JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
【覚醒】位置付けを明確化 「地域農業振興に寄与する者」2019年3月29日
◆准組合員対策
新世紀JA研究会では、3月15日に開いた課題別セミナーで「新たな准組合員対策」をテーマに検討を行った。このセミナーで、同研究会の企画部会小委員会(委員長・JA東京中央経営企画部課長・荒川博孝氏)から「新たな准組合員対策」について報告が行われた。
このなかで注目されるのは、新たな准組合員の位置付けである。言うまでもなく准組合員問題は、今回の農協改革における最重要課題であり、その事業利用規制のあり方は、平成33年3月まで結論が先送りされている。准組合員対策についてはJA全中でも取り組みの進め方が示され、各JAでも様々な対策に取り組んでいる。
だが、全中が示す取り組みの進め方やJAでの取り組み状況を見ても、今ひとつ説得力のある対策が行われているようには見えない。このことについて小委員会の議論で、この対策のポイントは准組合員の位置付けにあることが明らかにされた。混迷する准組合員対策について、その核心部分の影の正体"龍の目"を初めてとらえたといってよい。
准組合員の位置付けは、これまで全中の総合審議会答申で行われてきている。いささか古い話になるが、1986年の全中総合審議会答申では、准組合員の位置付けを「協同組合運動に共鳴し、JAの事業を安定的に利用できる者」としている。
この位置付けはどのような背景のもとに行われてきたのか。それは、准組合員が農協法で制度として与えられており、協同組合運動に共鳴する者であれば、農家でなくとも地区内に住所を有する者は基本的に准組合員として受け入れが可能であったからだ。
だがこうした位置付けは、今後の准組合員対策に有効性を持たないばかりか、対応の妨げになるといってよい。その理由は大きく二つある。その一つは、これまでの准組合員対策では、准組合員を協同組合運動に共鳴する者としているが、どのような具体的目標・組合員のニーズをもって准組合員を組織するのかが明確になっていないことにあった。
このため、これまでの准組合員対策は、准組合員としてJAに加入してもらうこと自体を目的としており、准組合員対策として実体のあるものではなかったと言える。極論を恐れずに言えば、員外利用制限を回避し、主に信用・共済の事業を伸長するという目的のために行われてきたのであり、実体がなくてもそれが准組合員対策となり得たのである。
JAの諸活動において最先端とされる、正・准分け隔てなく対応するという取り組みも、参加する准組合員の具体的な目的や思いはそれぞれであり、それから先に進むことができないでいる。もちろん、これまでの准組合員対策は、JA運営への理解、協力を求めるという点において効果があったことについて異論をはさむつもりはないが、同時にそれは大きな限界を持つものであったのである。
つまるところ、JAとして准組合員になってもらえれば、員外利用規制はなくなるのであり、准組合員の存在理由などは何でもよく、耳障りのよい「協同組合運動に共鳴する者」ということになったというのが実情であろう。かくして、結果として600万人を超える膨大な数の意思なき准組合員が存在するという事態になった。
また、これまでの准組合員対策が有効性を持ち得ないもう一つの理由は、JAが自己改革の中でうたっている、JAは職能組合であると同時に地域組合であるといういわゆる"二軸論"が、今次の農協改革における国会審議や農協法の改正において完全に否定されているということである。
地域組合論を掲げ、JAは農協であると同時に、信用組合や生協の役割を果たしているのであり、そうした人たちを准組合員として組織化したいと言えば、その部分はどうぞ別の組織に移行してくださいということになる。
こうした事態を招いているのは、これまでの准組合員対策の要である准組合員の位置付けを旧態依然の「協同組合運動に共鳴し、JAの事業を安定的に利用できる者」としていることにあった。
直近の全中による大会議案などでは、准組合員は「地域農業や地域経済の発展を農業者とともに支えるパートナー」、「地域農業振興の応援団」、「地域振興の主人公」であり、JAは、准組合員のメンバーシップ強化について、「食べて応援」「作って応援」に取り組むとしているが、准組合員の存在をあくまで地域の面から考えている点において、旧来の考え方を踏襲している。
これに対して、今回の小委員会は、新たな准組合員対策における准組合員の位置付けを、「食とJA活動を通じて地域農業の振興に寄与する者」とした。この准組合員の位置付けは、今後の農業を、生産者・正組合員と消費者・准組合員の両者で支えるという、新総合JAビジョン確立の想定のもとに行われている。
ここにJAビジョンを掲げることの重要性がある。JAは新総合JAビジョン確立のもと、准組合員の位置付けを「食とJA活動を通じて地域農業の振興に寄与する者」とすることによって初めて、有効な准組合員対策を確立することができる。
※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。
新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめています。ぜひご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日