JAの活動:人づくり 組合員からの学びで人が育つ
座談会:10年、20年後を見据えた人づくりを(3)2020年2月7日
出席者:藤山作次JAえちご上越理事長
下小野田寛JA鹿児島きもつき組合長
田村政司JA全中教育部教育企画課課長
協同の精神は実践を通じて 多様な人材・働き方生かす
◆地域の価値創造を
田村 経営が厳しい中で、新しい事業を起こさないと農協の将来が危うくなります。新しい事業は何か、その原案はだれがつくり、実行するのか、あらためて農協にとって価値のある仕事を掘り起こす人材の育成が求められます。管理能力の高さだけではなく、常識にとらわれない、自ら仕事起こしに挑戦する人材です。これまで10年にわたり取り組んできた戦力型中核人材育成研修について、価値創造という観点から見直しを検討していきます。
藤山 協同組合は人の組織で、優れた人材が必要です。管内は米が中心で、圃場整備で4haの水田もできています。一人あるいは一つの組織で大きな面積を経営できます。管内1260人の認定農業者がいますが、今後、小規模な認定農業者は集約の方向です。そして大型経営の農業者は自分で販売までやろうとします。
そうなると今までの農協のビジネスモデルでは対応できなくなることも考えられます。農業者の所得を増やすため、園芸振興に力を入れていますが、米と畜産、園芸農家はまったく性格・手法が違います。しかしそれをやっていかないと所得増大につながらない。まさに正念場であり、新しいビジネスと人材が求められています。
田村 新しい人材は、いまの方向だと野菜の営農指導員をどう育てるかということでしょうか。
藤山 やはり野菜産地で指導できる人材、米地帯で園芸振興できる人材が必要です。レベルの高いベテランの園芸農家が言っていました。ハウストマトは1反で1000万円売り上げが可能なのに、なぜ若者が挑戦しないのかと。技術指導できる営農指導員の育成が課題です。JAには70人近い営農指導員がいますが、一人ひとりが1000万円の所得をあげる農家を育てるとすごい数字になります。
田村 素質を持った人材を育てながら、活用していくため、どのようなことを意識していますか。
◆「ネクスト10」共有
下小野田 発想を変えることですね。自由な発想で。それを、いかに皆で出し合えるかです。地域おこしで「よそ者、馬鹿者、若者」の活用と言いますが、まさにその通り。そういう人材をいかに引き上げるか。何者にもとらわれない、先を見通す発想が大事だと思います。
JA鹿児島きもつきの「ネクスト10」(10年構想)で、10年後、農畜産物の販売高を300億円から400億円に、その結果として貯金高を倍増の2000億円にする目標を掲げています。遠い先をみつめることが、若い人を育てることになります。そこに先輩農家の応援も期待しています。財務基盤がしっかりしていないJAでは、常に挑戦です。
藤山 それがいま必要ですね。店舗の縮小や赤字を繰り返すなら廃止するなど、あれも駄目、これも駄目では、組合員にとって10年後の明るい未来が想像できず、これでは元気も出ないでしょう。ポジティブな提案を出さないと、地域は沈んでしまいます。人口が減る中で、農協が「一人は万人のため、万人は一人のため」の精神で地域を守るという姿勢を見える形で示す必要があります。
下小野田 ご指摘の通りです。経営改革のポイントは組合員です。将来ビジョンを示さずに組合員の拠点となる支所や支店を減らすと組合員が農協から離れる原因になります。経営の厳しさを組合員と共有し、将来への希望を持ってもらう。「ネクスト10」はそうした意味を持たせたものです。
田村 JA経営の改革は、経営の厳しさをオープンにして、組合員と共有することがスタートラインだと思います。JA全中は、今年の3月までに支店統廃合の方針をまとめるよう提案していますが、その後、事業をどう進めるかが重要です。5年、10年先のビジョンを考えるべき時で、少し時間が欲しいですね。
藤山 支店の統廃合は、機能再編を含めて検討しなくてはなりません。今年の総代会で、2年目になる中期計画ですが、支店統廃合には手を付けないと約束しています。令和4年以降、どうするかを決めるつもりです。農協の将来にとって支店統廃合はそのくらい重要な問題だと考えています
田村 農協の中・長期のビジョンが人づくりにも必要です。そして人を育てるには時間がかかります。いま、新たな人づくりビジョンをつくる節目の時だと思います。(終わり)
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