JAの活動:農協があってよかった-命と暮らしと地域を守るために
【現地レポート・JA士幌町(北海道)】大手資本の搾取排し「農村ユートピア」創造(1)<JA士幌町の挑戦>2018年1月10日
・農民自ら加工・流通作物・乳製品で高付加価値
・農協で成り立つ町
「農村ユートピアの創造を目指して」-。北海道のJA士幌町が、長年、挑戦し続けたスローガンだ。“架空の国”ではない。確かな経営理念「堅実第1主義」に基づいて、着実に実績を積み上げ、いまやそのユートピアが士幌町で実現しているといっても過言ではない。そこには独占的な加工・流通資本に支配され、不利な取引を強いられるなか、農協を中心に生産者が結束し、加工・流通によって農畜産物の付加価値を高めることに挑戦した組合員や、それをリードした経営者など、農協の先人たちの存在がある。折しもJA改革が焦点になっている今日、こうした先人の意志を引き継ぎ、さらに発展させようとしているJA士幌町の取り組みをみる。
◆農協で成り立つ町
(写真)生産者・農民組織の工場のスタートとなったJA士幌町のでん粉工場(現在)
士幌町は、北海道十勝平野の中心、帯広市の北方30kmほどところにある。町の西北部には東大雪山系の山岳地帯を臨み、東部にある佐倉山系の丘陵と居辺川の河岸段丘にかけて、広々とした畑地や牧草地が広がる畑作、畜産を中心にした北海道の穀倉地帯だ。
人口6300人ほどの小さな町だが、JA士幌町の本店や役場などのある町の中に入ると、JA士幌町の文字も鮮やかな加工場や倉庫など、農業関係の大きな施設が目につく。でん粉工場、麦乾燥貯蔵施設、バレイショ加工処理施設などだ。そして町役場の前には立派な「農協記念館」がある。
近くには農協庭園、農村工業発祥の地記念碑、農村自然公園などがあり、町内には1か所500~3500頭を飼育するリースによる18か所の肉牛肥育センター、10戸で450haの草地を持つ、やはりリースの酪農団地、350頭飼育する育成牛預託施設、1日50頭を処理する食肉処理施設と、ほとんどが農畜産物の生産と加工に関わる施設であり、まさに「農業で成り立っている町」という印象を強く与えてくれる。
北海道では、未合併で組合員数が1000人以下というJAは珍しくないが、JA士幌町も組合員戸数は411戸で、准組合員の79人を含めて組合員数は739人にすぎない。准組合員の比率が、他府県に比べて高い北海道にあっては、これも珍しい。それだけ経済事業を中心としたJAであることが分かる。
同JAの農畜産物販売高(共済金含む)は平成28年で約435億円。単純に組合員戸数で割ると、1戸当たり約1億円になる。内訳は酪農畜産物が約329億円で畑作物が同106億円となっている。いずれもJA独自の加工事業の販売高が大きな比率を占める。利益は利用奨励・割り戻し、出資積み増しなどで組合員に還元しており、その総額が同年で約21億円に達する。組合員1戸当たり約500万円になる計算だ。
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