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JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー

取引方法は開設者に 当面は現状追認、将来に備えを【細川允史・卸売市場政策研究所代表】2018年4月12日

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・取引の“柔軟化”をプラスに
・卸売市場新制度の要点と生産・出荷者の対応

 政府は、国民に安定した価格で安定した量の食料を供給するための拠点である卸売市場の法律を変えようとしています。さまざまな規制を撤廃し自由な取引で卸売市場を活性化しようというものですが、これに対して生産・出荷側はどう対応すべきか。卸売市場政策研究所の細川允史代表に改正卸売市場法(案)の要点と影響を報告してもらい、前回(3月15日)開催した新世紀JA研究会の課題別セミナーの意見交換の要旨を掲載します。

 わが国の卸売市場が新制度へ移行するのは国会で予定通り審議が進むと平成32年6月ごろと想定されています。新制度の特徴について箇条書きして概要を示します。
(写真)細川允史・卸売市場政策研究所代表細川允史・卸売市場政策研究所代表

 

1.受託拒否禁止は継続

 新制度の最大の特徴は、中央卸売市場の国による認可制、地方卸売市場の都道府県による許可制から、両方とも認定制に移行することにあります。認定制は、(1)共通ルールの遵守、(2)公正かつ効率的な市場運営体制の確立の二つです。
 共通ルールの特徴は、取引ルールとして法的に規定するのは、差別的取り扱いの禁止と受託拒否の禁止のみです。認定制は、現行制度の大幅な規制緩和を図った内容となっています。生産・出荷者にとっては、受託拒否の禁止が法律に明記されたことはよかったと言えます。

 

2.「第三者販売」消滅

 差別的取扱いの禁止と受託拒否の禁止以外の、第三者販売、商物分離、直荷引その他
の取引ルールは、現行卸売市場法では細かく規定されていますが、新制度ではすべて削除されて、各卸売市場の設定ということになっており、卸売市場の開設者に任せることとしています。
 開設者が設定するに当たっては、市場関係者の意見を聴くことが新制度で法的に規定されています。そのため円満に移行するには、当面は卸売業者、仲卸業者それぞれの行為について現状を認め合うということになり、大きな変化はないと推定しています。しかし、年月が経つと、いろいろな形に変化することは避けられないでしょう。
 また、詳細は省略しますが、第三者販売という取引方式は、新制度では法的裏付けがなくなり、事実上、用語として消滅することになります。その点では、卸売業者の販売先は特に大口需要者に拡大しやすくなり、また仲卸業者の直荷引もやりやすくなるでしょう。これは、小ロット品の取り扱いは仲卸業者の方が向いているので、これも拡大する可能性があります。
 生産・出荷者にとっては、卸売市場への出荷品の販売が拡大しやすくなるのはいいことで、このような取引の柔軟化はプラスになります。卸売業者に出荷するのがいいのか、仲卸業者と取引するのがいいのか、これからよく研究していただきたい。

 

3.原則自由の取扱品目

 卸売市場の取扱い品目が、食品と花きであれば制限がなくなります(医薬品目的など特殊なものについては制約が課せられる)。従って、例えば現行制度ではダメな米も扱えることになります。これについて生産・出荷者がどう利用できるかというと、水産と青果しかない大型卸売市場に米などを持っていって販売を委託することが可能になるということです。たくさんの人が集まるので売れる可能性があります。

 

4.市場の機能が多様化

 現行制度では、卸売市場の敷地に卸売市場機能以外の施設をつくることはできず、小売行為もできません。よく中央卸売市場の入り口に、「一般消費者は入れません」などの大きな看板があるのはそのためです。しかし新制度では、開設者が卸売市場の認定を国や都道府県に申請するときに必要な書類は、卸売市場全体の施設ではなく、卸売市場の施設のみでよいので、それ以外の機能のための施設があっても記入する必要はありません。
 つまり申請外なので、国や都道府県は預かり知らないということになり、卸売市場機能さえあれば、それ以外の敷地に何をつくってもよいことになります。これを利用して、申請外の地域に直売所をつくることも可能です。一般市民や消費者に来てもらうために、小売施設、観光機能、場合によっては道の駅などをつくることもOKで、国はむしろ、多様化による収入増などの活性化を促すような談話を出しています

 
5.公設・民設が同列化

 平成30年度から、施設整備予算について公設と民設を同列化するというのも大きな特徴で、現行の公設卸売市場優先からの大きな転換となります。民設の中央卸売市場も補助金を受けることが可能になります。これには、自治体財政の将来的な逼迫化のなかで福祉関係などの支出が増えることを踏まえて、公設卸売市場の民営化を推進していこうという国のねらいが透けて見えます。生産・出荷者にとっては、出荷先卸売市場が公設か民設かということはあまり関係ないと考えられますが、国家財政上は大きな課題であり、この解決を図っていこうとしています。

 

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

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