JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
【農水省】監査の合理化を支援 マニュアルの作成へ【日向彰・農水省経営局協同組織課課長】2018年10月17日
・監査法人選任JAの実態に合わせて慎重に
公認会計士移行の留意点
農協改革集中推進期間が来年5月に終わります。これが農協改革の第1ステージです。そして33年4月以降から改正農協法施行に伴う5年後の見直しが始まり、これが第2ステージとなります。そのなかで、農協の理事構成、中央会制度の見直しなどがあります。そのうえで公認会計士監査を導入し、31年度決算から監査が始まります。系統では昨年4月にみのり監査法人をつくりましたが、各農協では監査法人の選定作業に入っているところだと思います。
3月決算の農協では、来年6月の総会で監査法人を決めて、内部統制の整備、公認会計士監査ということになります。最後に准組合員の利用規制ですが、農水省ではいま、正組合員、准組合員、員外3者の事業利用量を調査しています。平成33年3月までの予定で、その結果をもとに、いろいろ検討することになっています。
農協によっては32年3月には、31年度の財務諸表づくり、来年の春ころから期中監査の結果を踏まえ期末監査となり、会計士が財務諸表の適正さをチェック。32年6月に監査意見の表明が行われ、通常総会で決算の承認ということになります。
では、農水省はなにをするかというと、監査コストの引き下げのお手伝いをさせていただきます。公認会計士監査は、農協にとって意義あることだということを理解し、農協経営に活かしてほしい。
(写真)日向彰・農水省経営局協同組織課課長
◆第三者の意見を聞く
公認会計士監査を導入したのは、農協の信用、共済事業の規模が大きいという重い事実があります。信用不安を起こさないため、第三者の意見をしっかりもらって、適正に財務諸表がつくられ、健全に経営されているのだというお墨付きを得ることです。それが組合員、国民の信頼をえることです。信金や労金などにも信用事業を営んでいるところは公認会計士監査が義務つけられています。
というのは、秋田県のおばこ農協の問題があります。農業白書でも紹介され、輸出や直接販売を行うなど立派な農協でした。しかし会計監査の財務諸表の作り方があまりにもいいかげんだったといわざるを得ない。公認会計士に聞くと、経済受託債務と債権に80~100億円もの差があり、おかしいと思わなかったのがおかしいと言っています。
60数億の赤字で、4%割れはなかったものの、11・11%あった自己資本比率が、あっという間に8%割れを起こしました。この重みを、しっかり受け止め、農水省もそうですが、緊張感を持っていただきたい。世の中の目はきびしくなっています。住専問題をくりかえしてはなりません。法律で公認会計士監査が決まっている以上、しっかり公認会計士とキャッチボールして、役職員にとっても監査を受けたというのは、リスク回避など、農協にとっていいことだという認識をもっていただきたい。
◆監査経費削減を支援
では農水省は何を支援できるか。監査コストは上がることも下がることもあります。高くなると、国は補填して欲しいという声も多く聞かれました。しかし、医療法人、社会福祉法人などもみんな自腹でやっています。モラルハザードを起こしてはならないと思います。農協だけ支援すると必ず批判が出ます。いろいろな思いがあるのは承知していますが、ご理解いただきたい。JAグループが批判されるようにはなって欲しくはありません。
その代わり、監査コストを下げるお手伝いをします。本年度、全中やあずさ監査法人と、公認会計士監査のマニュアルづくりに取りかかっています。監査法人選任の一助になれば幸いです。その上で、夏の概算要求で2億円の「監査法人のコストの合理化支援」を要求しています。農協の取り組みに任すといっても、離島の農協や大きな経済事業を展開する農協があります。コストを引き下げるための相談を受けます。その場合、中央会は、これまでの経営指導のノウハウを活かし、内部統制強化にリーダーシップを発揮していただきたい。
また、農水省、金融庁、全中、公認会計士協会の4者で、農協が監査法人を選ぶにあたっての留意点について「JA常勤監事協議会研究レポート」をまとめました。参考にしていただきたい。農協が監査法人を選ぶ場合は、なぜこの法人を選ぶのかを説明できることが重要です。また監査法人を公募するという農協もありますが、その場合も、公募していることが、ちゃんと分かるようにしていただきたい。それが組合員の農協への信頼を高めることになります。
お願いになりますが、全中監査機構のこれまでのノウハウの蓄積を新しい監査法人に引き継ぐためのしっかりした仕組みをつくってほしい。また、来年5月、自己改革集中推進期間が終わった時点で、生産資材価格の引き下げ、農産物の有利販売などの自己改革で、農家の所得向上のためどれだけ頑張ったか、いったん総括しなければなりません。そのため、ひとつでも多く取り組み、組合員の評価を高めて、頑張っているよということを組合員に示してほしい。改革を評価するのは組合員です。
農業者が農協を利用するかどうかが物差しです。その意味でも公認会計士監査は経営改善の一助になるのです。農協はリーダーシップを発揮し、農業者所得増大への高い評価を得て、それを農水省にバックしていただきたい。
(この項は講演をもとに、新世紀JA研究会の責任でまとめました)
(写真)第20回課題別セミナー
※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。
新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめています。ぜひご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
【現地ルポ】福岡・JAみなみ筑後(2)大坪康志組合長に聞く 「農業元気に」モットー2024年7月18日
-
【注意報】野菜・花き類にオオタバコガ 栽培地域全域で多発のおそれ 既に食害被害の作物も 群馬県2024年7月18日
-
【注意報】過去10年間で最多誘殺 水稲の斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 山口県2024年7月18日
-
【注意報】平年の4倍 水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2024年7月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「財務省経済産業局農業課」て何?2024年7月18日
-
1970年代の農村社会の異質化の進展と農業【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第299回2024年7月18日
-
「JAサイネージ」 JA本店や金融店舗の情報発信にも利用拡大 あぐラボ2024年7月18日
-
【人事異動】JA全国共済会 新会長に坂本富雄JA埼玉県中央会会長(7月18日)2024年7月18日
-
スマホでより便利に「石川県Aコープ(ジャコム石川)アプリ」提供開始2024年7月18日
-
TOWING「宙炭」活用 根域制限栽培によるシャインマスカット栽培実証開始 日本農業2024年7月18日
-
バイトアプリで1万人採用 農中提携の農業人材サービス 労働力確保に寄与2024年7月18日
-
全国7000名以上の生産者の声を反映 生産コスト低減へ JAグループ宮城 共同購入コンバイン出荷式 JA全農2024年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 全県で多発のおそれ 秋田県2024年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年7月18日
-
【注意報】野菜、花き類にオオタバコガ 県内全域で多発のおそれ 過去10年最多の昨年を上回る誘殺 千葉県2024年7月18日
-
【注意報】ネギにシロイチモジヨトウ 県内全域で多発のおそれ 千葉県2024年7月18日
-
【注意報】果樹全般に果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年7月18日
-
農業用ドローン専用カスタマーサポート 繁忙期で対応拡大 ナイルワークス2024年7月18日
-
食物繊維が豊富なもち麦2種の品種登録 成果を紹介 生研支援センター2024年7月18日
-
AI潅水施肥システム「ゼロアグリ」エントリー&ハイエンドモデル同時リリース2024年7月18日