JAの活動:姉妹3JAトップが意見交換
【姉妹3JAトップ座談会】協同組合の価値を軸に 地域を守る改革さらに(2)持続可能な経営基盤の確立へ2019年12月11日
【出席者】
・JAいわて中央浅沼清一代表理事組合長
・JA新みやぎ大坪輝夫代表理事組合長
・JAえひめ南山本長雄代表理事組合長
・JA全中比嘉政浩専務理事
農協改革集中推進期間は5月末で終了し、JA自己改革は新たなステージに入った。今年3月の第28JA全国大会決議では、組合員から評価を得て、地域になくてはならないJAを実現するよう自己改革に引き続き取り組むことを決議した。同時に今後は厳しい環境のなか、持続可能なJA経営基盤の確立・強化も重点課題とし、JAにとっては来年からの取り組みが重要になる。ここではJA全中の比嘉政浩専務による情勢分析と問題提起をふまえ、家の光文化賞の受賞を契機に姉妹協定を結んだJAいわて中央(岩手県)、JA新みやぎ(宮城県)、JAえひめ南(愛媛県)のトップが今後のJAの取り組み方針などを語った。
改革の成果組合員にアピール
◆自己改革の取り組み
比嘉 それでは、まず3JAの自己改革のこれまでの取り組みについてお聞かせください。
浅沼 わがJAは水田農業が中心になっていますが、農業所得の向上につなげるために園芸作物の普及、推進に取り組んできました。そのため第7次中期計画では管内3つの行政と連携し地域営農センターを主軸にした地域重点型の農業振興の実践を掲げました。一律の営農指導から地域に密着した営農指導に転換することで、行政の農林予算とJAの営農指導の予算を有効に使うことで農業振興を図ろうということです。
もちろん所得向上のためには販売を強化しなければなりませんから、とくに米の直接販売を増やすことにしました。平成28年では米の直接販売は15万袋でしたが30年には27万袋まで増えました。
それからリンゴの海外輸出も展開しタイ、ベトナム、台湾に加えて、2月には日本から初めてカナダに輸出しました。今年は5000ケースを目標に取り組んでおり、成果を生産者に還元しています。
一方、JAは財務体質をしっかりしなければ組合員の期待に応えられないため、支所・出張所の再編は避けて通れないと考えており、外部コンサルタントに依頼して一定の方針を打ち出し理事会で協議することにしています。
県内JAの組織目標としては自己資本比率10%以上を確保することなどという目安を立てていますが、それに合わせた経営改革をしています。
全組合員アンケートの結果は全国集計結果とくらべるとJAの自己改革についての認知度がやや低く、もう少し広報活動を通じてアピールしていかなければならないと思っています。自己改革の成果に対する評価は全国と同じように良い結果となっているわけですから、もっと組合員と向き合って伝えていかなければならないと考えています。
(写真)浅沼JAいわて中央組合長
大坪 JA新みやぎは宮城県北部の5JAが合併して今年7月1日に新しく発足したJAです。JA管内は宮城県の3分の1という広大な地域を占め、西は奥羽山脈から東は太平洋の三陸海岸までという極めて多様性に富む地域です。しかし、農業は米を中心とした水田単作地帯であり、農業者の所得向上をめざす自己改革について私たち宮城県のJAは終始一貫して米単作から脱皮し、米以外の品目の開発や営農形態へもっていこうと努力をしてきました。米+園芸、米+畜産といった複合経営に以前から取り組んでいます。JA新みやぎとしての販売高は5地区本部計で米が約170億円、畜産が90億円、園芸が46億円と300億円を超えます。しかし、このうち米販売高が増えることはあまり期待できないという認識のもとで複合経営で組合員の所得向上につなげていきたいと考えています。
私たちは合併協議のなかで、合併は究極の自己改革、自ら判断して自らの将来を賭けるということだ、とそれぞれが認識しました。そうした強い意志で合併を選択したということです。
(写真)大坪JA新みやぎ組合長
山本 今年6月から新役員体制となり組合長を拝命しました。新たな役員体制のなかで自己改革に取り組んでいこうという認識を持っています。農業者の所得増大、農業生産の拡大に向けた取り組みでは、農家への巡回指導で徹底的に組合員の声を聞いて技術指導をしていく取り組みをしています。
また、消費者ニーズにあった戦略品目として「紅まどんな」、「甘平」、「ブラッドオレンジ」の生産振興に向けて3か年の出荷量、販売金額目標を設定して拡大に取り組んでいます。
私たちのJA葉柑橘主体の販売で90億円の販売高のうち7割が柑橘ですが、野菜にも力を入れようとブロッコリー、キュウリ、サトイモを主要品目としてそれぞれ1億円を目標に推進中です。
産地の活性化の取り組みとして、柑橘の新たな販売先である菓子メーカーがJA管内に工場を設置したことから、出荷計画を策定し、栗や柿などの生産拡大にも取り組んでいます。
当JAも平成9年に合併して今年で23年になります。この間、金融店舗の統廃合も実施してきました。合併当時は54店舗ありましたが、その後、34店舗、そして19店舗に統合し来年3月には8店舗にします。現在、座談会や支店運営委員会等を開いていろいろなご意見を聞いています。金融店舗は当然残していかなければなりませんが、自己改革は営農経済をどう改革するかですから、そこにしっかり重きを置き、組合員にやはり農協は必要だと言っていただけるように今回は拠点の再編を計画しています。11月22日にはJAえひめ南として、農産物販売高100億円突破をめざして農業振興大会を開きました。その場には各生産部会員や支店運営委員、そして職員も含め200人以上が参加し、第7次農業振興計画を説明し、ともにがんばっていこうと呼びかけました。
◆農業と地域活性化
比嘉 JAいわて中央もJA新みやぎも米のウエートが高く、ともに園芸に挑戦していかなければならないということですね。課題はどんなところにありますか。
浅沼 多くが米単作ではなく園芸や畜産に取り組んでいますから、JAとしてはハウスや畜舎に対して助成をするなど、米以外の品目の支援に力を入れています。とくに盛岡市は消費地ですから、そこに向けた野菜生産で所得を増やしていこうと考えています。
大坪 今ではほ場整備が完了して用排水が完全に分離しており、地力もあり、恵まれた基盤があるわけですから、JAがいかに営農指導を通じて農家組合員の園芸への挑戦意欲を引き出すか、力量が試されるということです。
これまでは水田の作業が中心となり、そこから逆算して別の作物の作業を考えていました。しかし、考えてみると水田の作業は融通が効く。園芸はそうではないですから、頭の切り替えが必要です。実際、園芸に熱心に取り組んでいる農家のなかには稲作以上に収益を上げている農家もたくさんいます。
比嘉 JAえひめ南はいかがでしょうか。
山本 私たちの地域はもともと米の生産はわずかですが、とくに最近では米では収入が得られないということから、若い新規就農者を確保するには裏作で少しでも収入を上げていくような道を検討しています。
先ほども話しましたブロッコリー、キュウリ、サトイモを主要品目にしていますが、とくにサトイモについては「伊予美人」を管内に導入しています。サトイモを栽培すると作期が重なり米は作れませんが、がんばって作れば単位面積あたりの手取りは米よりもよくなります。こうした取り組みで園芸を少しずつ広げたいと考えています。
(写真)山本JAえひめ南組合長
比嘉 主力の柑橘生産では労働力確保が大変ではないですか。
山本 そのために自己改革の取り組みの一環として今年度に取り組んだのが「宇和島お手伝いプロジェクト」です。これは有償のボランティアで労働力を確保する仕組みです。必要とする農家が登録をして、宇和島お手伝いプロジェクトに作業要請をすると登録されたボランティアが収穫の手伝いに来てくれるというものです。土日、祭日の限定ですが、ボランティア登録を行政や地元金融機関の職員などにお願いしています。ボランティアにはクーポン券をお渡ししており、それを地元の道の駅などで使ってもらおうということです。
【姉妹3JAトップ座談会】協同組合の価値を軸に 地域を守る改革さらに(3)
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【姉妹3JAトップが意見交換】
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