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【覚醒】准組を必要とする事業を 農業参画促し農地を守る2018年7月1日

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JAはだの専務理事・宮永均

准組合員のあり方

 

 農業協同組合法の一部を改正する等の法律(平成27年法律第63号)附則(自主的な取組の促進及検討)第五十一条三項に、「政府は准組合員の組合の事業の利用に関する規制の在り方について、施行日から5年を経過する日までの間、正組合員及び准組合員の組合の事業の利用の状況並びに改革の実施状況についての調査を行い、検討を加えて結論を得るものとする」とした改正法が、2016年4月1日に施行されて2年が経過し、残すところ3年となった。
 最近の動きとして、農水省は、2018年度の購買・信用・共済事業の利用状況を正・准組合員別に把握をするための調査を行い、2019年5月頃までに結果をまとめ准組合員事業利用規制の導入を検討する方針を明らかにしている。
 6月7日の全中が主催した政策確立全国大会で、自民党の二階幹事長は、准組合員の事業利用規制について、「押しつけるつもりは全くない。組合員が判断すればよい」と発言している。つまり組合員の判断とは、正組合員が准組合員を必要としているかが焦点になると考える。
 なぜなら、農業協同組合は「農業者の農業者による、農業者のための組織である」を基本に、地域農業の牽引役としての社会的役割を担う極めて重要な組織、だと位置付けているためだ。農協の自己改革について、農水省が2017年度に実施した認定農業者を中心に実施した農家アンケートによると、「農協改革の徹底した話し合いに取り組んでいる」とする評価はおおよそ30%にとどまっている。
 この状況を真摯に受け止めるとともに、准組合員理解の話し合いを加速させ、農協の運営上、准組合員は地域農業の振興と地域社会の発展のための一員として必要であるという、正組合員の理解を急ぐ必要がある。
 協同組合は自主自立の組織であることはいうまでもないが、そもそも准組合員制度は国策でつくられた制度である。1900年制定の日本で最初の産業組合法は、ドイツのフリードリッヒ・ヴィルヘルム・ライファイゼンの組合制度がモデルだが、わが国の協同組合には、事業利用する組合員の職業に制約はなかった。
 1906年の産業組合法の第2次改正で、販売・購買・利用・信用事業の4種兼営の産業組合となった。1943年には農業団体法がつくられ、産業組合や農会、畜産・養蚕組合などを統合し農業会が設立された。そして、1947年制定の農業協同組合法は、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の指導のもとに、職能協同組合としてアメリカのケンタッキー州・ビングハム販売協同組合をモデルにつくられた。
 しかし准組合員の規定は、アメリカ型の農協組織モデルとは別に、日本の農村協同組合の構成員の実態を考慮して農協法制に組み込まれたものである。それは、農業団体法による農業会において別の形で設けられていた規定をそのまま受け継いでおり、農業団体法の規定は、農村の産業組合の多様な組合員を制度上包括承継するために設けられたのである。
 現在の農業協同組合の母体は産業組合で、特定の職能者のみを構成員とする協同組織ではなく、地域内に居住する多様な人々を構成員とする協同組合組織としたものである。1940年度末の産業組合の組合員数は約771万人で、うち農業者が約510万人の他、261万人は勤労者や林業・水産業・商工業者等であった。
 こうした産業組合以来の地域住民や林業者、商工業者などを准組合員として位置付け、協同組合活動を一体的に取り組んできた。1943年に産業組合を統合した農業会は、産業組合の構成員のうち、農民および農地所有者を強制加入の「当然会員」とした。また、産業組合が地区内の非農業者を同等の組合員として包括していたことから任意会員の規定を設け、当然会員と任意会員を会員としてきた。
 この任意会員は、当然会員資格である10㌃以上の耕作に満たない農家や地区内に住居を有する者等とし、産業組合の組合員であった非農家すべてを包括承継した。この任意会員は、産業組合のときと同じ会員と位置付け、権利についても当然会員と同様に共益権が与えられた。
 当然会員と任意会員は区分したが、国策上、すべての農業者を強制加入させ、任意加入者と呼称を変えて実質的に産業組合を引き継ぎ、職業別団体再編成の形態をあてはめて設定した。農業協同組合は、職能団体としての性格を有するものの、農業者以外の者も任意会員として自由に加入できる性格を有していることから、形式的に職能団体のような形式をとり、実質的には地域団体として、また地域協同組合として展開してきた産業組合を継承したものである。
 このような経過のもと、今日の准組合員の利用のあり方の検討は、農業協同組合法第一条「農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与すること」の目的を踏まえるとともに、正組合員数と准組合員数の比較を持って規制の理由としないなど、地域のための重要インフラとして農業協同組合が果たしている役割や関係者の意向を十分踏まえることが重要である。
 また、改正後の農業協同組合法第七条について、「准組合員の事業利用を規制するものではないことなど、その改正趣旨を適切に周知すること」としているが、現在、その実行を確認できるものはない。メンバーシップ制としての総合農協は、准組合員を構成員とした組織運営のあり方をより明らかにできるよう自己改革に取り組み、正組合員が准組合員を必要とする組織・事業の再構築を急がなければならない。
 それには、正組合員の理解を得るため、多くの准組合員が利用する特定農地貸付事業「さわやか農園」や「農業満喫CLUB」の設置、農家と市民・准組合員が協働して農地を活用できる「農業体験農園」、行政・農業委員会と協力・連携した准組合員・非農家出身者も含めた新規就農者等担い手育成機能「市民農業塾」など、JAはだのが取り組んでいるような対策が有効であろう。

※参考文献『農協法の成立過程』(小倉武一・打越顕太郎)

 

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

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