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全農が目指す農業ICT2018年2月20日

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・紙の管理から簡単入力でシステム化

 JA全農は、新規開発中の「全農版営農管理システム」(営農管理システム)を核とした農業ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の確立を目指している。そこで、この営農管理システムはどのようなシステムなのか。そしてこれを核とした全農がめざす農業ICTについて取材した。

◆白地図からネットの地図情報へ

全農農業ICT

 いま農業の生産現場の課題はいくつかあるが、生産者の高齢化や後継者不足などから、大規模担い手や生産法人への農地の集約、集落営農組織などによる大規模化が進んでいる。しかし、いずれにおいても、増加するほ場数に合わせた作付・作業計画の作成やほ場管理作業が煩雑となり、このことが経営規模のさらなる拡大を阻害する要因となっている。
 また、経営規模が拡大することで従業員が増加し、労務管理の不徹底や作業引継ミスなど、作業指示不足による「ムダ」が増えるという問題も起きている。
 さらに、農業経営・農作業受託では、ほ場が分散していることによる非効率化、中山間部など条件不利地が存在することで生産性が低下するなど、生産現場における営農管理上の諸課題が浮き彫りになってきている。
 こうした課題解決の一つのツールとして全農が開発しているのが、インターネット上の地図を使ってほ場情報や営農情報を管理するための「全農版営農管理システム」(4月利用開始予定)だ。

システム化による効果

 このシステムは、文字や数字、画像などのデータを地図と結びつけてパソコンなどのコンピュータ上に再現して、位置や場所からさまざまな情報を統合したり、分析したりして分かりやすく地図表現することができるGIS(地理情報システム:Geographic Information System)を活用したものだ。
 現在、多くの生産法人やJAでは、ほ場の管理を紙の白地図で行っているのではないだろうか。こうした「紙に記録」しているほ場情報(ほ場ごとの地権者・耕作者の賃貸関係、農地管理や作業受委託のほ場ごと確認、作付作物とほ場選択など営農計画の策定、ブロックローテーションとエリア調整、防除作業の計画・変更・実施など)を、手軽にエクセルと同様な操作方法で入力し、地図情報とむすびつけて管理(システム化)することができる。

 

◆クラウド型でスマホやタブレットでも

 「システム化」することで、
▽有効な作業計画(ほ場選択と作付計画)による作業時間の短縮化
▽生産履歴のほ場地図上での確認
▽防除・品種・作業内容など各種マップ作成時間の短縮
▽JAと組合員との双方向のデータ交換による事務効率化
▽経験や勘に基づく作業情報の記録化
▽生産資材の計数管理
▽効率的な栽培管理の実施
などの効果が期待できる。
 しかもこうした情報はインターネット上に蓄積し、いつでも追加・修正ができる「クラウド型」なので、生産現場でスマホやタブレットで閲覧し確認することもできるようになっている。

 

◆アピネスやZ-BFMと連携

Z-BFMのシミュレーション図 全農では「営農管理システム」の開発を機に、既存のICT関連ソフトと今後登場してくる予定のソフト(データ)を、むすびつけ文字通り全農版のICTシステムを上の図のように構築していくことにしている。
 全農独自の営農技術情報サイトである「アピネス/アグリインフォ」は平成10年から運用を開始し、20年間にわたってJAや生産現場で日常的に有効活用されているものだ。
 主なコンテンツは、▽農薬登録情報、▽病害虫雑草図鑑、▽要素障害データベース、▽青果物市況情報、▽1kmメッシュ気象情報、営農技術相談がある。とくに1kmメッシュは、全国の天気・気温・降水量・風向・風速・湿度の実況や予報を「ピンポイント」で確認できるほか、自宅やほ場などを10か所まで地点登録し、最新の定点予報を確認できるというもので、現場ですぐにでも役立つものだ。
 「新Z-BFM」は、雇用人数や作付面積などの経営概況や労働条件を入力し作付作目を経営指標から選択して、農業所得が最大となる営農計画案を作成するシステムだ。平成22年に農研機構が試行版をネット上で公開、24年に正式版(Ver.3)を公開。その基本的な機能はそのままに28年4月に「より使いやすく」改良し、アピネスに掲載し、ダウンロードできるようにした「営農計画策定支援システム」だ。
 図2は、近畿地方のある法人を「Z-BFM」でシミュレーションしたものだ。「現状」(図の上)は常時雇用者4名の労働時間256時間/旬、水稲反収300~400kg、農業所得約400万円であった。「一次シミュレーション」を経て「二次シミュレーション」で多収米水稲「あきだわら」を10ha導入、転作作物14haに固定し農業所得約2000万円と算出した(図の中)。さらに収益率の高いトマト、長ネギを導入することで11月から翌年2月まで収益を確保し、常用雇用者の労働時間を平準化、農業所得を約2700万円にまで伸長させる「最終提案」(図の下)を策定した。

 

◆土壌分析値やドローンのデータとも

 こうした既存のシステムと同時に、全国で実施されている「土壌分析値」とそれを活かした「適正施肥指導」情報。全農も出資している(株)ナイルワークス社製のドローンを活用した防除・施肥データや生育データ、さらに最近利用が増えている水田センサーなどの栽培環境データとむすびつけることで、現状の農地活用の最適化を図るとともに、将来に予測されるリスクなどの情報を担い手など生産者とJAが共有すること、さらにはいま農業界での大きな課題とされる「事業承継」にも役立ていくことで、日本農業の振興に貢献していきたいと全農では考えている。

 

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