JAの活動:JA全国女性大会特集2018 農協があってよかった―女性が創る農協運動
【現地レポート・JAひまわり】園芸王国に咲き誇る女性組織2018年1月19日
・「100円市」が発展JAの産直事業に
・数にとらわれず実をとる改革断行
・支部単位から脱皮目的別の活動へ
・「楽しさ」と共存社会的な役割も
・女性部とタッグJAの大切なパートナー
今、JAグループでは、「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」を最重要目標に掲げ、「創造的自己改革」への取り組みを推進している。なかでも「地域の活性化」実現にあたっては、女性農業者のみならず広く地域住民を巻き込んで展開するJA女性組織活動への期待が高い。
しかし、JA女性組織の部員数は減少の一途をたどり、そのあり方が問われている一面もあるのが現状だ。
愛知県南東部に位置するJAひまわりは、女性部員たちが始めた「100円市」がJAの農産物直売所へと発展したことで名高いが、産直事業をJA女性部活動の柱の1つに位置付ける一方で、女性部とJA事務局とが二人三脚で知恵を絞り、時代に即した新たな女性組織への改革をも模索し続けている。
◆「100円市」が発展 JAの産直事業に
1986(昭和61)年、合併前の旧三河一宮農協の女性部員たちにより、農協のAコープ横の敷地で、「100円市」(直売市)が開催された。畑で残ってしまった安全・安心な農産物や、それらを材料に丹精し作った加工品を、手ごろな価格で地域の消費者に提供したい、という女性たちの願いからスタートしたものだ。
その後100円市は管内の各地域に波及し、数多くの100円市が次々と開花していった。会場は、野天がほとんどで、良くても屋根にトタンをふいただけの簡素なものだったが、設備は粗末でも、根底に流れる思いはどこまでも温かい。それが100円市だった。
各地での100円市のムーブメントを受け、活動を事業化しようという機運がJA内で高まり、1989年、約2000万円をかけて、JA女性部を運営主体とする「グリーンセンター一宮」が開店。合併し新生JAひまわりが発足した翌1991年には2号店となる「グリーンセンター音羽」が、1996年には3号店となる「グリーンセンター豊川」が次々とオープンした。
女性たちの自主的な活動が事業へと展開し、農業の6次産業化を実現させたことが評価されて、1998年にJAひまわり女性部は朝日農業賞を受賞、次のステップへの大きなバネになったという。グリーンセンターは、その後も改装や増築など新陳代謝を繰り返しながら発展しており、3店舗の他に、Aコープの中にインショップとして4店舗が営業している。
グリーンセンターへの出荷資格は、以前は女性部員であることが前提であったが、昨年より「産直出荷者組織協議会」を新たに設立し、男性の出荷も認められることとなった。メンバーの割合は女性9割、男性1割と、圧倒的に女性が多いが、男性の出荷が可能となったことで、連れ合いを亡くした年配者や、若い新規就農者の活躍の場にもなり、今やグリーンセンターは地域のキーステーションとして定着している。
年間売り上げは、グリーンセンター3店舗だけで約9億円、Aコープのインショップ4店舗も合算すると、約13億4000万円となり、1986年という早い段階で始まった女性たちの直売活動は、JAひまわりを支える重要な事業の一つとして大きく開花し、今なお成長し続けている。
◆数にとらわれず実をとる改革断行
女性たちの100円市を契機とした産直事業が順調な伸びを見せる一方で、女性部そのものに目を向けると、JA合併当初の1990年には3000人いた部員数が、2006年には1700人と半減してしまっていた。しかもその大半はグリーンセンターへの出荷が目的のメンバーで、本来の女性部活動には参加していない幽霊部員も数多く存在していた。「主軸となる生活文化活動は瀕死の状態で、女性部の存在意義を再確認することが必要でした」。JAひまわりの木藤昇一総合企画部長は当時をそう振り返る。
(写真)平日にもかかわらず開店と同時にたくさんのお客さんで溢れる。
JA女性部役員とJA事務局とが危機感を共有するなかで、女性部員たちからは丹念な聞き取りを行った。すると、地域によっては、子どもが小学校に入学すると同時に、強制的に女性部に加入しなければならないしきたりがあったり、直売所の出荷者になったら必ず女性部の支部長に挨拶に出向くよう定められている地区があるなど、どうやら地域の「支部」というしばりがネックになっていることが浮かび上がった。女性部役員と事務局とで話し合いを重ねた結果、「女性部をリセットしよう、という思い切った結論に至りました」(木藤部長)。2007年のことだ。
◆支部単位から脱皮 目的別の活動へ
そこで、まずは支部単位を取り払い「JAひまわり」を一つのエリアとしてとらえることとした。そして支部の代わりに、たくさんの目的別グループを作り、女性たちがやりたいと思う活動に自由に参加できる体制を整えた。
目的別グループの総称は「わい!わい!活動」。「絵手紙クラブ」や「手芸教室」などJAの会議室やグリーンセンター併設の研修室など室内で開催できるものから、「ソフトバレー」「太極拳」などのスポーツ、地域の小学生とともに菜種油を作る「菜の花クラブ」に至るまで、実に彩り豊かな目的別グループが揃っている。
(写真)JAひまわり販売事業の2割以上を占めるのは花卉。色とりどりのバラや菊がグリーンセンターの店頭に並ぶ。
目的別グループは手挙げ方式で、やりたいと思った人が新規にグループを立ち上げて自由にメンバーを募る。一つの目的別グループのコミュニティから、新たなグループが生まれることも多く、その繰り返しで、2018年1月現在で、実に138の目的別グループが誕生している。参加人数は年間延べ2780人。1人当たりの加入グループ数は人それぞれだが、なかには7つのグループに籍を置く女性もいるそうだ。
JAひまわりでは、「わい!わい!活動」と、グリーンセンターでの「産直活動」(1037人)、そして、福祉活動を行う「ひまわりたすけあいの会」(24人)に所属している女性たち全体を「女性部員」と位置付け、メンバーの一人ひとりが、やり甲斐を実感しながら積極的に活動に参画している。
◆「楽しさ」と共存 社会的な役割も
(写真)榊原節子JAひまわり女性部長(中央)、権田晃範JAひまわり代表理事組合長(右)、木藤昇一JAひまわり総合企画部長
「目的別グループは自主性を大切にしています。やらされ感がないから、みんな生き生きと楽しんでいますよ」。JAひまわり女性部長の榊原節子さんは、部長に就任して2年目を迎える。JA女性組織の役員といえば負担が大きく、それが理由で女性組織を辞めていくメンバーも多いと聞く。これだけたくさんの目的別グループをとりまとめるのは並大抵の苦労ではないだろう。
しかし榊原部長からは意外な答えが返ってきた。「『わい!わい!活動』では、女性部役員が各グループをまわって開催の挨拶をするようなことはしていません。グループごとにリーダーを1人ずつ選出し、運営はリーダーを中心に各グループが主体的に行っています。一方で年に3回はリーダー会を開催し、情報交換を行って、活動がばらばらにならないよう一体感を醸成しています」。役員の余計な負担は減らし、メンバーの自主性に重きを置きつつも、定期的に意思疎通の機会を設け、全体の統一をうまく図っている。このつかず離れずの距離感が、活動に参加する女性たちにとって、居心地の良い空間を創出しているようだ。
「『わい!わい!活動』の意義は、コミュニティづくりにあります。狭い地域だけにしばられない人間関係が構築されているからこそ、いざという時にグループとして迅速に行動できるのではないでしょうか」(榊原部長)。
あるリーダー会では、東日本大震災の被災女性から体験談を聞いた。もし地震などの大規模災害に遭遇したら、どう助け合えばいいのか、そして、自分たちにどのような支援ができるのかを真剣に考えるきっかけになったという。「日々の活動を楽しみながら、地域にとって私たちが果たせる役割は何かということにしっかりと向き合い、これからも脱皮を重ねて成長していきたい」。
◆女性部とタッグ JAの大切なパートナー
「政府主導の農協改革、TPPや日米FTAへの危惧など、日本農業とJAをとりまく状況は、めまぐるしく変わっていきます。今、日本の食を守るために、あるべき方向性とは何かを見極めるときがきています」。JAひまわりの権田晃範代表理事組合長は、営農部門を長く勤めた叩き上げで、地域の将来を真剣に見据えた、並々ならぬ問題意識を持つ。管内の農家組合員が元気になるにはどうしたらよいのか、「それを突き詰めることこそが創造的自己改革です」。
そして、大切な農家組合員たちが、地域のキーステーションとして集うのがグリーンセンターであり、その中心にいるのは紛れもない女性たちだ。「だからこそ、女性たちの声を汲み取ることが欠かせないのです。彼女たちの思いを事業に生かすことなしには、創造的自己改革は実現しません」。
(写真)目的別グループの「手芸教室」。会場のJA会議室では笑い声が絶えない。
JAと日本農業の未来にとって、女性の力はなくてはならないものだと権田組合長は強調する。「女性部はJAが生活文化活動を実施する上での"下請け"などではないのです。女性部はJAの大切なパートナーです」(権田組合長)。
JAと女性部とがタッグを組み、地域の新たな可能性を切り拓いていく、そんな展望が見えてくるようだ。明るい未来が、もうすぐそこまでやってきている。
((一社)JC総研 小川理恵)
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