JAの活動:より近く より深く より前へ JA全農3カ年計画がめざすもの
マーケットインによる生産振興と販売力強化(上) 全農園芸総合対策部 野崎和美部長2016年8月26日
実需者に近いエリアで産地づくり
JA全農はこの28年度からの「3か年計画」を決めた。その内容は「より近く より深く より前へ」を合言葉に、生産・流通・販売面でのいままで以上に深化・拡充した重点事業施策を実行することで「農業者の所得増大・農業生産の拡大・地域の活性化」を実現していこうというものだ。
そこで、実際に事業を推進する各部の部長に、取組みの重点課題を聞いた。今回は野崎和美園芸総合対策部長にインタビューした。
◆カット野菜や加熱済み 簡便化が消費を増やす
――「マーケットインに基づく生産振興と販売力強化」が、今期3か年計画の重点施策となっていますが、現在のマーケットの状況をどのようにとらえていますか。
消費構造は、世帯構成やライフスタイルの変化、高齢化がさらに進んだこと、仕事を持つ女性の比率が6割を超えたことなどから、食の個食化・簡便化は非常な勢いで進展しています。
そうしたなかで、平成22年度まで減り続けていた野菜の消費量が、サラダの購入量が7~8%ずつ増えてきていることを背景に少しずつ上向いています(図1)。
(図1) 野菜消費量・サラダの購入量の推移
野菜消費量が増えている要因の一つとして、従来のようなホールのまま(素材のまま)の野菜購入から、カット野菜や加熱済み野菜などの簡便化ニーズに応えた消費が定着してきたことがあります。
食の外部化率が45%を超え、将来は70%になると予測されています。野菜需要の56%が加工業務用で、その加工業務用需要の30%を占める輸入野菜マーケットの国産野菜への奪還をめざした取組みが、生産振興と販売力強化のポイントです。
◆実需者ニーズに基づく生産提案・契約取引
――「農業者の所得最大化」に向けた取組みが今期3か年計画の最大の課題ですが、園芸事業としてどういう取組みを進めて行くのでしょうか。
前3か年計画でも、加工業務実需者ニーズに基づく生産・契約栽培提案や、加工業務実需者への周年供給に向けたリレー出荷体制の構築、原料野菜の供給拡大など、加工業務用への取り組み拡大を図ってきました。また、食品メーカーと連携して国産青果物を原料とした商品開発にも取り組んできました。
今期3か年では、これをさらにパワーアップして進めて行きます。
農業者の所得最大化につながるもっとも有効な手法は、実需者ニーズを踏まえた事業展開により、契約栽培や契約販売など、実需者を明確化した取引きであり、そのためにはマーケットインにもとづく生産振興と販売を強化していくことが基本だと考えています。
――具体的には...
直販事業や全農グループ会社・市場等と連携して、実需者ニーズにもとづく産地への生産提案や契約取引の拡大を進めます。とくに加工業務用や家庭消費向けでも輸入品が一定のシェアを占める野菜の国産産地育成に力を入れていきます。
加工業務用需要に応じた販売機能を強化するために、加工処理施設の設置や加工メーカーとの連携など、一次・二次加工機能の拡充をはかることで、"ホールもの"の販売からさらに一歩川下側に近づいた加工商品を拡充することで、直販事業を拡大していく考えです。
◆端境期野菜の収量向上 労働力不足への支援
――実需者ニーズにもとづく産地への生産提案や契約取引の拡大とは具体的には...
キャベツ・玉ネギ・レタス・ニンジン・長ネギを加工業務用重点5品目とし、全農県本部だけではなく県JA・県連にも協力いただいて、品目別の対策会議で計画策定や進捗状況の共有化をはかり、30年度には29万tまで取扱いを拡大し、加工業務用向け取扱高450億円をめざします。
とくに、実需者から要望の強い4~5月の寒玉キャベツ、厳寒期のレタス、4月以降の玉ネギ、長ネギの収量向上技術の検討を進めて行きます。
――農作業支援や労働力不足が産地では問題になっているようですが。
県域における広域での選果・包装施設の設置による選果選別包装加工の作業支援、パートナー企業との連携による収穫作業支援など、労働力不足に対する農作業受託の取組強化と優良事例の水平展開が大事だと考えています。
農作業受託のニーズは、重量野菜では「収穫支援」、軽量野菜では「選果・選別、包装加工支援」等となっています。今後、JA単独での対応が難しいところでは、広域対応により全農が対応・支援していくつもりですが、農作業等支援の進め方の基本的な考え方として図2のような支援を考えています。
(図2) 農作業等支援のすすめ方
(写真)JA全農園芸総合対策部 野崎和美 部長
・マーケットインによる生産振興と販売力強化 (上) (下)
※野崎和美氏の「崎」の字は正式には異体字です。
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