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内部管理体制構築を 新たな世代取り込みも【山田秀顕・JA全中常務理事】2018年3月27日

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 ゼロ金利政策が続き、JAの信用事業の先行きは予断を許さない状況にあります。各JAは、人件費を中心に事業管理費の削減で、何とか収支バランスを維持しています。だが30年度は農林中金からの奨励金が削減される可能性が高く、より厳しい対応を求められます。JAグループはセーフティネットの一層の整備と同時に、体力のあるうちに、しっかりした管理体制を確立する必要があります。この観点から、JA信用事業の課題について、JA全中の山田秀顕常務理事が報告します。

 JAの信用事業は、農家組合員向けに全国統一の金融サービス(貯金、各種ローン、為替等)を提供し、農業関連の貸し出しを行い、地域農業を下支えしてきました。また、地域の人々の生活インフラとしても機能してきました。一方で、長期金利の低下等の影響から収益環境はますます厳しくなっています。さらに、人口減少・高齢化等による地域農業の衰退、金融規制の強化等、様々な課題を抱えています。今回はこうしたJA信用事業の現状と課題について説明します。

 

◆スリム化で収益安定

 まずは、JA全体の収支推移について見ていきます。JAの平成27年度の事業総利益は10年前と比較すると1402億円減少していますが、信用事業は410億円増加しています。JAの事業管理費は、人件費および施設費の削減により10年間(平成17年⇒平成27年)で1794億円減少しました。事業別では経済事業、次いで信用事業の削減幅が大きくなっています。
 JAの職員数および拠点数の推移を見てみると、職員数は10年間(同上)で2万8485名減少しており、経済事業、次いで信用事業の職員が大きく減っています。また、信用事業を行う支所等も10年間(同上)で3割程度減少しています。
 JAの経常利益は、直近5年間、毎年2500億円程度と安定的に推移しています。また、10年前の平成17年と比較すると、経常利益は615億円伸びており、事業別には信用事業が最も増加している状況です。また、平成27年の経常利益を事業別の収支に分解すると、営農・経済事業の赤字を信用・共済事業で補う収益構造となっています。

 

◆貸出残高減少続く

 次に、信用事業にかかる動向について見ていきます。有価証券および貸出金の利回りについては、平成11年2月から開始された日銀のゼロ金利政策にあわせて低下しました。日銀のゼロ金利政策末期(平成15年~17年)には、下落幅も緩やかになりました。その間の平残は利回りの低下に合わせて減少を続けましたが、有価証券は平成14年、貸出金は17年に下げ止まりました。
 平成18年7月にゼロ金利政策が終了すると、利回りは横ばい、貸出金の利回りはわずかに上昇する動きもありましたが、20年9月にリーマンショックが発生して以降は、有価証券・貸出金の利回りは再び低下しています。その間の平残について、ゼロ金利政策末期からリーマンショック前後にかけて、年度ごとにブレはあるものの、基本的に増加を続けて、平成22年前後にピークを迎えました。ここ5年間(平成23年→27年)は利回り低下に合わせて減少が続いている状況です。
 直近の金利動向について、平成28年2月に日銀のマイナス金利政策が始まり、国債の利回りは急激に低下しました。また日銀では、消費者物価指数が2%を超えるまで、金融緩和を続けることをコミットし、長期金利を「ゼロ%程度」に誘導するため、必要に応じて長期国債の買入れを行う方針を示しています。また、住宅ローンについては顧客のメインバンク化を図る入口商品として、金融機関の競争が特に激しく、金利水準は低利・横ばいの状況が続いています。
 続いて今後の信用事業を取り巻く環境について説明します。JAの組織基盤については、すでに日本の人口は減少に転じており、今後、JAの地盤でもある農村部の人口は現在よりも小規模になるものとみられます。また、JAの組合員の年齢構成は、日本全体の人口ピラミッドと比較して、第2次ベビーブーム世代(41歳~44歳)から下の世代が少なく、JAは新たな世代の取り込みに課題があると言えます。
 農業生産構造については、農業生産は実質的に減少している状況です。また生産規模では大規模化が進んでいますが、経営体が大きいほど経済事業におけるJAの利用率が低い傾向にあります。

 

◆3つの目標実現へ

 規制動向については、金融危機のとき金融機関の経営が悪化した教訓から、自己資本等財務健全化に向けた金融機関の規制強化が進んでいます。規制強化に合わせてガバナンス等、内部管理体制の構築が必要となるほか、平成31年度から開始される公認会計士監査への対応が必要となります。
 信用事業が置かれている状況および昨今の金融情勢についてまとめると、政府による金融緩和政策が継続される中で、JAでは他の金融機関同様に有価証券・貸出とも利回り低下に直面しています。さらに人口減少の中で、他の金融機関との競争も激化しており、貸出残高を積み上げることも難しく、収益を維持するのは容易ではありません。今後は金融規制強化もにらみ、さらに内部体制を強化する必要もあります。
 JAでは、「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合」として、「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」の3つを基本目標とし、その実現に向け、総合事業を通じた自己改革を実践していくことが基本となります。その一方で、JAの自己改革を達成するうえで、各JAは次期中期計画等の検討に際しては信用事業運営体制のあり方を検討し、自己改革を支える経営基盤の確保のため、必要な対策を計画に盛り込む必要があります。

 

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

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