【緊急インタビュー 経済評論家・内橋克人氏に聞く(下)】 「農協改革」を斬る 批判精神強め対抗軸を2016年11月30日
社会的経済に協同組合不可欠
--ただし、昨年からの農業改革の議論はTPP大筋合意を前提にしたものでした。しかし、トランプ次期米国大統領はTPPから離脱を明言し、その前提はまったく不透明になったのではないでしょうか。どう考えればよいのでしょうか。
トランプ氏に関していえば、私は「ネオ・ラディカル・コンザーバティブ」とみなしています。急進的、かつ過激な「新保守主義」(ネオ・リベよりさらに市場万能主義)です。日本ではまったく誤解した次元で議論をしている人が多数いますが、グローバリーゼーションが終焉を迎えたなどという解釈は余りに皮相的、浅薄なものです。マネー資本主義、世界市場化(グローバル化)はトランプ大統領のもと、逆にもっと剥き出しのものとなるでしょう。トランプ氏とウォール街とのつながりの深さがやがて露呈するはずです。
TPPは、彼のいうアメリカ・ファーストではないから離脱するというだけのことです。そして「二国間交渉」を進める。どうなるかといえば韓米FTAの無惨な結果が示しています。
アメリカ・ファーストとはマネー資本主義がもっと先鋭化するということです。なぜなら米国の産業構成、さらにGDPに占める割合は金融部門がいちばん大きいからです。トランプは壁をつくって不法移民を閉め出すといっていますがマネーに壁は作れません。ますますマネー資本主義化していく。トランプ氏を大統領に選んだアメリカの真意がこれからはっきりしてくるでしょう。
そのなかで二国間交渉になれば日本は非常に厳しくなる。にかかわらず、国内では大規模な農家と中小、零細農家を分断し対立させて競争させる政策が進む。改革の目玉として農協を標的にするという手法です。そこをしっかり理解し、対抗していかなければなりません。
--どう認識しどう対抗すべきでしょうか。
前回の対談でも指摘しましたが、政権に寄り添ってその「おこぼれ」(余恵)に与(あず)かろうという"さもしい考え方"から協同組合は抜け出さなければなりません。そういう下心では協同組合が本当に潰されてしまいます。
脅し(ブラフ)がかかってくればこちらからも脅しを返すというのが対抗思潮です。そういう意味で自民党を応援するのはもうこれで止めます、とはっきり打ち出すべきときがきたのではないですか。 つまり、今の政権に対してもっと厳しく苛烈な批判精神を磨くことです。そうでないと「ノーキョーさん」に世論はついてこないと思います。
協同組合セクターになぜそれが必要かといえば、協同組合がないと社会的経済は望めないからです。マネー資本主義への対抗軸は社会的経済しかありません。そのことを協同組合陣営がもっとしっかり自覚していただきたいと思います。
厳しい政治環境のなかで農業や農協をどう守り、持続させていくか―もっと大きな「対抗思潮」の構築に向けて学習し行動していただきたい。そうしないと対抗軸がなくなってしまう。それに取り組むために、いちばん大事なことは消費者を含む多くの国民に協同組合の意義を深く理解してもらうこと、これを幾度も強調したいと思います。
重要な記事
最新の記事
-
トランプ関税で米国への切り花の輸出はどうなる?【花づくりの現場から 宇田明】第58回2025年4月24日
-
三島とうもろこしや旬の地場野菜が勢ぞろい「坂ものてっぺんマルシェ」開催 JAふじ伊豆2025年4月24日
-
積雪地帯における「麦類」生育時期 推定を可能に 農研機構2025年4月24日
-
日本曹達 微生物農薬「マスタピース水和剤」新たな効果とメカニズムを発見 農研機構2025年4月24日
-
適用拡大情報 殺菌剤「バスアミド微粒剤」 日本曹達2025年4月24日
-
倍率8倍の人気企画「畑でレストラン2025」申込み開始 コープさっぽろ2025年4月24日
-
農業・食品産業技術開発の羅針盤「農研機構NARO開発戦略センターフォーラム」開催2025年4月24日
-
雪印メグミルク、北海道銀行と連携「家畜の排せつ物由来」J-クレジット創出へ酪農プロジェクト開始 Green Carbon2025年4月24日
-
山椒の「産地形成プロジェクト」本格始動 ハウス食品など4者2025年4月24日
-
絵袋種子「実咲」シリーズ 秋の新商品9点を発売 サカタのタネ2025年4月24日
-
『花屋ならではの農福連携』胡蝶蘭栽培「AlonAlon」と取引 雇用も開始 第一園芸2025年4月24日
-
果実のフードロス削減・農家支援「氷結mottainaiプロジェクト」企業横断型に進化 キリン2025年4月24日
-
わさびの大規模植物工場で栽培技術開発 海外市場に向けて生産体制構築へ NEXTAGE2025年4月24日
-
サラダクラブ「Grower of Salad Club 2025」最優秀賞6産地を表彰2025年4月24日
-
22世紀の食や農業の未来に「あったらいいな」を募集第三回「未来エッセイ2101」AFJ2025年4月24日
-
「第75回全国植樹祭」記念「狭山茶ばうむ」など ローソンから発売 埼玉県2025年4月24日
-
「20代の野菜不足解消アイデアコンテスト」募集開始 野菜摂取推進プロジェクト2025年4月24日
-
持続可能な食と農へ 農中と農研機構が協定2025年4月23日
-
将来受け手のない農地 約3割 地域計画で判明2025年4月23日
-
ふたつの「米騒動」【小松泰信・地方の眼力】2025年4月23日