JAの活動:姉妹3JAトップが意見交換
【農業と地域守り抜くJA自己改革着実に】姉妹3JAトップが意見交換(前半)2017年12月7日
比嘉政浩・JA全中専務理事
黒田義人・JAえひめ南代表理事組合長
清家治・JAえひめ南代表理事専務
吉尾三郎・JA栗っこ代表理事組合長
大内一也・JA栗っこ代表理事専務
久慈宗悦・JAいわて中央代表理事組合長
浅沼清一・JAいわて中央代表理事専務
JA自己改革の取り組みを進めるうえで、それぞれ条件の異なるJAは、自ら考え地域の特徴を生かして行動することが求められている。組合員のために地域と農業を守る改革実践の正念場となる平成30年に向け家の光文化賞の受賞を契機に姉妹協定を結んだJAいわて中央(岩手県)と、JA栗っこ(宮城県)、それにJAえひめ南(愛媛県)の3JAは、広く組合員にJAの取り組みを発信するため広報誌の新年号企画として懇談会を開いた。JA全中の比嘉政浩専務の問題提起をもとに現場の事情を踏まえ活発に意見交換した。(文中敬称略)。
(写真)JAいわて中央(岩手県)、JA栗っこ(宮城県)、JAえひめ南(愛媛県)の
代表理事組合長と代表理事専務とJA全中比嘉専務理事による懇談会の様子
問題提起
【JA全中比嘉専務】
農協改革の情勢と自己改革の取り組みについて報告します。小人数ですから、忌憚のない意見をいただきながら進めたいと思います。
これまでJAグループに対し、相当厳しい議論がなされたが、最終的にバランスのとれた決着となった例もありました。しかし、今回は、そうした甘い見通しを持っておられる人はいないと思います。このことを情勢認識として冒頭に申し上げたい。
次に官邸主導で政策決定されているという政治の構造です。政治は生き物ですから、変化していくと思いますが、選挙制度や、その他の仕組みによって、官邸は構造的な強さを持っています。これは本質的に変化ないとみています。政高党低という言葉もあります。
平成33年4月までは農協法改正はないでしょう。そして31年5月までが閣議で決定した農協改革集中推進期間です。31年7月には参院選があります。参議院選の終わった後の9月ごろから農協改革の議論が本格化するおそれがあります。その上で33年4月以降の農協法改正ということになるかも知れません。
政府は28、29年度、認定農業者に対する2回のアンケート調査を行っています。世論に敏感な政府は、その結果に基づいてJAに改革を迫る考えです。これまで政府が認定農業者を対象に行った調査では、「JAはよくやっている」という回答は1回目がおよそ25%、2回目が同じく33%でした。
農水省が農業者を対象に実施したその他の調査をみると、JAの購買・販売事業に関しては価格面に対する満足度に設問を絞って聞いています。
准組合員の事業利用制限は、憲法をはじめいくつかの法律に違反する。従って政府はこれを発案できない。万一、発案されてもJAグループは訴訟してたたかえばよいとの意見があります。こうした意見を述べてくださる人は、他国の協同組合に組合員の事業利用を制限している例はなく、そもそも組合員は事業を利用するために組合員になっているのであって、利用規制はおかしいという正論を言ってくださっていると理解し、感謝しています。
しかし、政府が憲法等に違反する案を出してくることは考えにくく、訴訟で勝てるから安心せよというニュアンスでおっしゃる向きには、それはちょっと違うのではないかと感じています。員外利用制限が厳しくなった折の経過や、信用事業代理店と絡めた案が出されるなど、関係法に違反しない形で准組合員の事業利用制限の具体案を検討していると認識しておく必要があると思っています。
JAの自己改革は、全国のJAが計画をつくって動き出しています。しかし残念ながら、JA改革は、今ひとつ職員を巻き込んだ取り組みになっていないようにも感じています。これまで経験がなかったこともあってか、役職員の危機意識が低いようにも思われます。JAそれぞれ違いがあることは十分理解していますが、もっと職員とコミュニケーションをとり、JA改革の趣旨を徹底していただきたい。
次に全中の方針ですが、理事会で「農協法5年後検討条項をふまえた取り組み」で決定しました。第1に「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合」として、正・准組合員を対象とした総合事業を展開することです。これは株式会社化の選択はないということでもあります。
第2に、組合員から「JAはよくやっており、不可欠な組織。解体・弱体化することには反対」との評価を得ることが重要だということです。そのためには改革の成果や、今後の計画をしっかりと組合員に伝え理解を得るようにしていただきたい。
第3は農業者の所得増大、農業生産の拡大を最重点として、正組合員・担い手から高い評価を得ることです。いずれもJAはこれまで取り組んできたことですが、世代交代期に入っており、次世代が職業としての農業に魅力を感じないと、日本農業は極端に縮小してしまいます。
こうした考えを踏まえて、31年の4月に全組合員1000万人を対象にアンケート調査を実施します。それぞれ条件が違うなかで各JAにとって大変な作業になりますが、組合員から高い評価を得られるよう、全力を挙げて取り組んでいただきたいと思います。
農水省は明確な意図を持って農業者等の調査を行っており、その結果をもとに農協改革を迫ろうとしています。こちらが十分対抗できるデータを持っていないと対抗できません。正・准組合員1000万人の世論は、世論に敏感な政府に対して大きな力になります。さらに調査は、組合員のみなさんに協同組合についての理解・評価を深め、将来展望を切り拓く機会にもなります。
さきほど申し上げましたように、法律で組合員の事業利用制限している国はないということです。それは当然で、協同組合は組合員が利用するための組織です。それでも准組合員の事業利用制限を主張する人はいます。准組合員制度は不特定多数の事業利用を員外利用の隠れ蓑にしているのではないかという理論です。これに対してわれわれの反論は「准組合員は組合員である」です。
この問題は31年秋までには整理しなければなりません。来年度は3年ごとのJA大会の年です。議案で議論する必要がありますが、准組合員にJAの農業振興を応援する意志を確認する必要があると考えています。また准組合員をセグメント化し、意欲のある准組合員には正組合員同様の情報提供・参画を促す。広報誌も正組合員同様に配布し、将来は准組総代制度も導入する。一方でそんなのは煩わしいという人もおられる実態を踏まえ対応する。
平成31年度は、全国8割のJAで次期中期計画の初年度になります。この時、信用事業代理店化の話が絡んできます。政府は選択肢の一つとしていますが、ほとんどのJAが総合事業を選ばれると思います。この問題は真正面から検討して結論を出していただきたい。「総合経営だからこそJAの使命を達成できる」と自信を持って主張し、これを世間に発信することが重要です。
全中で15JAの調査を行って分かったことですが、ていねいな職員研修を行ったJAは、JA改革に関するアンケートではよい評価が出ています。自前の資料・パンフレットなど、よい資料をつくったJAもそうです。
自己改革に期限はないと思っています。しかし、政府が期間を決めた以上、意識せざるを得ません。JAはそれぞれの改革を実行し、それを通じて組合員とのコミュニケーションを深め、お互い勉強する。それがJAの将来に生きてくるのではないでしょうか。JAグループはあらためて大運動を展開する必要があります。
【改革への取り組み】
組合員と心をひとつに
比嘉 最初に各JAの自己改革の取り組み状況の報告から。
久慈 東北と四国、環境の異なるJAが交流することで、それぞれの農業の事情が分かることは大変勉強になります。当時はJAや農業をどうするべきかでしたが、いまは新しい時代へ向けて、自己改革をどう進めるか、組合員の生活をより豊かにするにはどうするか、そしてJAがあってすばらしいと評価されるようにどうするべきかが焦点になっています。こうした問題について3JAが連帯して対処することは非常に意義深いと思います。
黒田 戦後、食糧確保に農業の果たした役割は大変大きなものがあります。農地解放による自作農の創設、農協法の制定と続き、さらにいくたびかの変遷を経て、農業は総兼業に入りました。
そしていま農協攻撃が強まっています。一貫して日本農業の基本であった家族経営に対して国が距離を置くようになりました。寂しい思いがします。そのなかで3JAの連携です。距離的には離れていますが、お互いが傷をなめあうのではなく、協同組合の未来への道を探るようにしたいと思っています。全国共通の課題解決に向けたJAや組合員の力の結集が、いまほど必要な時はありません。
吉尾 いまJAは非常に厳しい環境のもとに置かれています。経営そのものも厳しく、組合員と心を一つにしてやっていかなければなりません。8JAの合併の話が進んでいますが、規模が大きくなって、いかに組合員とのつながりを維持していくのか。これは非常に重要なことだと思っています。
※続きは、【農業と地域守り抜くJA自己改革着実に】姉妹3JAトップが意見交換(後半)をご覧下さい。
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