JAの活動:JA全国女性大会特集2018 農協があってよかった―女性が創る農協運動
【座談会・女性が創る農協運動】「なりたい私たち!」その思い JAで実現(後編)2018年1月25日
<出席者>
海野フミ子さん(JA静岡市前理事、アグリロード美和代表)
高橋淳子さん(JA北海道中央会根釧支所根釧女性協事務局広報・消費拡大事業担当)
後藤彩月さん(熊本県・JA菊池畜産部酪農課指導員泗水酪農女性部事務局)
髙山拓郎さん(長野県・社会福祉法人松本ハイランド理事長(JA松本ハイランド前代表理事専務))
高山 海野さんの指摘にありましたが、かつての農村社会にあった「男優先」の意識は変わってきています。先ほども言いましたが、どんなに素晴らしい取り組みも情報発信しないと男性の意識は変わらないと思います。「なるほど」と思わせることでしょうね。
高橋 情報発信は大事ですね。あと見せ方や見え方にも気を配るとよいです。男女に仕事上での能力の差はないと思います。女性でも大型機械の運転はできるし、こまごました仕事の方が得意な男性もいます。その人は何を得意とするかが重要で、そこに女性が加わることで、掛け算的に力が大きくなるということだと思います。男性のなかには、そのことが分かっていても見ないふりしている人がいるのかものかも知れませんね。女性参画をいうより、女性も男性もどれぞれの能力を最大限に発揮する環境をつくることが大事だと思います。
私自身、事務職で採用されたのですが、事務職以外の仕事もさせて頂いています。弱みはいつまでたっても弱みです。重要なのはその人の得意な部分、強みを活かすことです。
高山 そうですね、男性がどう、女性がどうと勝手に対立軸をつくっていたのかも知れません。それぞれの持つ力をきちんと活かすことです。最初から仕事に枠をはめて、女性参画がどうのこうのと言うから、うまくいかない。もっとフラットに考えるべきかも知れません。
高橋 その通りですね。女性としては十分やってきているのに、さらに何を求めるのかと言いたいですね。
海野 そもそも、「女性らしいことやれ」といわれるが、男性は男性らしいことをこれまでやってきたのでしょうか。(笑)
◆役員の人選に斟酌無用
高山 女性部の活動には参加するが、役員はやりたくないという人が多くて困るという悩みも聞いたことがあります。しかし、渋々受けた集落の役員が、いろんなことを学び交流するうちに、輝くような活躍をするようになったという話を聞きました。JAが遠慮していたのでは何も始まらないのではないでしょうか。農協が「あの人に役員をやってもらいたいが、忙しいから気の毒だ」と、実際は、農協が斟酌(しんしゃく)しているのではないでしょうか。役割があるからこそ組合員だと思いますが、いかがですか。
高橋 まさに斟酌ですね。できるかどうかは、「これをやったらどう?」と持ちかけて話し合うことで分かることです。最初からできるかできないかを決めるのはおかしい。2方向でやりとりして決めることが大事です。
海野 その通りです。女性部の原点に戻って「やりたいことはなにか」をあらためて考えることが大事です。そんなことをいうと「やる人がいなくなる」と言われるが、それは逆です。やって成果が出るから面白いのです。事務局は決めつけるのではなく、やりたいことを実現するために必要なことなどを提案するなど、うまく話し合いにもっていく必要があります。職員も意識を変えなければなりません。
高山 自分のやりたいことを伝えるのは言葉です。言葉はその人の思想です。JAは会議が多いとよく言われますが、何が決まったか分からないということがしばしばとも言われています。会議文化そのものを変えていくことで女性の力をもっと引き出すことができると思いますが、どうでしょう。
高橋 ものごとの基本は対話から始まります。人の話を聴き、質問するという双方向のなかで議論を重ねることで一つの方向に向かうものだと思います。JAの地区懇談会などで、「JAは聞いてくれない」などという不満が出るのは、会議の仕方、ファシリテート(進め方)に問題がある場合に多いと思います。出た意見にはしっかり対応し、それぞれの発言をボードに書くなど、運営のスキルを駆使して、会議を"見える化"する工夫が必要です。
みんなで徹底して話し合って「それでやろう」と決めたことは、実現へ向けた姿勢、スピードが全然違います。それには、最初からそれぞれの見解を合致させようとするのではなく、できると思うところを、みんなで探して合意することが大切かなと思っています。あれを、これをやろうと決めても、参加者が納得しないのではうまくいきません。
後藤 女性部の会議などで、意見を言う人は言いますが、言わない人は言いません。職員は、よいファシリテーターになる必要があると思います。
高山 要は参加してよかった会議をいくつ作るということではないでしょうか。伝えるだけでは伝わらないですね。みんなで決めることで、みんなが動きまわるJAになるのではないでしょうか。女性も男性も同じです。組合員の参加意識を、言葉を通じて高めていくことが「JAがあってよかった」原点だと思います。遠回りに感じるかもしれませんが「自己改革」の一丁目一番地ではないでしょうか。
先ほども言いましたが、農村はお互い様の精神で助け合いながら「いのち」を育んできました。別の言い方をすれば、それは女性のしなやかさ、豊かな感受性による、すべてをも包み込む社会だと思います。それは理屈でできるものではありません。いま農村で誰が一番大事か、主役は誰かを間違えるととんでもないことになります。組合員が動く仕組みを組合員自らがつくる。特にその中で、女性が様々な人を巻き込んだ結果、協同活動の表面積が増え、男女の区別なく運営されるJAが実現すると思いますが、どうでしょうか。
高橋 うちの支所だけだと思いますが、女性職員も含めた全職員が分担してJAの総会に出席するようにしています。そこで定点観測し、それぞれのJAの良い点や課題を内部共有するようにしています。そこから気づきを得られるというメリットがあります。
海野 女性の理事ができたことで、これまで議題とは関係のない個人攻撃などがなくなりました。
髙山 みなさんの今年の抱負、これからの夢を聞かせてください。
(写真)高橋 淳子さん
◆女性が働き易い職場に
後藤 この仕事を始めて4月で3年目になりますが、少しでも農家と話す機会をつくり、先輩や農家から言われたことをきちんとこなし、指導員としての仕事を充実させたい。女性だからできるということもあると思います。
現在は、女性指導員一人でやりにくい点は多々あります。次に女性指導員として入組された方が、仕事をやりにくく感じないためも、一人でも多くの女性指導員が増えればいいと希望しています。女性は出産や育児などがあり、ずっと働き続けることが難しいという問題がどうしても出てくると思います。これまで、それは仕方がないと想っていましたが、みなさんの話を聞いて、それが女性の社会進出を拒む理由にはならないと感じました。海野さんが「指導員は、農家から知識や技術を教えてもらえるすばらしい仕事だ」と言われましたが、その通りだと思います。経験を積んで多くの知識を仕入れていこうと想っています。
高橋 地域の生産者や組織のつなぎ役として存在したい。そのためにも年齢や立場の違う人とも対話し、話をよく聴いて自分の能力のパワーアップに努めたい。今回はみなさんの話を聴いて、特に組織活動は、組織を維持するためだけではなく、小さなネットワーク、協同活動を数多くつくることも大事だと感じました。
海野 現場の農業者として、もう少し地産地消の大切さを都会の人に分かってもらいたいですね。輸入農産物もいいが、日本の農産物のよさ、気軽に安く入ることを知ってもらうためにも、静岡に体験農場のような場をつくって都会の人にきてもらう取り組みを今年はやりたい。
女性は夫から一歩下がってという意識が、まだまだ女性のなかにあるように思います。ただ、私としてはJAのバックアップがあったから、いままで楽しくやってこられたと思っています。これは町内会のような他の組織ではできなかったことです。楽しい人生も農協があったからです。
髙山 周りを元気にするには、自分が元気でないといけない。一緒に元気になれるよう、当たり前のことを当たり前にこなしていくと、地域も農業協同組合ももっとよくなるのではないでしょうか。だめなことではなく、うまくいったことを大事にして広げていきたいですね。それが、遠回りのようで、女性参画の一番の近道ではないでしょうか。「なりたい自分たち」を発見することが大事です。本日はありがとうございました。
この記事の前半は、【座談会・女性が創る農協運動】「なりたい私たち!」その思い JAで実現(前編)をご覧ください。
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