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北海道で生きる喜び どんな過疎地でも「安心」を【大見英明・生活協同組合コープさっぽろ理事長】2019年2月28日

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◆経営破綻から再建へ

 コープさっぽろは北海道全体を事業エリアに、2018年3月で組合員数約170万人を有し、全世帯の6割強を組織しています。店舗数108で、職員は正規職員2157人に、契約社員1937人、それにパート1万805人。2017年度の総事業高は2820億円で、うち店舗1915億円、宅配840億円。1990年代の後半、経営破綻に陥り、1998年、日本生協連からのトップ派遣と資金投入を受け、経営を再建しました。
 経営再建の過程で、人員のリストラを断行し、正職員450人、パート1000人規模の人員削減を1年で達成。役員30%、正職員15~20%の給与カットを3年で実施しました。瀬戸際からの脱出で、職員が危機意思を共有。この他、不採算店舗や事業から撤退ないしは縮小するとともに、既存店舗の標準化などを進めました。
 特に人事制度を、これまでの平等主義から成果主義へ変え、能力主義的な仕組みにしました。そのなかで降格人事や人事考課も導入。日本の企業では馴染みの薄い降格は、本人が納得できるような動機付けが重要です。降格した職員は、自分を見直す期間にもなり、その後の人事異動で復活できる仕組みも取り入れました。

 

◆ボトムアップ組織に

北海道で生きる喜び どんな過疎地でも「安心」を【大見英明・生活協同組合コープさっぽろ理事長】
 経営再建前は組織が肥大化して複雑になっていました。これが経営悪化の一因でもあるのですが、これを防ぐため屋上屋を重ねることのないよう、組織はなるべくフラットにしました。現在、専務1人、常務3人の体制です。小売業は労働集約産業で、人が全てです。人は給与で辞めることはありません。重要なのはその人の存在理由があるかないかです。パートのまま店長になって好成績をあげる女性職員もいます。
 協同組合であっても、資本主義社会にあっては競争に勝たねばなりません。同じ小売業に勝つには、相手以下のコスト構造をつくること、現場力を高めることが事業の成長を左右します。そのためには組織内の情報開示を徹底し、一人ひとりが自己責任を貫徹できるボトムアップ型の組織風土にする必要があります。
 その一つとして、子会社を含めた部門ごと、あるいは大卒を対象にした「仕事改革発表会」を行っています。また平成17年からQC(品質管理)作業カイゼンのIE教育等を実施し、2300人が受講しています。人材確保のため、複数のコースを選択できる複線雇用、ベトナム人を中心とする外国人就労研修生の受け入れ、契約職員の正規化、4年間で100万円を助成する大学生育英奨学金制度などもあります。相対的貧困化対策の一つで、教育の機会均等を生協として側面から支援するというものです。

(写真)大見英明・生活協同組合コープさっぽろ理事長

 

◆環境・少子化対策も

 このほか、10年で生協として実施した数多くの取り組みがあります。2008年の洞爺湖サミットをきっかけに、牛乳パック回収からエコリサイクル事業を立ちあげ、環境貢献を年間4億円の事業として成功させました。またレジ袋有料化で、「未来の森づくり基金」を創設。年間3000万円の基金で、環境教育・子育て支援事業を実施。道内の非営利植樹団体の活動を支援しています。
 さらに北海道内127市町村で移動販売車「おまかせ便カケル」を運行。店舗から1時間圏内で90台が配達します。毎週2回、同じ家に行くので、当てにされ、利用者の生活の一部になっています。それが利用増につながり、利用者約3万人で、事業高25億円の黒字経営です。
 生活困難者支援では、配食事業と安否確認を行っています。道内5工場体制で約8000人に車両240台で弁当を宅配。このほか、アトピーのアレルギーに対応した幼稚園給食を60園で実施。さらに産後食や健康管理食(やわらか食)、医療・介護食、病院給食などにも事業を広げています。配食サービス事業の規模は15億円で、これも黒字化を実現しました。これらは食のライフラインを支えるというコープの重要な社会的使命の一つだと考えています。
 さらにファーストチャイルドボックスを第一子新生児に贈っています。これはフィンランドで行われている取り組みで、2018年からスタート。生後8か月ころまでに使う衣類や紙おむつ、母乳パッドなど30点ほどを箱詰めして届けるものです。北海道の出生率は1.29で最悪の状態にあり、少子化対策にコープとして若い世代に少しでも手助けしたいと思っています。

 

◆実践通じて理解と信頼

 コープさっぽろは、北海道に生かされたコープです。北海道で生きることを誇りと喜びとするという理念のもとに事業を展開しています。リーダーの基本的な責任は、組織関係者の全てがこの使命を知り、理解し、それを実践できるようにすることにあります。
 具体的に、当面のミッションは、(1)超高齢化社会に、北海道のどんな過疎地でも生活できるインフラとなる、(2)循環型社会に貢献する、(3)健康寿命の延伸を図り、医療費の削減に貢献する、を掲げています。そして北海道で宅配利用54万世帯達成を目指します。
 協同組合は組合員さんの願いを実現する組織です。いま組合員さんに起っている生活問題に真正面から立ち向かい、解決のための事業を実践することが大事です。実践を通じて協同組合への理解が深まり、多様な要求に応える実践を重ねることで、組合員さんの協同組合への信頼が高まります。

 

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

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