正組合員、および准組合員の事業利用状況、並びに改革の実施状況について調査を行い、4月以降その結果に基づき制限のあり方を検討するとしています。すでに、今年の7月7日に農水省は、2年間行ったJAおよび認定農業者への改革実施状況についてのアンケート結果を公表しています。
 残念ながら認定農業者とJAの回答結果は大きく乖離していました。政府は、准組合員がJAを必要としているかではなく、農業者・正組合員がJAを必要としているかが重要であり、正組合員が納得する事業が展開されなければ准組合員利用制限をかけると言っています。
 この対策として、正組合員に、准組合員は必要と認識してもらうために、農業振興に准組合員が関わる仕組みを拡大することが重要だと思います。例えば、地域の農業資源をある種のコモンズとして捉え、准組合員が農に関わる仕組みを拡大してはどうでしょうか。
 具体的には人づくりのための農業塾、体験型農園や市民農園などがあげられます。また、准組合員を巻き込んだ地産地消運動の一層の拡大など、正組合員にとって准組合員は農業の理解者であり協力者であること、協同組合の仲間であるという運動を継続して行うことが重要だと思います。
 今回の衆議院選挙では安倍内閣が大きく支持されました。このため、規制改革推進会議は、全農改革とともに信用事業の譲渡・代理店化、共済事業が抱えるリスクなど、一層の改革を迫ってくると予想されます。
 今次の農協改革は、農業振興の停滞・担い手不足・農地の荒廃化などの責任はすべてJAにあるといった発想のもとで行われました。JAは貯金・共済事業ばかりに注力し、農業振興をおろそかにしているという批判もありました。「反省すべきは反省する」の覚悟をもって自己改革に取り組み、協同組合としての存在意義をはっきり自己主張しなければなりません。
 残された時間が少ない中で、今やるべきことをしっかりと見極め、全てのJAは、組合員が求める改革を実現することが使命です。JAの危機を救うのは組合員とともに全国のJA・JAグループが団結し、大きな協同組合運動を起こすことが必要だと考えます。

信用事業分離の事業譲渡はさせない!

▼まず、JA自らがビジョンを考える。

▼信用事業を営むJAを半減する等の提言が実施されてからでは遅い。

▼平素から対策を進め、そのうえで政治の力を結集して行く。

▼公認会計士監査に耐えられる体制整備を完成し、レベル格付けなどで事業譲渡の勧告を受けないようにする。

▼准組合員に対する事業利用制限対応策を打ち出し、事業利用 制限か、事業譲渡かの二者択一の状況をつくりださない

 

JAはだの経営概況

主な事業内容(2017年2月28日現在)
・販売取扱高 25億円
・購買取扱高 37億円
・貯金残高 2,202億円
・貸出金残高404億円
・長期共済新契約高314億円
・長期共済保有高 4,531億円
・当期剰余金 3億8,605万円
・自己資本比率 17.85%

 

※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。

 

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。


(関連記事)
総合性発揮が基本 信用分離の選択しない【JA蒲郡市常務理事 壁谷 誠 氏】(17.12.01)

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